③武雄市 「Facebook」を活用した地場産品の販路拡大事業 「F&B良品TAKEO」 図書館の指定管理者導入について (24日実施)
 武雄市はホームページをフェイスブック(FB)に切りかえたり、市立図書館の運営をツタヤに指定管理者として移管する計画をたてるなど、新しい取り組みに果敢に挑戦している。
今回は、FBを活用し、地場産品の販路拡大に取り組む「F&B良品TAKEO」について学び、網走での導入について検討する1つの足掛かりとしたい。また、FBの活用における行政の考え方そのものについても学びとってきたい。
 また、FBという新しいコミュニケーションツールを使って、「行政機関の信頼性」を活かした網走市の「お勧めの逸品」を通信販売する仕組みは、本物志向の消費者と地域をつなぐツールになりえるし、熱心な網走ファン獲得にも大きく寄与すると考えられます。
また、網走でも是非、このような事業を実施するべく議会でも質問するなどして行きたいと考えました。

○Facebookの利活用について
武雄市では議会の一般質問が盛んである。そこでの新しい事業の発案も多い。昨年までの視察は、いのしし課への視察が多かった。(捕獲した、いのししの製品化など)
 説明をしてくださった、山田フェイスブック係長には、つながる部企画係長など6つの兼務があり、武雄市役所の職員の場合、複数の部署にまたがる業務を職員が兼務するのはごく普通のものとなっている。武雄市役所の課や係の名前には、目を引く物が多い、課の名前は「まじめにふざけて一生懸命」つけており、そのことでも仕事の内容が浸透しやすかったり話題になることで覚えてもらいやすかったりするなどの効果がある。
 コミュニケーションの基本は直接会うことであるが、それは簡単ではない。だから、SNSが台頭している。
 FBは「写真名鑑」であり、あくまでもマジメな「出会い系」のようなもの。
 また、世界各国の人口と比較すると、中国・インドに次ぐ世界で3番目の利用人口を抱えている巨大なSNSとなっている。
 武雄市では、セバストフォール市と姉妹都市になっており、お互いのFBで紹介し合うなどの活用も行われている。
 また、武雄市には市職員の自主的な活動として「武雄市大盛り部」というものがあり、ここもFBページを開設している。これは単純な課外活動とはいえず、まちのPRに大いに役に立っているなどしているため武雄市のFBから「いいね!」を押すなどして連携している。職員全員がFBをはじめており、グループウエアとしてもFBを活用しているため、FBの職員の勤務中使用に関する制限や取り決めは存在していない。

【FBの主な効果】
イベント効果、突然の来客
時空を超える出会い!!再会、思わぬ交流関係の発見!!

「コミュニケーションの標準ツールになる」 「年齢は関係ない」

「市の仕事がリアルタイムでわかる」
「電話だと忘れても許されることもあるが、書かれた事はすぐ始める事になる。」
「誰が対応したのかすぐに分かるため、トラブル時の対応にも有効」
【その他の効果】
「昨年8月から、ページビューが月刊5万件だったものが300万件になった!!」
→双方向性がやはりキーワード
※現在は、3月末までで1800万件まで増加している。
「見える化」「スピード化」「活発化」が達成できたのは確かで、市長は「これではまだ。所得向上につなげたい」ということで始めたのがF&B良品である。
→現在50品が購入できる。
始まった理由は市長の思いつきではなく、市長のブログ「武雄市民物語」から始まっている。そこから、twitterの開始→FBのスタート→市のHPを完全FB化→FB良品TAKEO
→Facebookシティ課と深化している。

 FBは職員全員が行っており、10回ほどに分けて講習を開いて始めた。
成果は「インタラクション数の増加」として閲覧数が飛躍的に上がることで立証されている
 市長の叱咤激励と、市職員の努力による取り組みの積み重ねがこの結果を生んだものであり、役所の視察に対しては「一生懸命やらないくらいならFBはやらないほうが良い」と伝えている。

○特徴的な例
 武雄市による「市民への課税ミス」をFBに掲載したところ、「課税ミスは批判されたが、FBにそのことを掲載したこと」については高い評価を受けることになった。結果として行政に対する信頼性は向上することにつながる。

○FBや業務に対する市職員の考え方
「公私一体」(公私混同ではない)が武雄市の基本的な考え方となっている。だから夜でも休みの間でも、必要に応じて担当職員と連絡しながらでもFBを書くという習慣が職員に浸透している。

・できない(思い込み)
・してはいけない(思い違い)
・したくない(思い上がり)
 「行政のできない理由」は上記の3点

「社会的手抜き」→年末年始やGWに発生などに発生しやすい。それを防止するには上記のできない理由で逃げないことが大切。
※「社会的手抜き」とは、集団で共同作業を行う時に一人当たりの課題遂行量が人数の増加に伴って低下する現象のことである。

「やっかみ」「セキュリティへの不安」「米国のサービスに委ねていいのか」などの事柄は、「できない理由」「やらない理由」にはならない。

○市民のFBの利用状況
市民のFB利用は1000人程度(人口約5万人)FBでは、「市民の皆さんだけに情報発信をしている」という意識はない。そこは意識を「市民だけのために」から明確に変えた方がいい。
 市議会議員でFBがあるのは10人くらい(そのうち5人はアクティブに利用)    

