愚者のいる場所から大の火の玉が勢いよくキュールもどきに襲いかかった。



そして避けないキュールもどきに命中した。


魔法は、愚者が話しているモノに向かって発動されるのだ。


煙が立ち上り、作戦成功だ、と少年は面に出さず喜んでいた。

そういえば愚者は、と見ると、青ざめ、がたがた震えているところだった。


「…?」


少年がその様子を気にとめていると、煙が晴れ、愚者が恐れていたものがわかった。



キュールもどきは、恐ろしい獣の姿になって、傷一つなく、愚者と少年を睨んでいた。
「俺様は知らんはな。」


愚者は答えた。


少年は目眩を無視して言葉を返した。


「僕もそれが確かかはわからない。只、そういう情報があるだけだ。」


愚者は狼狽えず少年を見上げて言った。


「だが確信は無いんだろう?信用なはんな。…いかん。酒酔い状態が少し醒めちまっは。」


そう言うと酒をぐびぐび飲んだ。


「ああ。ないさ。だが、敵の言う事にも関心を持った方がいい。みすみす消されたく無ければね。」


「…俺はまにどふしろと?」


来た。


「本人に確かめてみればいいじゃないか。」


愚者は少し黙った後、キュールもどきに視線を向けた。

この後、愚者がキュールもどきに言葉をかけて、キュールもどきに魔術がかかれば、作戦成功。

2人で殺し合いしてくれれば最高。


期待通り愚者はキュールもどきに声をかけた。

「ご主人様。私なんぞほ質問をほ許しふだはい。あの小僧の言ふ、わはしを滅ぼほうとしているというのはほんろでふか?」


言葉使いが随分変わっているが、とにかく、その言葉で魔法が発動された。
少年は考えを巡らし、少しの可能性をつかんだ。


最期か、否か。


愚者とあまり長い会話にしないよう気を付けなければ。


「おい、愚者。お前の主人がお前を手離そうとしてるの、知ってるか。」


少年は愚者に言った。

はったりだが、一か八かだ。


これで上手く事が運ぶと良いのだが。