電子書籍で出版した「網走五郎・神社物語」、(81)  那覇軍港使用断念

 

(81)  那覇軍港使用断念

   平成21129五郎は琉球新報「声の欄」に「軍港の駐車場利用を」と題して、次の文章を投稿し県民に訴えた。

 

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   今年の沖縄県護国神社の初詣参拝者は二十三万人と多くの人で賑わいました。しかし一方で神社周辺道路は大渋滞を呈し、神社への苦情が多く寄せられました。バス会社からは「定時運航が出来ない、停留所に車が連なっていて、停車できない」とお叱りを受けました。特に国道五十八号線の渋滞は、浦添市まで連なり、前記以外の多くの方々に、大変ご迷惑をお掛けしたことを深く詫び申し上げます。

   さてこの渋滞を解消する手立てはないのでしょうか? 実はあるのです。沖縄県護国神社の隣には道を挟んで、何千台も駐車できる那覇軍港があり、産業祭りやNAHAマラソンでは駐車場として貸し出しています。当護国神社でも一年前より、再三、沖縄防衛局へ出向いて、軍港の貸し出しを要請してきました。しかし話し合いは不調に終わりました。

   沖縄防衛局では、軍港使用の申請者が沖縄県護国神社ではなく、沖縄県・那覇市・沖縄県警等地方公共団体であれば、申請を受理するとのことでした。

   神社仏閣への正月初詣は日本人の伝統文化です。沖縄県・那覇市及び沖縄県警の御英断を仰ぎます。             (沖縄県護国神社禰宜)

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 一方、年が明けた115日、神社の新年宴会の席で、元副知事の嶺井政治に県の協力をお願いした。

   平成二十一年十月末、嶺井政治から五郎に連絡があった。

「県の協力許可を得た」

   県の協力があれば、使用許可がおりると桐山励次は言っていた。五郎は勝利を確信し、再び防衛庁へ提出する書類の作成に取り掛かった。書類は万全を期し、使用申請者を沖縄県護国神社ではなく、宗教色のない沖縄県遺族連合会とし、会長 仲宗根義尚からの承諾も得た。

   平成21114日、職員会議で想像を絶することが起こった。

和輝が言った。

「軍港の使用を職員が望んでいるとは限らない」

   鈴木宮司は職員一人一人に意見を訊ねた。軍港を借りることに賛成したのは、なんと五郎1人だったのである。反対理由は「採算がとれるとは限らない」であった。

  ちなみに軍港使用料は無料である。交通整理にあたる警備員代が嵩むのみである。せめて反対理由を『神社は利益追求の団体ではない』と言って欲しかった。

  平成22年、五郎最後の新年初詣参拝者数、警察発表24万人。過去最高を更新した。