『CHESS』の第一幕は「アナトリーの亡命」で終わりましたが、「第二幕」はそれから一年後の『ワールド・CHESS・チャンピョンシップ』大会から話は再開します。
この一年の間に(第一幕で出て来た)各人にもそれぞれ大きな変化がありました。果たして、どのような「変化」があったのか?それがいきなり「ワン・ナイト・イン・バンコク」の曲と共に始まります。
そう、メラノから一年後の『ワールド・CHESS・チャンピョンシップ』大会は、場所をタイのバンコクに移したのです。
『CHESS』海外での配役と日本公演で演じる俳優名~第二幕~
★アナトリー・セルゲイフスキー:現世界CHESS・チャンピョン、西側に亡命し、今回は西側(アメリカ)代表として出場するが……(ラミン・カリムルー、Ramin Karimloo)
★フローレンス・ヴァッシー:フレディと別れ、アナトリーの新しい生活を始めて一年、だが……(サマンサ・バークス、Samantha Barks)
★フレデリック(フレディ)・トランパー:前世界CHESS・チャンピョン、なんと「メディア」に転身!(ルーク・ウォルシュ、Luke Walsh)
★アービター(審判員):ワールド・CHESS・チャンピョンシップの審判(佐藤隆紀、Takanori Sato)
★スヴェトラーナ・セルゲイフスキー:アナトリーの貞淑な妻、そして修羅場に!
★ウォルター・コーシー:世界CHESS選手権の司会者、グローバル・テレビジョン
★モロコフ:アナトリーの元セコンドでソ連KGB
★レオノイド・ビガンド:新しいソビエトのCHESS・チャンピョン、通称〝CHESS・マシーン〟
◆第二幕大意(ストーリー)
あれから1年が過ぎた。今年の『ワールド・CHESS・チャンピョンシップ』大会がタイのバンコクで行なわれようとしていた。現在の世界チャンピョンは西側に亡命したアナトリー。彼の対戦者(挑戦者)はロシア人の“CHESS・マシーン”ことレオノイド・ビガンド。今度の戦いは“アナトリーのタイトル防衛戦”だ。昨年とは逆の立場のアナトリー。しかも今年は母国ソビエト代表ではなく、アメリカ代表として、ソ連のチャンピョンと戦わなければならない。このソ連の挑戦者はやはり、モロコフとその仲間達にコントロールされている。昨年までの世界チャンピョンのフレディは、今はCHESS・プレイヤーからは引退し、この競技会にはTVのコメンテーターとしてやってきた。フレディは、プレイヤーの重圧から解放されてリラックスしているようで、メラノにいた時とは全く別人。それでもバンコクの怪しげな魅力に会場は飲み込まれる。
ウォルターとフレディは、これから始まる選手権のテレビ放送の確認をしている。試合が始まる。アナトリーは先に1勝したものの、2戦目を落としたところから集中できないようだ。フレディがメラノでマスコミから攻撃されていたように、今度はアナトリーがマスコミの集中砲火を浴びているのだ。しかも、かつてのライバルのフレディがその中心人物であるから余計に気がおかしくなる寸前にまで追い込まれれいるのだ。フローレンスは、フレディがここバンコクに来ているのはお金のためであって、自分たちの人生を邪魔するためではないとアナトリーに言って聞かせる。だが、さらに不安にさせるニュースが入る。アナトリーの妻、スヴェトラーナがバンコクに来るというのだ。アナトリーとフローレンス、二人の関係に初めて不穏の空気が流れ始めた。
一方モロコフは優れた“CHESS・マシーン”ことレオノイド・ビガンドに絶対的な信頼を持っていた。(モロコフは)アナトリーのように妻が突如現れるといった個人的な問題に邪魔されることもなく、彼の勝利に確信を抱き、歓喜に酔っている。モロコフにとって都合のいいことに、(アメリカ側の)ウォルターは、アナトリーに衝撃を与えるようなテレビインタビューを手配してした。まず、インタビュアーは他でもないフレディ・トランパー。それに、スヴェトラーナのビデオを公表しようというのだ。アナトリーと、かつてのフレディの恋人だったフローレンスを心理的に窮地に追い込む作戦だ。(フレディの)無神経で口汚い個人的な質問がいくつも続いた後、アナトリーはスタジオから出て行く。ウォルターとモロコフは“敵国”であるにもかかわらず共謀して、アナトリーがゲームに負けてソ連に戻るように、このようなインタビューを仕組んだことが明らかになる。
