ドラマ化してほしいと言われると嬉しいです
(何人かに言われただけですが笑
もちろん主演は中川大志くん
友里奈は◯◯◯◯さん
翔平は◯◯◯◯さん
もちろん 
誰を当てはめて読んでいただいても自由です
今日と明日の最終話で終わりです


第五話 憧れの人

翔平は友里奈から届いたラインを見て
本当はすぐにでも部屋までいきたかった
だが0時すぎだ 翌朝まで我慢した

ほとんど眠れなかった
朝になり 7時半になるのを待ちラインする
「おはよう……もう行ってもいいか?
着くのは8時頃になるが 早すぎるかな?」
「いいわよ ユズは早起きだから いつも朝の6時には起きてトレーニングしてるわ」
何やらよくわからない動きだが記憶を無くす前の朝のルーティンだったのだろうか 何やら本能で動いているように見えた
友里奈の部屋はマンションの一階 多少の振動は問題ない

翔平が部屋にやってきたときには 朝食も済み
ソファに座っていたユズ 手には漫画の源頼朝
読むのは5日ぶりだった

翔平は驚いた 
容姿端麗そのもののユズが窓からの朝の光を浴び輝いていた

(一週間同じ部屋で過ごして大丈夫だったのか)
年を忘れて心は動かなかったのか?と友里奈の目を見ると
(そんなんじゃないわよ……人助けからの今よ)と 強い目力で返してきた 

「おはようございます」の挨拶を交わし
翔平とユズは向かいあった
「名前を思い出したって?畠山重忠って」
「はい 僕がそうなのかどうかはまだわかりません ただ その名前が浮かんだのです」

「私 ドラマや映画を調べてみたけど……ユズが畠山重忠役で出ていたと思われるものはみつからなかったわ……」
「撮影中なら……消息不明って騒ぐよなぁ それとも公にできないとか?」
「ユズの台詞がその名を呼ぶものだったのかしら」
翔平と友里奈の会話も ただ聞くだけのユズ

翔平はユズの前に置かれた源頼朝の漫画に目をやる
「その話はわかる?頼朝といえば 畠山重忠は初めての戦で源頼朝を倒したんだよ 石橋山の戦いというんだ」 

(文字はわからないらしいから 絵を追ってるんだよな……帰国子女で記憶喪失ならばそうだよな)
「今…どのへんを読んでいたの?」
「父や兄を戦で失くして 平家に捕われたところです」
「そうか……その後14歳で伊豆の蛭ヶ小島に流罪……流されるのだが ゆくゆく征夷大将軍になるんだ」
ユズの様子をみながら説明する翔平
ユズは文字通り 前のめりになっていた
(話してもらうとわかりやすい もっと……もっと聞きたい……) 
「征夷大将軍とか流罪とか 言葉はわかる?」
「それはまだ わからないです でも伊豆はわかります 聞いたことがあります」
「伊豆か……なるほど……北条の里だな
ユズが耳にした畠山重忠も出向くところだけれど
重忠の生まれはそこではないんだ」
翔平は一冊のノートを出した
「畠山重忠は 俺の故郷のヒーローなんだよ
でも17歳で消息不明になって今も謎なんだ
このノートには調べたことが書かれているんだけど
話してもいいのかな?」
「はい ぜひお願いします」
ユズの見せた笑顔 翔平は背筋を伸ばした

武蔵国の畠山で生まれた重忠の父は畠山重能
母は真鶴姫 三浦義明の娘なんだ

子供の頃は氏王丸と呼ばれていて 体はその頃から大きかったらしい
だから他の子と同じように遊んでいても
その力の強さで 例えば相撲をとって投げ飛ばした相手が骨折をしてしまうこともあって
乱暴者と言われてもいた
子供の頃から北条義時……小四郎や下川辺行平……太郎とはよく遊んでいたようだ
小四郎は伊豆だし 太郎は下総だから
頻繁に会うことはなかったが 父親についていったらしい

太郎は2歳上 小四郎は1歳上だが
重忠……次郎は体も大きく 弓も相撲も負けることはなかったけど 勉強は苦手で敵わなかったようだ
元服前に勉学のため京にいき その際音楽も学んで
教養も身についていった
京では雅やかな女性には心は動かず 重忠の好みは 坂東の女性……
そう……どうやら北条家の政子に憧れていたらしい

