彼への手紙を投函してから彼女は屋敷に戻った。彼女は残して行く人への手紙を書き始めた。アルバートさんに、アニー、アーチー、パティ、レイン先生、ジョルジュ…。そして未練がまじいと思ったが、彼にも書いていた。彼への手紙は、彼には読まれないだろうが書くつもりだ。夜まで手紙を書いていると、ふいに扉をノックする音が聞こえた。彼女は少し怯えた顔をしていた。何故なら屋敷の鍵は夜は全部しめてあったからだ。まだ時間は早いとはいえ、怖かった。

『どちら様でしょうか?』

 扉の奥からは何人かの声が聞こえてきた。

『夜分遅くに失礼致します。私、ウィリアム様に命じられてキャンディス様のお手伝いをしに参りました。マイクでございます。』

『同じくウィリアム様に命じられてキャンディス様の身の周りのお世話をさせていただく事になった、イメリアでございます。』

『同じくウィリアム様に命じられてコックをさせて頂く、ジョンと申します。ウィリアム様から合鍵を預かって参りました。驚かせてしまい、申し訳けございません。』

『同じくウィリアム様に命じられてキャンディス様のお手伝いをさせて頂くエミリーと申します。』

 彼女が扉を開けると、4人の男女が立っていた。コックだと名乗った彼はアルバートさんより少し年上だった。そしてイメリアはジョンの妻だと言う。マイクはその息子でエミリーはマイクの婚約者だそうだ。

『夕食の片づけが終わりましたら、我々4人のうち2人は帰らせていただきます。後の2人はこの屋敷に泊まって警護を致します。よろしくお願い致します。』

『よろしくね!私はキャンディス・ホワイト・アードレーです。一応アードレー家の養女なの。』

 その日は夕食は済んでいた。彼らとしばらく談笑すると今日はイメリアとエミリーが泊まると告げて、部屋を出ていった。彼らが出ていくと、彼女はまた机に向かい始めた。

    ウィリアム・アルバート・アードレー様

 何度もご迷惑おかけして申し訳けありません。いい養女でいられなくてごめんなさい。ウィリアム大叔父様、私を養女にしてくださってありがとうございました。アルバートさん、私を支えてくれてありがとうございました。私は従軍看護婦になりますが、必ず生きて帰ってきます。その時は笑顔で会いましょう!

    キャンディス・ホワイト・アードレー

        レイン・ローチ様

 先生、ごめんなさい。よく考えたのですが、やはり私は従軍看護婦に行くことに決めました。死ににいく訳ではありません。自分らしく生きる為に決めたんです。先生にはいつも心配ばかりかけていますね。本当にごめんなさい。これ以上迷惑をかけない様に、必ず生きて帰ってきます!先生、お元気で!子供達にもよろしくお願い致します。

    キャンディス・ホワイト・アードレー

      パトリシア・オブライエン様

 黙って出ていく事、許して頂戴ね。パティ、私は夢を叶える為に戦地に赴く事にしました!ごめんね。あなたがどんなにステアの事で辛い思いをしたのか知っているのに。でも私は必ず生きて帰ってくるわ!約束するわ。パティ、あなたとまた会える日を楽しみにしてます。戦地からまた手紙を書くわね!心配しないで、従軍看護婦だもの。絶対に帰ってくるわ!

    キャンディス・ホワイト・アードレー

               T.G様

 あぁテリィ。あなたがこの手紙を読むことはないわね。あなたが今も好きなの。愛しているわ。何故あの時自分からあなたの手を離してしまったのかしらね?今でも後悔しているのよ。あなたはきっと幸せでいてくれるわね?そして全部許してくれるわね?テリィ、あなたの情報が入ってこない所に私はいくわ。今のわたしにはあなたを忘れられる自信がないの。他にも理由はあるけど、だから行くのよ。あなたには心の中で手紙を書くわね。さよなら、テリィ。いつまでもあなたを愛しているわ。

                  T.S

 その後もいくつかの手紙を書いた。全て書き終わる頃には夜が開けていた。彼女は新しい扉を開くべく従軍看護婦になる為の道を、着々と進んでいた。