その1はこちら
☆岡ジャベールは、いつもに比べて随分と冷静なように感じました。仮釈放の「違う、ただ許可証をやるだけだ」が、前はもっと感情的に言葉をたたきつけるように言っていたと思うんだけど、今回はとてもクール。この段階では、バルジャンの存在は、ジャベールの心を乱す存在ではないみたい。
☆「冷静なジャベール」という思いをもって観ていると、スターズが今までと違う印象で聴こえてきた。なんというか、静かな確信に満ちているように聴こえた。神の道を正しく歩んでいるという自負と希望と、同時に神に対する深い信頼と。神の正義を疑いなく信じていて、その道から外れることがあるならば、その人は煉獄に堕ちなければならないということを確信を持って歌っているように思った。
☆つまり、昨日の岡ジャベールは、なんだかとても信仰深いように思えたということ。神の正義を信頼していて、その正義を完遂するためであれば、たとえ神の道から外れたのが自分であったとしても、甘んじて煉獄に落ちることを受け入れるだろうと思えた。
☆こんな風に思ったのは、ひとつには、スターズがとても美しかったからだと思う。どこまでもまっすぐな美しい響きが、揺るがない信念のように思えたのです。
☆感情の乱れは、砦でバルジャンに救われてから。そこで一度、気持ちが大きく揺れた。だけど、この段階では、まだ気持ちは揺れただけで、自分の信念は崩れていない。
☆本格的に乱れたのは、下水道で思わずバルジャンを逃してしまってから。今までどうしてジャベールはバルジャンを通すのだろうと思っていたけど、今回の岡ジャベールでは、なんとなく納得できた。今回の岡ジャベールは、厳格だけれど、他方で人間的なものも感じたから。必死なバルジャンに心を許してしまったんだと思った。
☆自殺は、狂気とかはあまり思わなかった。スターズを聴きながら、「この人は、神の道から外れることがあったら、自らを地獄へ落とすために死を選ぶ人だ」ということを納得していたからかも。下水道で感情が乱れバルジャンを逃してしまった自分は、もはや死しか行く道がないと思っているように見えた。
☆「早く逃れたいジャンバルジャンの世界」という言葉がとても真にせまって聴こえた。バルジャンを逃すことで神の道を外れてしまった自分が、また神の正義へ立ち戻るためには、死しかないと思っているようで。一刻も早く、自分が信じていた価値観に立ち戻りたいと切望しての、身投げのように思えた。
☆そういう意味では、ジャベールにとって、自殺はある意味救いだったんだろうか。(ただし、キリスト教の価値観では、自殺は絶対に許されない罪だと思うのだけど)。
☆ジャベールもバルジャンもどちらも深い信仰を持っているのに、この結末の違い。以前どこかのネット評でバルジャン=新約の価値観、ジャベール=旧約の価値観ということを読んだのだけど、それはとても納得できる分析。ジャベールを観ながら、私は最近いつも「たとえ山を移すほどの深い信仰をもっていても 愛がなければ無にひとしい」という聖歌の一節を思うのです。
つづきはこちら