北条家と近しい関係になり挙兵する源頼朝のことを耳にして関心をもっていたが 父の繋がりから畠山家は平家側だったため 初めての戦は源頼朝の敵 
勝利したが 源頼朝は逃げ延びたらしい
そして その帰りに出くわした三浦義明義村親子 それから和田義盛の軍と戦いになったが……

「その後 行方がわからないというんだよ
だから 俺のノートもここまでしか書いていない」
ユズは何か言いたそうだが言葉がみつからない

「なにか 思い出したことはある?」と翔平
「わかるような気がするところと 何もわからないところもあります」
「そうだよね 全部が一気にクリアにはならないよね」
「はい それから……重忠はまさこさんに憧れていたのですね…… 僕 その名前を聞いているんです
武士の鏡を見ていたときに」
それは友里奈もノートに記していた 4日前の火曜日のことだ
(そこがリンクするの?ユズの聞いたまさこさんとは北条政子のことなの?)
驚く友里奈とは逆に ユズはむしろ落ち着いてきていた
「まさこさん……は友里奈さんと似ています もちろん全く同じではないけど」
「え? あの尼将軍と……?私が?」
ユズは はい……と頷く 
翔平は内心思った……
(おいおい ユズは天然?魔性?
北条政子と友里奈が似ているのはわかるよ 
姉御肌で世話好きで 強がりででも優しくて……
だけど…重忠の憧れと確かめたあとにそのセリフ…
友里奈もちょっとニヤついているし…
いやいや……多分ユズは深く考えていない)
脱線し暴走した妄想を 翔平は自らかき消す

頬がゆるんだままの友里奈が
ドリップしたコーヒーをテーブルに置いた
「そうだ……友里奈 鎧と刀は?」
そう言いながらもリビングの端にあるそれに気づいた


鎧をそばで見た翔平は軽く衝撃を受けた
(今の時代に作ったものじゃない……刀は……?)
抜いてその鋭い刃先に指を当てる 少しだけ動かすと
小さな傷口から血が滲んできた
友里奈が驚きながらも すぐに救急箱を持ってきた
傷絆創膏をだし翔平の指に巻く友里奈
天井を仰ぎ 大きく息を吐く翔平
そして ユズの前に座ると
コーヒーを一口だけすすった

「柚流くん……もうユズでいいか……ここからが重要なんだけど
君が畠山重忠だというなら タイムスリップしてきたということなのか?それも記憶にないんだよね」
「はい そこまでは まだ」
「でも本当に800年もの時空を超えて来たのなら
戻らなきゃならない それにはどうすればいいのか……
いつどこでタイムスリップしたかをはっきりさせなきゃ何もできない」
「ユズが思い出すのを待つか……武士の鏡の力を借りるか もちろん両方が上手く行けばいいのね」
友里奈も興奮がおさまらない
「僕 もっと知りたいです 翔平さんの話にあった小四郎のことも」
「わかったわ タブレットで見られるよう 私 ダウンロードしておくわね」

その後 翔平とユズは何やら話していたが 実に楽しそうだった
(そりゃあ 翔平は嬉しいわよね 
気になっていた故郷の武士 
自分の目の前にいるのは 行方を追っていた畠山重忠なのかもしれないのだから

「友里奈 頼みがあるんたけどなあ」
「はいはい わかってるわよ 泊まっていきたいんでしょ でも寝る場所ないわよ ソファはユズが使うし」
「いいよ 俺……帰って寝袋持ってくるわ
…で少し寝てくるよ 昨夜は眠れなかったんだ」
翔平は気持ちが落ち着いたのか 眠気が襲ってきたようだ 
「運転気をつけて……」友里奈がコーヒーのおかわりを注ぎ 飲み終わった翔平は部屋を出ていった

「ユズ……どこか行きたいところある?もちろん これで漫画を見ていてもいいわよ」
友里奈はタブレットをユズの前に置いた
「行きたいところ……」
少し黙ったあと 何か思いついたように
「海に行きたいです TVで海を見ました
あの音に聞き覚えがあるんです 連れていってもらえますか?」
友里奈のマンションから車を飛ばせばすぐに海につく
お安い御用だった

