つれづれレミゼ -2ページ目

つれづれレミゼ

2007年レミゼデビューを果たした初心者が、レミゼや舞台に対して思うところをつれづれなるまま書き記す場所です

■コロナと演劇、いろいろと考えたこと。そしてピガール。

緊急事態宣言中、SNSで沢山の言葉が流れていました。それぞれの信念と正義のもとに、誰かに対して強い口調を向けるものを沢山見かけ、その言葉を読んでいるだけの自分が沢山削られて疲弊していたのだなと思います。緊急事態宣言の非日常下で、いつもと同じように行動しているしてつもりであっても、その実かなり気持ちが切羽詰まっていて余裕がなかったということなのかなと。私だけでなく、多分沢山の人がそうだったのではないかなと思います。人が人を強い言葉で責めるのは、余裕がなく切羽詰まったときだと思うので。(私の場合は、余裕がなくなると人を責める方向ではなく、守りに入るけど…)

流れてゆく言葉を観ながら、思ったり考えたことです。

やはり、演劇人たちの言葉に一番気持ちが揺らぎました。生きるために文化は必要不可欠だ、と私はいつも心から思っていることだけど、文化は特別なものだから国がお金を出して守るべき、という考え方には乗れない気持ちがあります。

どうしてそう思うんだろう?

一つには、自分にとっては確かに生きるために必要不可欠な文化(特に演劇)だけれど、ほかの誰かにも同じような価値と意味があるかは分からないから。私にとって必要不可欠なのは文化(特に演劇)だったけれど、他の誰かにとっては別の何かであるかもしれない。文化だけでなく、ほかの大切なものも含めて守られてほしい。それを思ったときに、文化は他とは違う特別なものだから守られるべきだという論調に乗れなかったのだと思います。演劇人の人たちが文化だけ守られればよいとは思っていたわけではないと思いますが、それにしても言葉が上手くないと感じることが多くがっかりして気持ちが萎むことが多かったです。

そして演劇人がそうした不用意な言葉を発して炎上が起きた際の対応にもがっかりすることが多かった。演劇人はよく「演劇は究極の他者理解、分断を乗り越えるための対話ツール」というけれど、他者理解というには、きちんと対話している姿を見なかったから(SNSは対話には向かないツールだなというのは強く思うところなので、対話の姿を見かけないのも当たり前のことなとしれないけど……)。「演劇は究極の他者理解、分断を乗り越えるための対話ツール」という言葉を、私は信じているはずの人間だったのだけど、コロナのなかで炎上する演劇人たちの姿を見て、本当にそうなの?と揺らいでしまいました……。これが私には結構苦しいことでした……。

では、「文化だけでなく、ほかの大切なものも含めて守られてほしい」という願いを叶えるにはどうすればよいののかと考えたりします…。多分もっと視野を広く持ち、世の中を廻しているスキームを理解して、その仕組みのどこに手をいれるのがよいかを考えなければいけないのだと思う。世の中を廻すスキームは沢山あると思うけれど、一つ大きなスキームが資本主義だと思うので、それを踏まえて文化がどのような位置に在ると世の中によりよく関わることのできるのかを模索し、そうなれるように働きかける必要があるのではと考えます(こういうのはアカデニズムの役割かもしれないですが)。そして、価値観が多様化する今の世の中では「文化は価値あるもの」ということは当たり前のこととは思わずに、きちんといつもそのことを表明することが大事なのかなとも思います。

(2020年を通じて、じわじわと自分が実感したことの一つに、自分は資本主義の世界で生きているんだなということがあります。どうしたってそれからは逃れられない。「福島三部作」から「リーマン・トリロジー」を続けて観て、原発に踊らされる様が、リーマンブラザーズ三代目が死ぬまでチャールストンを踊り続けた様と重なりました。そしてそれは私の姿でもある。どんなに資本主義や新自由主義に対して批判があったとしても、この仕組みのなかで一生踊り続けるのだということを受け入れて、そこから始めるしかないのだな、と今更そのことに思い至りました)

演劇のことを信じられなくなったことは、私には結構苦しいことで、コロナが少し落ち着いて劇場が再オープンしたあともしばらくは劇場に行く気持ちになれずにいました。けれどその気持ちを救ってくれたのも、結局のところ舞台作品でした。それが宝塚歌劇団月組さんの「ピガール狂騒曲」です。劇中で語られる劇場への愛について、物語中の人物たちと、役を演じる演者たちと、観客の私たちと、ひととき皆の思いが重なり、思いを分け合ったと実感できるときがありました。これがきっと劇場の奇跡なんだと思います。演劇が他者理解を助けるのか、私はまだわからない。でも、劇場では他者とひととき思いを分け合うことができるということだけは実感をもっています。ピガールが思い出させてくれました。私は劇場が好きなんだと、強く思いました。