○その他の事項
・毎日書くネタは、FBシティ課でもネタは満載なので困ることはない。FBの活用も含めた業務の遂行については、意識改革を進めているが、「しなさいと言わずにそれを行う」のがポイントとなっている。
・今後の展開は、さらにグループウェアとしての利用を進めていくこととしており、すでに市役所の中の情報共有や掲示板はここで実施している。利点としてはスマートフォンからも確認できるため「どこにいても利用できる」ことだと考えている。
・FBの仕様が武雄市にあわせて変わっているという指摘もあるが、「FB側も、どのように運用しているか知りたい」ようであり、どんどん使って使いやすいように変えていってもらった方が良いと考えている。
・導入にあたっては「PC導入時の難しかった意識」は捨てた方がいい。それほど難しいものではない。
・紙媒体の「武雄市報」はこれからも重要な情報伝達手段になる。また、FBで挙げたネタや話題になった内容を市報に書いていくなど、これからさらに活用を考えている。

○F&B(ファンバイ)良品TAKEO事業について
「アクセス数の多さを地域所得の向上につなげたい」ということから、2011年11月7日販売スタート(11月1日に予定していたものをニュースが枯れた日に差し替えた。)
 最初は2つの商品の販売からスタート目標は1000商品、目標10億という意気込みで行う。
 地域の企業や生産者に限定商品をつくってもらって販売につなげていくことを目指しており、小規模で独自に通信販売事業に乗り出せないような事業者を中心に考えている。職員が企画販売を実施しており、竹林亭宿泊プランなども実施してきた。(10分で完売)
 取り扱いアイテム数は、12月には8商品、1月20商品、4月には50商品まで増やしてきた。今後もさらに増やして行く。

◆販売戦略
 FB機能を使った販売促進策として考えており、買ってくださった方が紹介して下さったものを「シェア」して行くことが基本。特に、「情報発信力のある人たちが商品を購入することで広がる」ということを重視している。
 また、情報の発信だけではなく、「共感の発信」を軸に据えて発信することを意識することが大切で、それが売り上げUPにつながる。

例)
●「御田中」という名前のお米
 販売数一時が落ち込んだが、「動画で生産者の顔が見えるように」すると、販売が大きく伸びる。(ビデオレターのイメージ)

●「いなかレモン」
野菜塾で取り上げられることで、プロの料理人の間で話題となり利用が広がった。

◆ユーストリーム「販売TV」を放送
月曜朝の生放送を実施している

◆現状と今後の展開
・11月から半年で200万円の売り上げだった。現在は、月間50万円の売り上げということで伸びてきている。(今年度は年間600万円程度まで伸びる見込み)

・個人商店、零細企業が通販で全国に商品や情報を発信していることに意味がある。

・注文の流れは以下の通り
 F&B良品で注文→「アイティワン」に連絡(ここが金銭扱いや生産者との連絡を行う。)→出品者→運送会社→消費者へ

・アイティアワンの手数料は5%で、出品者の出店料は無料で実施している

・他自治体にも実施を働きかけを行っておりポータルサイトをつくるなどして自治体の信用力と発信力を活用した地域活性化を目指して行きたい
【参加の条件】
自治体の直接運営、出店料無料、地場産品を提供選定委員会で選定、自治体のFBで実施、ロゴは統一したものを使用すること

※5月11日には薩摩川内でもスタート。年内に10から15自治体になる予定。
・職員の負担は少なくない。苦情への対応も素早くならなければならないため、ら四六時中確認をする必要がある。また、自治体がやっている通販と思われないように進めている。
・職員が業務として持続できる精神の根底にあるものは、「住民からの感謝とやる気」が根本となっている

○市図書館のTSUTAYAによる指定管理の計画について
・「会館時間と開館日をTSUTAYA並に広げる」ということからスタートし、「本の貸し借り」だけではなく、「知的活動の拠点」として位置づけていく過程で実施することとなった。知的ニーズを満たすものであり、雑誌の販売なども行う。(「代官山Tサイト」が参考になるかもしれない)
 個人情報の扱いが問題となっているが、業者に個人情報を渡すわけではない。また、図書館には歴史資料館としての機能もある。後者の維持は課題となっている。

○考察
・FBの活用については私の認識もまだ甘かった。網走市職員全員実施に向けて積極的に取り組む必要がある。まずは使うことからはじめるべきだという事が良くわかった。

・情報発信のツールとして「網走市民」だけを対象とせずに行うという割り切った考え方はFBに限らずweb全体に必要。

・webとFBの併存の方が効果的だと考えていたが実際に話を伺っていくと再考を要することも分かった。FBだけの場合と併存の場合の対費用効果について考察が必要だと思う。

・市職員の皆さんの考え方は新鮮だった。労働基準法や精神衛生上の心配はあるが、行政職員が全員このように考えて動くのだとすればこうしたその面は軽減できるのだろうと推測された。

・F&B良品については網走市の参加もできるだけ早い時期に検討したいと感じた。そのためには製品情報の精査などを進めることが大切だが、「進めながら開始する」という姿勢の方が大切なのだということは収穫となった。

・市民の参画という点では従来の市民活動との関係性をFBというツールと、現場にできるだけ直接説明に赴くという姿勢がさらに発展させているということを感じるものがあった。

・市長の強力なリーダーシップは大切だが、職員が自分たちで考えて判断するという土壌形成はもっと大切だと感じた。そのために武雄市が実践しているのは「権限を可能な限り現場におろす」ことであり、市長が「報道で初めて新しい取り組みを知る」というくらいでちょうど良いという考えを持ちながらも、「何かあれば責任は自分がとる」という姿勢を明確にしていることがこの状況を生みだしていることが分かった。

・まずは山田FB係長に網走市役所職員研修及び地域住民に対するFB活用研修の講師として網走に来てもらうことからはじめるとよいのではないか。そこから網走市としての情報戦略が始まるように感じた。