昨日からスタートした〝あの頃シリーズ〟ブログ、今回はデモテープというタイトルです。
一応毎日更新を目指していまして、本日も更新できてホッとしています。
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デモテープ
喫茶店での初ミーティングのとき、yasuが
「僕、楽器とかちゃんと弾けないし譜面も読めないしコードや理論も知らないんですよ」
というから、アレンジとかどうしてるの?
って聞いたら、デモテープを作ってメンバーに覚えてもらう、って言うんで、じゃあ今度聴かせてね、とその日は別れ、後日、デモを持ってきてくれました。
聴いてぶったまげました。
いや、その完成度に。
コンピューターを使って作ったデモだったのだけど、どのパートも緻密に打ち込まれていて、音色の整理と音のバランスを整えたら製品版と言われても普通の人なら信じてしまうほどしっかりと構築されていたのです。
特に驚いたのがロックギターの再現性。
今でこそ、テクノロジーの進化で本物のギターの音やギターで弾いたフレーズを使ったリアルな打ち込みも珍しくない。
でもね、シンセだけで、コード(和音)をザクザク弾き鳴らす歪んだギターの感じをそれらしく聴かせるにはかなりの根気とセンスが必要なんですよ。
しかも彼が使っていたのはYAMAHAのW5とMU1000という大衆グレードのシンセサイザー(興味のある方は検索してくださいね)で当時でもだいぶ年季の入った型落ちのもの。それでやり遂げてるんだから本当に衝撃でした。
弘法筆を選ばず、とは良く言ったもので、アレがないから出来ないと宣ってなかなか始めないのは凡人で、本当に才能がある人は機材を選ばず、創意と工夫でやり遂げちゃうんだな、とまたまた勉強させられました。
この日以来、
「いつか、製品版と対になる形で彼の作るデモも沢山の人に聴いてもらいたいなぁ」
そう思うようになりました。
もちろん、デモを聴かせる企画なんて本人は嫌がるだろうけど。
でもね。その僕の悲願が叶ったんですよ。10年以上の月日は費やしたけど。
Acid Black Cherry オリジナルアルバム4枚目「L-エル-」ファンクラブ購入者特典で「L-エル-」に収録してる2曲のデモ音源CD(ABC放送局)を付けることができたんです。
デモ音源を公開しようよ、なんて言ったらyasuが抵抗するのは分かっていたから、僕は、
「これはね、ファンの方へのサービスというだけでなく、作品の完成までのプロセスを見せることは(yasuも僕も大好きな)宮崎駿さんの絵コンテ集が若き才能たちに刺激を与えたのと同様に、このデモがきっかけで音楽を目指す人が出てきたりするもんだ。そろそろ僕らは次の世代のために何かを残していく、そんなフェイズに入ったんじゃないか」
と、NOを言わせる隙間も与えないマシンガントークでyasuを口説きました。
それからまた月日が経ち、「L-エル-」の発売から8年以上過ぎた一昨年のこと。
RAZORの猟牙さんとお話する機会があり、
「yasuさんも譜面読めないって、でもパソコンで音楽を作ってると知って。だからずっとデモを聴きたいと思ってたら 「L-エル-」の特典でそれが聴けて。あのデモから勇気をもらって僕もパソコンで音楽を作るようになったんです」
って言ってくれて。
宛名も書かずに出した秘めたるメッセージだったけど、受け取ってくれた人がいて、意味ある人生になりました、そんな嬉しいお返事が時を越えて手元に届いたみたいで、とても幸せな瞬間を味あわせて頂きました。
もちろんすぐに、このことを得意げにyasuに報告した僕の器の小ささも皆様に報告しておきます。