まだまだコロナ禍は続いていて、文化も演劇も苦しい状況の中にあり、この先どうなっていくのか不明な状況です。また演劇界隈で炎上が起こるのかもしれない。それを見てまた気持ちが萎むことがあるのかもしれない。でも、そのときには「私は劇場が好きだ」という気持ちを思い出して、落ち着いて様子を見守ろうと思います。何度気持ちがしぼんでも、何度でも、また劇場が好きだという気持ちを思い出せばいい。ピガールでは、珠城さんをはじめとする月組の皆さんが、大変な状況のなかであっても強い気持ちをもって劇場に立ち続け思いを届けてくれた。私も、大変な状況がまた来たとしても、珠城さんたちが見せてくれた強さを心の中にもって、劇場への愛を持ち続けようと思います。

 

(追記)

2021/1/21に読売演劇大賞のノミネートが発表されて、「ピガール狂騒曲」の成果によって演出の原田先生が優秀演出家賞を受賞されました!おめでとうございます!選評の「コロナ下だけに、劇場賛歌というテーマは胸に響いた」という言葉はまさにわたしの思いでもあるのでとても嬉しかった。

 

 


 

まだうまく言葉にできないことも沢山あるけれど、いつか振り返るときのために、2020年のことを記録に残しておこうと思います。

■コロナを意識し始めたころから、緊急事態宣言まで

コロナを意識し始めたのが2月頭ごろ。2/8(日)の流山児☆事務所の「コタン虐殺」で、マスク必須だねとお友達と話をしていました。2/15(土)「シャボン玉とんだ 宇宙までとんだ」の大千秋楽遠征のときは、すごく意識して手洗いをするようになって、劇場の洗面所は列ができていました。2/24(日)の明治法政onICEは開催できるのかかなりハラハラして、整理券配布の時間が当日に急に変更になったりしつつ、ぎりぎり開催されてすごくほっとしました。とてもよいショーでした。

2/25週からぽつぽつ上演中止のお知らせが出始めて、手持ちで一番最初に中止になったのは確か「MIYA Collection」でした。2/27に一斉休校要請がでてからは、バタバタと上演中止になって行きました。2/27は、東京宝塚劇場で雪組さんを観劇していて、幕間に一斉休校の報を知り、終演後ロビーにでたら2/29から公演中止の張り紙が出ているのを見て呆然としたことを覚えています。でも、今にして思いかえすと、呆然としつつ、深く考えすぎると足を取られて歩くことができなくなりそうな気がして、つとめて目の前のものをそのまま飲み込もうと心がけていたと思う。この週は次々と中止のお知らせが来て、やさぐれたい気持ちになっていました(少なくとも仕事を頑張る気力は失った…)

それでも3月のうちは小劇場などの小規模な上演は続いているところもあり、中止になった公演の代わりにKAKUTA presents Monkey Biz「往転」やチーム・ユニコン「エール!」を見たりしていました。お友達とも予定をあわせてご飯をしたりして、意識して気持ちをキープするよう心がけていました。

3月の三連休前、3/19の夜に専門家会議の記者会見があって、人との接触を減らすことが大事、全国から人が集まる大規模イベントはリスクが高いという説明があった。この会見は図表も多く提示され、数値で物事が説明されていたので納得感があったし、今の状況がとてもリスクが高いのだなということを実感した。3連休から上演を再開した公演が多かったんですが、光一さんのSHOCKはそのまま中止を決めたんですよね。光一さんはリスクを多めにとるタイプだと思うし、SHOCKはおそらく財政的な面でも中止の判断がしやすい状況だったのだろうなと思います。後に公開された座長としてのあいさつに「愛するお客様を危険にさらすことはできない」とあって、上演中止の判断の根底に愛があることが痛いほどわかったので、つらくても受け止められると思ったものです。インスタライブをつかって公演の様子を見せてくれて、そのことにもとても愛を感じました。

3月の三連休が明けたころからは、近々緊急事態宣言が出るくらいの状況なのだという認識に変わり、テレワークの準備をしたり、食料を買いためたりし始めていました。たとえ上演があっても観劇はやめておこうという気持ちに変わっていました。そして、4/7に緊急事態宣言が出ました。

