少年は戸惑った。


魔術では歯が立たない。

話す事は出来ないから心理戦も無理だ。

となると、武術しかないのは確かで、それを使うしかない。


しかし、果たして相手に当たるだろうか?


通用するかどうかより、攻撃さえも当たらないような気がしたのだ。


機械仕掛けの伝書鳩があるからマンフール達に助けを呼べないこともない。


だが、マンフール達が来たって勝てる見込みがあるわけでもなく、相手は伝書鳩を送らせてくれないだろう。

隙を作らねばならない。


自分でやるだけやらねば。
「おっと。良いのか?あんたはまだ気付いていないみたいだけど、こいつの言葉は全て魔法なんだ。しかも厄介で、どんな魔法がでるか本人もわかったもんじゃない。なんせ、呂律が回っていないからな。」


「じゃあ、こいつは口だけを使って魔法を使っている訳か?」

すると、キュールもどきではなく、愚者が答えた。


「そほ通り。」


少年は酷い目眩に襲われた。


キュールもどきは馬鹿を見るような目つきで、肩をすくめている。


キュールもどきはだんだん本性に戻ってきてるようだ。


動きが野生っぽくなっている。

しかし、こんな短い台詞でこれほど強力だとは、少年は少し途方にくれた。
睨み付けられた愚者は、にぃっと笑った。


「何がおかしい。」

そう言おうとした瞬間―



ふっと視界から愚者が消えた。

愚者の足元しか見えなくなっていた。


少年は遅ればせながら錯覚に気付く。


少年は倒れていた。


力が、入らない。


唯一自由に使える口で、少年は怒鳴った。


「何なんだ。これは!!」


愚者は答えず、キュールもどきが会話に乱入してきた。