いよいよ宗像代表が本厄を迎えるそうです。
脅かすわけではありませんが、実は僕の本厄年には、今振り返っても人生最悪の黒歴史が詰め込まれました。
 もともと厄など一切興味がなく、そもそも厄年突入の瞬間は、そんなことは微塵も気にすることなくイタリアで過ごしていました。新年を迎えるとブラジルへ移動し、第1回の世界クラブ選手権を取材。現在はクラブワールドカップと呼ばれている大会ですが、この時は欧州からレアル・マドリーとマンチェスター・ユナイテッドの2チームが参加の豪華版でした。
 僕が本厄を迎えたのは2000年。2年後には日韓ワールドカップを控え、人生最大の繁忙期で好き放題に海外を飛び回っていました。5月はスペインからイタリアのヴェローナへ飛び、チャンピオンズリーグへの出場権を賭けたプレーオフでロベルト・バッジオのインテルでの最後の雄姿を見届けると、数日後にはパリでスペイン勢同士(レアル・マドリー対バレンシア)のチャンピオンズリーグ決勝。たぶん束の間の帰国をしたと思いますが、再びイングランドへ飛びフィリップ・トルシエが率いる日本代表2戦を取材して、次はモロッコでハッサン国王杯。そして息つく間もなく、ベルギーでEURO(欧州選手権)という調子でした。
 ところがこうして僕が一切家庭を顧みず海外を飛び回っている間に、我が家には厄がひたひたと迫ってきていました。小学2年生だった長男のクラス担任に、不登校児製造マシンのような教師が割り当てられてしまい、クラスは大混乱し始めていたのです。先陣を切って悪さをしていたのがウチの長男坊。登校すると早速教室を抜け出し、悪ガキ数人と一緒に砂場で遊ぶようになり、時にはホースを持ってきて教室に水をまき散らすこともあったそうです。改めて1年時の担任に話を聞くと「一切そんな兆候はなく、授業にも前向きで模範的だった」とのことだったので180度の急転ぶりでした。
当然問題を抱えたのはウチだけではなく、大半の子供たちが授業に参加しなかったり集中を欠く状態で、クラスは実質崩壊状態。途中から教頭もサポートに入りますが、まったく効果は見えてきません。ある時、教頭は教室から逃げようとした長男を追いかけ、後ろから両手をつかまえますが、すかさず長男はそのままオーバーヘッドで教頭の顔面を直撃。思えばそれが後にトレードマークになるオーバーヘッドの始まりでした。
とにかく担任が怖くて不登校になる子が増えるわ、授業がつまらな過ぎて遊びまくる子が出てくるわ…、で教室は完全なカオス。逆に父兄は連日子供不在の教室で、問題の担任を交えた話し合いを続けていたので、この年は親の立場で本当に良く学校へ通いました。
 担任は真っ当なコミュニケーションが取れず、生徒たち(というか人)の気持ちを汲み取れず、あちこちの地域で研修を繰り返してきたそうです。学校サイドも、どう指導をすれば良いのかお手上げの状態で、僕が担任についての疑問点を校長に指摘すると、その校長が「お父さん、それを本人(担任)に説教してあげてください」と言い出す始末でした。一方で長男は、精神的にストレスを抱えたせいか、顔が番町皿屋敷のお岩(注:有名なお化けです)のように腫れあがり、完全に人相が変わってしまっています。この年、妻は都内様々なカウンセリングを飛び回り、厄落としから占いの類まで、どれだけ車を走らせたかわかりません。こうして僕は「これが本厄というものなのか!」と、その凄まじさを悟るのでした。
 結局治療からお祓いまで何をやっても回復しなかった長男は、翌年担任が代わるとともに何事もなかったかのように正常に戻りました。以来あの嘘のような化け物顔に豹変することもありません。
 さて僕の周りで、同じように本厄の時は酷かった、という話はほとんど聞きません。当時の僕は足もとを見つめることもなく仕事に邁進していたので「少しは身近な家族にも目を向けろよ」という警告だったような気もします。
要するに「本厄」というのは、そういうものなのではないかと解釈しています。42年間も無警戒で調子に乗っている人間はお灸をすえられる。しかし悪いことがあるかしれないと、しっかり用心をしている人には何事も起こらない。
 本厄の真っ最中は、底なし沼でもがく悪夢の感覚でした。しかしそれでも大病も大ケガもなく、こうして今でも定期的にフットサルを楽しめている。年齢を重ねるほど、それは普通のことではないと感じています。
 オレンジソックスでは、コロナ禍頃から、やや人が集まり難くなっています。また活動場所の確保も難しくなっているそうです。今までの経験から、やはり長く継続していくサークルは、活動のルーティーン化がカギになっていると思います。
 いずれにしても難しい状況に直面しているのは、代表の本厄のせいではありません。この先もみんなで楽しんでいきたいなら、そう願うメンバー個々が良い協力の仕方を模索し、話し合ってより良い解決策を見つけていく必要があるかもしれません。