2020年、私が行く予定で、コロナのために中止、もしくは延期となった上演の一覧を下記に載せておきます。全部で37公演が中止・延期になりました。

<中止公演>
泣くロミオとジュリエット 2/29(土)
MIYA Collection 3/1(日)
Endless SHOCK 3/1(日)
カノン3/5(木)
Endless SHOCK 3/6(金)
Endless SHOCK 3/11(水)
明治座花形芝居 3/14(土)
雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」 3/15(日)
Endless SHOCK 3/15(日)
Endless SHOCK 3/22(日)
Endless SHOCK 3/22(日)
冬の時代 3/28(土)
サンセット大通り 3/29(日)
ジョシュグローバンコンサート 3/30(月)
磯崎くんダンス公演 4/10(金)
磯崎くんダンス公演 4/11(土)
桜の園 4/11(土)
ボディガード 4/15(水)
エリザベート 4/19(日)
桜の園 4/26(日)
文学座「熱海殺人事件」 5/3(日)
松下洸平コンサート 5/6(水)
now zoom me 5/9(土)
赤坂大歌舞伎 5/10(日)
赤坂大歌舞伎 5/17(日)
ミュージカル・ガラ・コンサート 5/30(土)
井上芳雄byMYSELFコンサート 6/6(土)
木ノ下歌舞伎 三人三吉 6/7(日)
ケンジトシ 6/10(水)
ケンジトシ 6/13(土)
ミスサイゴン 6/20(土)
ケンジトシ 6/26(金)
ミスサイゴン 6/27(土)
すこたん 6/27(土)
すこたん 6/28(日)
ケンジトシ 7/4(土)
HIROSHIMA 太田川七つの流れ 7/12(日)

宝塚大劇場の月組さんの初日を観てきました。急に行くことを決めて、自分としてはかなり思い切って行ってきたのですが、とても幸せな気持ちになった(1週間過ぎた今も思い返すと幸せな気持ちが蘇るくらい)ので、この幸せな気持ちを言葉に残しておこうと思います。

急に行くことにした理由は、9月の前半、友達とホテルステイをしつつ、宝塚作品を色々見せてもらったのですが、そうしたら生の宝塚の舞台が見たくなったというのが一つ。あとは、今まで宝塚作品をつまみ食いのように見てきた中で、どうも珠城さんをはじめとする月組さんが好きだという自覚が出てきて、長いお休みの後の最初の舞台を見られたらいいなという気持ちになったのが一つ。ダメ押しになったのが、ホテルステイのなかで受けたレクチャーのなかで、上田久美子先生の作品が好みだったので、評判のよい「月雲の皇子」をオンラインでレンタルして見たところ、大変心に刺さり、今すぐ珠城さんの舞台を見たい!という気持ちになったことです。

もともとこの日程で関西まで行く予定があり、ハシゴができるスケジュールだとわかったので、思い切って行ってきました。


-------------------
■『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』

宝塚の和物ショーは初めてだったんですが、幕開きから華やかで、ぱっと気持ちが浮き立ちテンションがめちゃめちゃあがりました!「花の章」での松本悠里さんの踊りは所作の一つひとつが美しくうっとり引き込まれたし、「月の章」でのベートーヴェンの月光に合わせた和物ボレロも迫力があってよかった…!!もともと歌舞伎でも舞踊ものが好きなんですが、大人数が一度に舞台にのって一つの作品を作り上げるのは宝塚ならではの華やかさだなと思いました。「月の章」のステージングの凝り方は素晴らしいなと思うし、月のモチーフの着物デザインもすごく素敵。「花の章」の月城さんと風間さんの連れ舞も、コミカルで楽しかった。

あとですね、テーマ曲の"Welcome, Welcome"という曲がすごく耳に残って。なんせ大劇場への一人遠征は初めてだったので、「♪WELCOME TO TAKARAZUKA」と珠城さんに歌いながら微笑まれると、この遠征を歓迎してもらえたようで、むやみに嬉しくなってしまうのでした(笑)


-------------------
■106期生ご挨拶

和物ショーの合間に、宝塚106期生の口上がありました。本当の意味での初舞台。組長のご挨拶と、そこに並ぶ初舞台生たちの姿を見るだけでも泣きそうになってしまって。コロナ禍のなか、いつも以上に困難のあった門出だったと思うのですが、それでも舞台の世界を愛し、ここで生きることを胸に決めてくれた人たちの姿に胸がいっぱいになる。これから沢山の喜びも悲しみも楽しさも悔しさも経験することになると思いますが、それらの全てが糧になって、よき舞台人生を歩んでいけますようにと願ってしまいました。


-------------------
■『ピガール狂騒曲』

シェイクスピアの『十二夜』を、1900年代初頭のパリに舞台を移し替えた作品です。『十二夜』は、ジョン・ケアード演出・音月さん主演の舞台を一応見ているのですが、細かいことを忘れていたので、あらすじを予習してから観劇に臨みました。

すっごく楽しかったです!!沢山声をだして笑ってしまいました。一人ひとりが役を楽しんで生きているのがいい。お客さんが沢山笑って、それを受けて板の上の演者たちもより大きく伸びやかに役を生きて。その相乗効果でどんどん劇場全体が幸せな気持ちに包まれていくのが肌で感じられて、これこそ劇場での観劇!という喜びを身体で感じました。

