面積4.2㎞。人口3,485人と小規模な自治体ですが、合計特殊出生率は1.9ということで、全国平均の1.42を大きく上回っている日吉津村にて、 日吉津版ネウボラの事業とあわせて子育て支援や移住施策まで幅広く学ばせ ていただきました。

 日吉津村も私たちの地域と同様に、子育て世代は集合住宅居住者も多く、 転勤族世帯や町内会などに加入しない世帯も増えていることから、保護者が 出産や育児に対する不安や負担を感じる状況が増えてきています。

 こうした状況に対処するため、同村は子育て支援策として「保育所総合支 援事業」を実施し、障がい児や低年齢児受け入れに対して国基準よりも多く 保育士を配置する際の賃金支援をおこなうことで、保育環境の充実と子育て 支援策の充実を図っています。さらに、「小規模保育支援事業」として村内に ある定員15人の民間小規模保育所に対して保育士増員に対する人件費補助 を実施(1か所はイオンのテナント内にあり、日曜にはお客様のお子さんも 預かることが可能)しています。

 また、平成26年にはネウボラの中核となる妊娠・出産包括支援モデル事 業を厚生労働省のモデル事業として実施し、現在も継続して①利用者支援事 業(母子保健型)②産前・産後サポート事業③産後ケア事業の3事業を実 施しています。

 ①の事業は妊娠期から出産・子育て期に渡るまでの様々なニーズに対して 総合的相談支援を提供するワンストップ拠点として、「子育て世代包括支援セ ンターすまいるはぐ」を設置(平成27年度より)するもので、非常勤の保 健師を母子保健コーディネーターとして配置。妊娠期から就学までの総合的 な情報提供・相談支援を行うと共に妊娠期から就学までの個別支援計画を作 成し、適時更新を行いながら支援計画に合わせた子育てプランを母子健康手 帳交付時に提供するものでした。  

 サービスの利用や支援を実施する際は、関係機関とのケース会議(関係者 会議)を月1回開催し、情報共有と対応などの検討を行っています。

 ②の事業は母子健康手帳交付時のアンケートや保健師による面接で気にな るケースや希望者に対して助産師・保健師による個別相談や継続訪問を行う もので、専門スタッフによる情報提供・相談支援や月1回程度の「おしゃべ り広場の開催などを通じて孤立化を防ぐ取り組みを進めていました。

 ③の事業は助産師や保健師が子どもの生まれた全世帯を訪問。育児に関す る情報提供、相談支援を行うもので、産後早期からの支援を中心に、育児不 安の強い家庭や母に精神疾患があるなど、支援が必要と判断された家庭にさ いて継続訪問を行う事業でした。また、産後うつ等のリスクが高いと判断さ れる方には心理士によるカウンセリングも必要に応じて勧めていくとのこと でした。

 他にも同村では、地域少子化対策強化事業として子育てナビというA3を2 つ折りにした大きさのパンフレットを作成しており、妊娠から子どもが社会 人になるため、同村で受けられる子育てサポート事業・医療機関で受けられ る検診や予防接種・同村が実施する経済的支援についてわかりやすく一覧 にして配布しており、全戸配布するほか子育て世帯へも各機関を通じて配布 を行いっています。これは優れた配布物で見習うべきものでした。

 また、利用者支援事業として保護者や妊産婦が地域の支援施設や教育機関 などを利用できるように情報提供と相談・助言実施しており、関係機関との 連絡・調整・協働の体制づくりを行いながら、地域で必要な社会資源の開発 に努める役割を「子育て世代支援センターすまいるはぐ」は担っており、将 来的には高齢者を含めた包括支援も念頭に置いて組織体制整備を進めている とのことでした。

 なお、保健師の体制は福祉保健課に正職員4人を配置。うち1人は健康相 談検診センターに配置するとともに、嘱託1名は母子保健コーディネーター として配置。業務分担制を採用し、母子保健担当は1名となっています。  障がい者や高齢者などの担当者も同じ課の中に所属するため、連携が取り やすいのも特徴とのことです。  最後に、今後に向けてですが「事業を見直しながら、拠点施設の子育て世 代包括支援センターの整備を進め、妊産婦や親子が気軽に立ち寄れる場所を つくり、顔の見える支援の提供を行うこと」や、「関係機関・他職種との連携・ 協力を進めながら、地域全体で妊産婦や親子、未来の親となる子育て世代を 含めて見守り、支援する体制を目指す」とのことでした。

 網走市の事業には、ネウボラのような包括支援体制はまだ確立されていま せんが、現在実施している事業を見直しながら、実現に向けた取り組みを進 めていく必要があると改めて感じました。

 なお、移住促進策として同村は夏休みや放課後を含めて幼児期・児童期共 に待機児童ゼロを掲げ、政策として実現させていることや、1区画60坪の 宅地造成では将来、高齢者タウンが出来てしまうということから、1区画250 坪の宅地を分譲し、3世代同居可能な世帯(事実上、一定の所得のある世帯 の移住促進を促そうとしている)し、さらなる移住増を図りながら、合計特 殊出生率をさらに向上させるための次なる一手を常に考え実践するという強 い意志を、首長を先頭に職員全体で共有しているのも大きな特徴でした。適切なトップダウンと首長の情熱と強い意志をいい意味で受け止めたボトムアップのバランスが取れていることの大切さも改めて認識しました。