スヴェトラーナ・セルギイフスキーは、バンコクで一人ぼっちで悲しんいるように見えた。だがそれは一年間、アナトリーと離れ離れになった妻として思い悩んでいるのではない。彼女は、アナトリーとのこの一年間と現在のゴタゴタともいえる事件の後には明るい未来がきっとあるはずと確信していたのだ。
陰謀はますます激しくなる。登場人物のそれぞれが競うように策略を繰り広げ、それが競技会でのCHESS盤上の策略にも影を落としていく。アービターは、この状況を監視しようとするが全く手の施しようがない。モロコフは、スヴェトラーナにアナトリーをソ連に連れて帰るように圧力をかける。アナトリーとスヴェトラーナ夫婦は気まずい対面をする。他方、ウォルターはフローレンスに重大な情報を教える。フローレンスの父親は実はブダペストで死亡しておらず、ソ連で長年投獄されているという貴重な情報だ。もちろんフローレンスは動揺する。この選手権が「いい結果」に終われば、フローレンスの父親は西側諸国への移送が許されるというのだ。その為には、アナトリーが、この大会に負けてモスクワに戻るのが必須条件なのだ。フローレンスはウォルターの言うことを信じていいのかどうかわからくなる。ウォルターは、きっとフローレンスこちらの思い通りに動くだろうとモロコフに伝えるが、念には念を入れ、フレディの協力も取り付ける。フレディは、アナトリーがフローレンスの為に試合を放棄するように企てるが、アナトリーに一蹴されるばかりか、フローレンスにも軽蔑される。
フローレンスに拒否され、アナトリーに蔑まれ、政治に利用されたフレディは、ついに疲れ果ててしまう。そしてとうとうフレディの“傲慢で偉そうな自尊心”のマスクは剥がれ落ちてしまったのだ。同じく悲しんではいるが、自制心は失っていない愛人(フローレンス)と妻(スヴェトラーナ)は、自分が愛する同じ男(アナトリー)のことを歌う。
しかし、CHESSの試合は続けなければらない。アナトリーは、心を落ち着かせようと試みる。家庭の問題をいったん切り捨て、気持ちをCHESSに戻そうと、バンコクの公園で一人打つ手を考えている。そして突然、隣に立っているフレディに気づく。このかつてのライバルはCHESSのことを話したいだけなのだと分かってアナトリーは驚かされる。フレディは、ゲームを見ていて気が付いた挑戦者ビガンドの弱点をアナトリーに告げる。
スコアは5対5、どちらにとっても勝利まであと1ゲーム。アナトリーが負け、ビガンドが新チャンピオンになるだろうと誰もが思っていた。偉大なCHESS・プレイヤーがいつの時代もそうであるように、アナトリーは、自身の複雑な人生に翻弄されていた。政治の世界でも、またプライベートでも、フローレンスに、スヴェトラーナに、モロコフに、ビガンドに悩まされてきたのだ。しかしアナトリーは決断する。自分が自分に正直でいられるたった一つの方法は、ゲームで最高のスキルを見せることだということを。アナトリーはようやく終盤にきて自分自身を取り戻し始める。アナトリーは、困難な状況を乗り越えて勝利する。
フローレンスとアナトリーは、一緒にいられる時間が終わったことを知る。お互いへの愛情は終わってはいない。だが、アナトリーは母国ソビエトに帰ることを決意する。ありのまま自分に戻り、今なお世界チャンピオンであるという誇りを持ち、フローレンスと別れるのだ。そして何より、自分(アナトリー)がソ連に戻れば、フローレンスの父親が解放される……。アナトリーはフローレンスを愛すればこそ、フローレンスが父親と再会できることを信じ、モロコフたちの戦略に従う決心をしたのだ。しかし、本当にフローレンスの父親は生きているのだろうか?アナトリーが去った後、ウォルターは父親の新しい情報を手に、フローレンスににじり寄った。フローレンスの父親が本当に生きていることなんて誰も知らない、ましてや、父親がフローレンスのもとに戻ってくるなんてありえないと。
*『CHESS IN CNCERT』『CHESS』スコア参照、第二幕終了FIN
大まかに「第二幕」のニュアンスは掴めたでしょうか?