そもそも、『ピガール狂騒曲』のオープニングがよい。「♪もしもこの世界が劇場なら」というフレーズで始まるんです。"人生と舞台は似たもの"ということを最初に提示し、劇場で描かれる悲喜こもごも(今回は喜劇なので笑いが多いですが)は、私たちの人生にも同じように起こることだということを示しているのが好きです。ジャックの「本当の自分を探している」と思い悩む姿も、ガブリエルの「自分の人生を自分で決めるのよ」という意思も、どちらも自分の人生にもある感情なのだなと気づかせてくれる。

もう一つすごく好きだったシーンがあって。新作上演中のムーラン・ルージュが大混乱になり公演が中止になったのち、失意のシャルルが歌う「夢のかけら」という歌。劇場を愛し夢をみて、沢山の思いをかけてきたけれど、一夜の夢として夜明けとともに消えてしまう、と歌うシーン。けれど、シャルルは失意を抱えつつ、しかしなおもやはり劇場という場をあきらめないのです。「一夜で消えてしまう」という舞台の儚さを知りつつ、なお舞台を愛するシャルルの姿に、私も強く共感してしまいます。

それぞれのキャラクター造形もすごく好きでした。私は珠城さんに人間味のある繊細さを感じるんですが、それがジャックに通じるところがあったなと思い、一方でヴィクトールはめちゃめちゃカッコよくて、ひゃーーーーっっっ、ってなりました(笑)。意思をもって自分の生き方を切り拓いていくガブリエルも、美園さんにすごく似合っていて素敵だった。月城さんの演じるシャルルは、コミカルである一方、「夢のかけら」を歌うシーンでぐっとシリアスな一面も見せてきて、人の多面性が見えるのがとても好きでした。

この作品のテーマはきっと、劇場への愛であり、また人間賛歌なんだろうと思います。だからこそ、コロナ禍のこの時期に見られて、私は余計に胸を打たれ、沢山の幸福と沢山の愛をもらって帰ってきたんだと思います。

(テーマのことばかり書いていますが、レビューシーンもいいし、衣装も素敵だし、舞台セットも、盆の使い方も好きでした!見どころ沢山だった…!)


-------------------
■フィナーレ

踊りながら銀橋を渡っていく珠城さんが、客席を見渡しながら幸せそうな顔で踊っていたのにものすごく胸がいっぱいになりました。そして男役さん群舞が、黒タキシードのがっつりパワーのある踊りで、めちゃめちゃ滾りました(笑) やはり宝塚観ると元気になるなと実感した!!(もう一回見たい!)


-------------------
■珠城さんのご挨拶

初日だったので珠城さんのご挨拶がありまして。これもまた幸福感で胸いっぱいになるご挨拶でした。珠城さん、ニコニコと幸せに満ちた表情で客席を見渡しながら、「長いあいだずっと待っていてくださり、ありがとうございます」「皆様がどのようにお過ごしになっているか大変気になっていました」と言っていて。突発で来た私などでも嬉しい気持ちになりましが、長く待っていたファンの方はたまらなかっただろうなあ…。何度目かのご挨拶のときに「あー、皆様、本当にお久振りです!」と言っていたんですが、この「あー!」というのが好きで。あとは「コメディ、いいですね」という言い方も好きだったなぁ。こういう、ポロっとでたような言葉の中に、飾らない素の思いがたっぷり詰め込まれているように感じたんですよね。

(あと、何度目かのご挨拶のとき、二階席にも視線を巡らせて「二階席の皆さんも見えていますよ!素敵なお召し物ですね!」と声をかけていて、この後「二階席の皆さん。見えてませんよ!」というご挨拶する座長の作品を観に行く予定だったので、そのギャップが私的に面白かったです(笑)。(「見えていません!」という座長も、客席に向ける愛は負けてないですよ!))

そして繰り返し珠城さんが言っていた「幸せです」という言葉。同じように幸せを感じていたので、それを共有できたようで、余計に幸福感が増しました。これが劇場の魔法だなあと思うのです。演者と観客がひととき同じ思いをシェアする、その尊さと愛しさ。それを感じられたことが本当に嬉しい。


コロナ禍で劇場に行く回数が激減していたけれど、劇場って、演劇って、本当にいいな。私はこの空間がとても好きだな。ということを改めて思わせてくれた観劇になりました。この日は一席明けの制限を撤廃した最初の上演でもあって、暗転の暗闇のなか劇場に鳴り響く拍手の音の大きさに、びっくりするくらい幸福感を感じたことも忘れられないです。この日の幸福感をきっとずっと覚えていると思います。この公演を観られて本当によかったです。


(そして東京公演もきっと行くでしょう!)