青リンゴサワー
高卒後の進学先は、病院併設の学校。体育館もあれば、テニスコートもある。病院職員に並び、私達学生も、利用することができる。元テニス部の私。テニスコートを見れば腕が鳴る。いつしかテニスラケットも自宅から、宅配だか帰省時に持ち帰ったかで、寮に取り寄せた。同期の仲間や、寮の先輩、居合わせた病院職員とテニスをよく楽しんだ。入学して数ヵ月。そろそろ夏の暑さを感じ始めたかどうかという頃のある日。テニスを楽しんだ最後、愛媛出身の小児科研修医だという女医とふたりきりになった。よかったら、ふたりの打ち上げにと、誘われ居酒屋に。テニスコートでたまたま、その時ご一緒しただけの縁。なんの話をしたのか記憶にないが、お互いの自己紹介的な時間だったのではないかと思う。気さくな、面倒見のよい方だとの印象は覚えている。まだ、お酒も覚えていない私。そんな私が注文してみたのは、青リンゴサワー。ビールとか、日本酒とかではなく、ジュースのようなお酒でとりあえず・・・という注文だったのではないかと思う。その氷浮かぶグラスの中の、炭酸はじける、さわやかな青。汗をかいた後の一杯。確か二杯目も飲み干したように思う。だんだん気持ちよく、ふわふわしてきた私。だけど、今日初対面のこの晩餐だけに、乱れるわけにもいかない。どこまでも、平静を取り繕う。そして、居酒屋での晩餐は終わり、おごってもらった私は帰路につく。寮に帰るなり、酔いに負けまいとした緊張の糸はプツリと切れた。急に酔いが回り、気持ちよくなってしまった。酔っ払いの私。そして、周囲を囲む寮の仲間。あの日が、酔っ払い体験の最初の1歩。