網走市議会経済建設委員会 行政視察報告書

2012年6月1日提出 平賀貴幸

●視察実施期間
 2012年5月22日(火)網走出発~25日網走到着まで(4泊3日)

●視察先及び視察内容
①高松市 「民間主導による観光振興について」(23日実施)
網走市は新たに観光部を設置しました。観光振興に改めて本腰を入れるという意識の表れでもあり、市民の期待も高いところです。
 その期待に応えるためにも、行政は長期的な観光戦略と市民も参画しながら観光をもりあげていくさらなる仕組みづくりが必要になります。
 そのためには宿泊施設や各商店(みやげ物店だけが観光施設ではないのです)、そして観光施設などが、積極的に連携し取り組んでいくという市政執行と仕組みづくりが必要になります。
 高松市では、民間が積極的に観光振興に対して取り組んでいるということですので、高松市の取り組みの現状を知り、その手法や背景について視察するとともに、網走でどのような民間主導の動きが実現できるのか考察したいと思います。

○高松観光プロモーション事業(平成20年に立ち上げ)
当時、横浜市で観光プロモーション認定事業が先んじて事業を開始しており、それ
を参考にして実施。現在は、豊田市、新潟市、大阪市などでも民間主導で同種の事業
を実施しているとのこと。
高松市では500万円を上限として、5事業を採択して事業を実施しており、地元の
企業や団体だけではなく、東京にある県人会・旅行エージントなどを通じて大手の企
業も関わることができるようにしていた。
補助率は、企業が実施する場合は総事業費の2分の1、団体は3分の1。
この事業は5カ年実施される予定であり、年間5事業のうち、高松市が指定した「強
化事業」の実施を予定している企業・団体には選定の際に加点されることになってい
るとのこと。
また、「成果があがった事業」「認定に至らなかったが、うまく行ったら面白いと思
われる事業」についてはフローアップ事業として別途取り上げることになっている。
審査方法は、第1次審査が文書審査となっており、第2次審査では公開審査(プレ
ゼン)を行うことで公平性を担保している。

○高松観光コンベンションビューローについて
 高松市観光協会とコンベンションビューローが合併して設立したもので、①国内外からのコンベンションの誘致及び支援等を行うことによる高松市及び香川県におけるコンベンションの振興②観光客の誘致及び受け入れを行うことによる高松市及びその周辺地域における観光の振興、サンポート高松に人・物・情報を集めることによるサンポート高松のにぎわいの創出③国際相 互理解の増進並びに地域経済の活性化及び文化の向上に寄与すること-などが目的。 旅行商品の開発及び取扱も手掛けており、コンテンツや素材の開発も実施している。

○事業実施に至る背景
 瀬戸大橋開通がピークだったが、大きく観光客は減少。来場者数が200万人ほどから50万人程度に大幅減少したところもあった。こうした状況からの活路を見出すためには、民間とタイアップするしかないということで事業が開始。実際に、地元の企業の取り組みはまだまだこれからだが、少しずつ浸透してきたところ。

○苦戦した事業
 PRとしては非常に効果的であり、報道にも取り上げられた、「自転車搭載デマンドバス。」
目的地にまで行き、迎えにもきてくれるというものであったがニーズが生まれなかった。

○その他の事項
・商店街再生の取り組みは住民調べから。
 高松市の丸亀商店街の再生は、60年にもわたる長期の「利用権」と、「地権」の分離契約にある。再生への取り組みは商店街にどれだけの人が住んでいるのかという調査から始まり、「想定以上に人が住んでいない」という現実から始まった。

○考察
・民間プロモーション事業は網走でも是非取り組むべきだと思う。旅行業界やイベント業界に 
 勤務する網走出身者も少なくない。他地域で実施する同様の事業と差別化を図る上でも、  
 企画する団体や企業の直接担当者は「網走市出身やまたはゆかりのある者」に限って行う
 のが良いのではないだろうか。(もしくは[熱烈な網走ファンであること]を条件にするのもよ
 い) この種の事業を実施するのは、網走市内の団体や企業に限った募集と、高松市のよう
 な方法があるのだと思われるが、私は高松市のような方法が望ましいと考える。

・「高松市の観光行政と高松観光コンベンションビューローの状況」と「網走市の観光における
 行政と観光協会の状況」を比較すると、行政依存度や企画力に差異があるように感じた。
 「高松観光プロモーション事業」の公募や選定など、事業実施における主体性は行政ではな
 く高松観光コンベンションビューローにあり、こうしたポイントも網走市における観光行政に
 対する大きな示唆を与えていると捉えた。

・民間主導の観光振興を進めるにあたり、企画は行政が行うということは確かに必要。一方で、
企画そのものを民間で行える体制づくりも必要。公募タイプの事業は行政は主導せずに、民間にできるだけ任せ、選考過程においては行政からも少人数が加わるという方法も有効ではないだろうか。

・商店街の再生については今回の行政視察項目には入っていなかったが、特筆すべき内容
だったと思う。東京の戸越銀座商店街などで同様の使用権と地権の分離を行い、再開発を進めた事例などもある。網走市の中心市街地の活性化のための1つの方策として検討する余地があると考える。