フレディはかつての敵であった「メディア側」に転身し、昨年メラノで「メディア」から自分が受けたと同じ仕打ちをアナトリーにぶつけます。徹底的にアナトリーを攻撃します。全てはフローレンスを取り戻す為です。しかしフローレンスからは愛想をつかされ、もうフローレンスが自分の元に戻らないことを悟ります。そんな中、フレディは、かつて自分が『CHESS』に情熱を賭けていたことを思い出します。そして、敗戦もやむなしのアナトリーを助けます。フレディはゼロから人生をやり直すことに決めたのです。
フローレンスは、フレディが自分とアナトリーを執拗までに攻撃・干渉してくることに唖然とします。そして、1956年のブタペスト動乱で行方不明になった自分の父親が実は生きていることを敵国ソビエトのセコンドKGBモロコフ、グローバル・テレビジョンのウォルター、そしてかつての恋人フレディから聞き、動揺します。しかし、そんな彼女に最も辛い試練が訪れます。なんとアナトリーが祖国に帰ってしまったのです。フローレンスは一人ぼっちになり、ウォルターから「父親が本当に生きていることなんて誰が知っているものか」と言われ、茫然とします。そうです。フローレンスは何もかも失ってしまったのです。そして、アナトリーがソビエトに帰った「本当の理由」を聞き、さらにショックを受けます。
アナトリーは西側(アメリカ)陣営になり、最初の『ワールド・CHESS・チャンピョンシップ』防衛戦をフローレンスと共に迎えますが、フレディからのくだらないインタビューを受けたり、メディアからのしつこいインタビューにうんざりしていたところに、妻のスヴェトラーナがソビエトから来たことを知り、さらに動揺します。そしてあろうことか、フローレンスの父親が生きていることを知ります。その上、フローレンスの父親をフローレンスの元に戻すために「試合に負ける」か、「勝って、ソビエトの帰順」するよう求められ、心の中で格闘します。そしてアナトリーの選んだ道は「勝って、ソビエトに帰順」することでした。愛するフローレンスのもとを泣く泣く去って行きます。
アメリカ陣営のウォルターは「グローバル・テレビジョン」は独占放送も出来たし、誰が勝とうが彼には全く関係ありませんでした。彼は彼の役目を十分果たしたことに満足します。
新たなソビエトCHESSチャンピョンを引き連れ、一年前、彼のセコンドで登場したKGBのモロコフは、アメリカのウォルターと協力し、フローレンスの父親が生きている情報をあたかも“真実”であるかのようにフローレンスに信じさせ、動揺させ、アナトリーにはフローレンスの父親を戻す為の条件を伝え、アナトリーのソビエト帰順に成功します。しかし、アナトリーと約束した「フローレンスの父親を戻すという約束」は知らぬ存ぜぬな顔で、アナトリーとスヴェトラーナと共にソビエトに戻ります。
スヴェトラーナは本当はバンコクに来るはずではなかったのですが、モロコフの戦略にみすみすハマり、バンコクにやってきて、アナトリーと口論します。そして、フローレンスと自分とでは、どちらがアナトリーを本当に愛しているか?フローレンスに求めます。そして、ついにアナトリーを取り戻すことに成功します。しかしソビエトに帰って、そのままアナトリーと「新たな生活」が出来たかどうかはわかりません。
人が幸せになったり、不幸せになるのは、いつ、どんなことがきっかけで起こるかわかりません。他人の手により、人生が左右されることも多々あります。それはまるで『CHESS』のコマのように、神の手によって、なされるのです。
大事なことは、「後悔しない生き方」をすること。そして、人生は、いつ、どんな環境下でもやり直しがきくということ。『CHESS』はそんな人間の人生絵巻をミュージカルと言う形を通して、私達に伝えているのです。
果たして、あなたの人生は、どうですか?
チケット情報
【梅田芸術劇場メインホール】 2020/1/25(土)~2020/1/28(火)
料金S席 13,500円 A席 10,000円 B席 7,000円 (全席指定・税込)
問い合わせ:梅田芸術劇場メインホール:0570-077-039
1月25日土曜日・17:30
1月26日日曜日・12:30・17:30*
1月27日月曜日・13:30
1月28日火曜日・13:30
*アフタートーク(登壇者:ラミン・カリムルー、ルーク・ウォルシュ、佐藤隆紀)
◆チケット取り扱いhttps://www.umegei.com/schedule/838/ticket.html#place936
【東京国際フォーラムホールC】 2020/2/1(土)~2020/2/9(日)
料金S席 13,500円 A席 10,000円 (全席指定・税込)
問い合わせ:梅田芸術劇場 0570-077-039
2月1日土曜日・17:30
2月2日日曜日・12:30・17:30*
2月3日月曜日・18:30
2月4日火曜日・13:30
2月5日水曜日・13:30・18:30
2月6日木曜日・休演
2月7日金曜日・13:30
2月8日土曜日・12:30・17:30
2月9日日曜日・12:30
*アフタートーク(登壇者:ラミン・カリムルー、ルーク・ウォルシュ、佐藤隆紀)
◆チケット取り扱いhttps://www.umegei.com/schedule/838/ticket.html#place936