「これが 海ですか……」

喜びの声をあげた
波打ち際で靴を脱いではしゃぐユズ
友里奈はそんなあどけない姿に目を細めた

肝心な話をすることもなく
友里奈も何を尋ねることもなく 夕暮れの海をあとにした
「沈む方はこちら側じゃないからね 残念ね」
「陽が昇る方……なんですね」
信号待ちでユズの横顔を見ると先ほどとは打って変わって大人びた表情だった
ユズには驚かされる……少年ぽくなったり大人になったり……
夕食は 手の込んだものを作ってあげたいけど
友里奈も気がそぞろで落ち着かない 
通りがかりのドライブスルーで
期間限定のハンバーガーを買った
どうせなら 現代のものをユズに味あわせたい
遠い遠い昔からやってきたのなら なおさら
「久しぶりだな ハンバーガーなんて」
翔平は懐かしがって喜んでいた 
ユズの分は2つ……どちらも美味しそうに食べていた

夜は更けていき3人で一日の終わりを迎える

今夜は満月だった
ユズは友里奈のベッドルームに向かい
窓辺に座り 武士の鏡を両手で持った
リビングでは翔平と友里奈が無言で待つ

ユズが戻ってきた
「わかりました……
そして今 はっきりと思い出しました」

勝ち戦のあとの帰り道で馬に乗った自分が先頭で 
そこに三浦義澄と義村がやってきた
会わなかったことにしようという自分の提案を受け入れたのに
不意打ちをかけてきた
和田義盛が何やら大声をあげている 

矢が自分の頬をかすめるように飛んできて
避けたのに 誰かが倒れ込んできた
三日月もろとも崖から転がり落ちてしまって
そのあとは……
気がついた時は 全く知らない世界だった

「あとは友里奈さんが全部わかっている通りです」

友里奈 翔平 そしてユズ いや重忠
3人の間にどれだけの沈黙があっただろうか

友里奈が口火をきった
「じゃあ 何とか戻れるようにしなきゃね」
少し震えた声……それをこらえるように言い切る
翔平も ユズも頷いた
「それは また明日考えましょ あ もう今日だけど……まずは…寝ましょうか」
友里奈はベッドルームに向かい
翔平は寝袋を広げた
ユズは寝袋に興味を示し 寝てみたいという
というわけで 翔平がソファに横になり
ユズは寝袋に脚を入れ横になった

結局3人とも朝方まで眠れなかった

翔平はノートに書いたことを思い出す
たしか…三浦軍と出くわしたのは 由比ヶ浜近く……崖を転がり落ちたというが……あのへんは今はもちろん住宅ばかりだ 友里奈がユズを見つけた公園の端には確かになだらかな傾斜はある……
非科学的な話だが 戻るならあそこにいけばいいのか……?

友里奈はカーテンをレースだけにして
満月が照らす部屋をぼんやりながめていた
もう月曜日には学校には連れていけないわ
全校集会で挨拶をさせたくもあるけど
そのために引き伸ばす訳にはいかない
ユズが畠山重忠だということなら……いえ
重忠なのだから 元に戻るのが彼のためなのよ

ユズは思い出していた
重忠の日常
朝起きて まず畑仕事 水を浴びて朝ごはん
それはもう十歳を過ぎた頃からの習慣だった

友里奈の学校の花壇を耕し 
見上げた時の太陽の眩しさ
汗をぬぐったときに 
何やら……初めてではない感じがした 
そうだ……
稽古の毎日 たまに会う小四郎たちと弓を競ったり
相撲をとったり……
政子さんと馬で競走したこともあった
政子さんは男勝りで 悪いことは悪いと……自分を叱ってもくれるけど そういうところが好きだった

それから……初めての戦は勝ったけど 実は源頼朝という人物が気になっていたのは確かだ
色々と蘇ってくる

でも どうなのか 僕は……戻れるのだろうか
このままだったらどうする?
あの時代に戻れず 
ここで行きていくのだとしたら……
友里奈さんといるのはいい 居心地もいい

でも……やはり戻りたい

朝になる頃にはユズの記憶はほとんど戻っていた
自分は畠山重忠なんだと実感すると 
少しだけ眠りについたのだった


つづく



いよいよ明日で最終話です
書けているものの たくさん直さなければなりません……
ぜひ 皆様に読んでいただけますように

🙇‍♀