冗句60
■サメ
若いカップルがクルーザーから海に飛び込み泳いでいる。獰猛なサメが接近する。
男性は逸早く、その姿を見つけてクルーザーにあがった。
女性は相変わらず楽しそうに泳いでいる。
「オーイ、サメだ。早く上がったほうがいい」
「いいの。このサメはわたしの大切なおともだち。前に恋人を紹介してあげたから、わたしを襲ったりしないわ」
「恋人って、サメにキミの恋人を紹介した、ってのか?」
「あなたも紹介させて」
「キミの前の恋人はいまどうしているンだ」
「だから、このサメはわたしの恋人が大好きなの」
■ケチ
「あなた、これ買っといて」
「待てよ。これはだれが使うンだ?」
「あなた、ファンデーションを使うの?」
「おまえだけが使うのにしては、高くないか?」
「高い方が品質がいいの。気にしないで」
「おまえは美人なンだから、こっちのほうでいいのじゃないか」
「それ、わたしの肌に合わないから」
「合うか合わないかは、使ってみないとわからないだろッ」
「あなた、これとあれとでは、二千円しか違わないのよ。二千円で女房の機嫌を損ねるつもり?」
「おまえこそ、二千円でおれの機嫌がとれるンだぞ」
■公園
立て札に『この公園ではイヌの放し飼いはできません』
できそうじゃないか。
「もしもし、あなた、その立て札が見えないのですか」
「できませんとあるが、こんなに広いンだ。できるだろッ」
「できませんとは、するな、という意味ですよ」
「だったら、放し飼いはするな、って書けばいい」
「そう書くことができない事情があるのですよ」
「だったら、するな!」
(了)
2021.1.30.