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【転載開始】

■大量“辞退”は兵庫県職員だけじゃない・・・
 教員に続き「地方公務員」まで不人気に
 なったワケ
 公開日:2025/05/27

■大都市の国立大教員養成学部では半数が
 教員以外の道へ

 

兵庫県では県職員試験に合格した者の
約4割が辞退(C)日刊ゲンダイ

 昭和の時代、学研高校生向け月刊誌
『高校コース』で、いつも読者の人気職業で
上位を占めていたのが、教師であった。
昭和から平成にかけて連続テレビドラマ
『3年B組 金八先生』や『飛び出せ!青春』
などが大人気になり、教師は中高生にとって
身近で魅力ある職業人だった。

 当時の教員養成系学部は地方国立大が主流
だったこともあって、地方進学校の生徒には
教師人気は高かった。
ただ平成に入ると少子化が進み始めて生徒も
少なくなり、特に地方では平成の大合併で
自治体が激減し、小中学校の統廃合が進んだ。
将来の教員採用予定数も現状維持できるか、
という状況になった。

 その結果、一時は国立大学教員養成学部に
教員免許取得を義務付けない、いわゆるゼロ
免課程が続々誕生。
地方国立大学にとっても、運営費交付金など
は減らされず、多様な学びを確保できると
いう魅力もあった。
ところが、その後、団塊の世代の教員定年
退職の大幅な増加や少人数教育の導入があり、
徐々に教員採用の復活の動きが強まり、
令和に入るとゼロ免課程は廃止されることに
なる。
他の学部に再編するケースもあった。

■3年次やアスリート枠も
 教員試験の受験者集めに四苦八苦

 令和の現在、大都市圏での教員人気は
ダウンしている。
特に公立小中学校の職場環境の厳しさが原因
だ。
英語教育やデジタル教育の導入のほかにも
専門知識もあまり関係ないクラブ活動の指導、
保護者のクレームなど、本来の授業指導以外
の仕事や対応が増えている。
その割には給与が上がらないし、残業代も
頭打ち、コスパの悪い仕事のサンプルと
なっているようだ。

 そのため大都市の国立大教員養成学部では、
教員以外の職業を選ぶ学生が増えている。
横浜国立大学では50%を上回り、千葉大学や
埼玉大学では45%前後となっている。
教員資格があれば学習塾など教育産業の仕事
もあり、各都道府県の教員採用試験にこだわ
らなくていい。

 全国の教育委員会では教員採用受験者を
増やすために、志願者増の様々な対策は苦労
している。
大学3年次からの前倒し採用試験は全国的に
展開されている。
たとえば北海道教育委員会の2026年度の
公立学校教員採用試験では、大学3年生の
受験を可能にしたほか、五輪出場経験などの
実績があれば、教員免許状がなくても受験
できる「アスリート特別選考」を設けている。
 
 このような3年次と4年次の連続受験可能の
教員試験も続々生まれ、地方では奨学金返済
免除が条件の地域枠を設ける教員養成学部も
増えている。

■地方公務員人気に陰りが・・・北海道庁職員
 合格者も4割辞退
 

就職先は民間志向に(C)日刊ゲンダイ

 兵庫県では、県職員試験に合格した者の
約4割が採用を辞退したというニュースが
地元の新聞やテレビで大きく報道された。
世間では「斎藤元彦知事によるパワハラが
原因だろう」という見方も多くあったが、
実際には、北海道の道庁職員試験合格者も
約4割が採用を辞退しており、別に兵庫県
特有の現象ではないようだ。
国家公務員試験や他の地方自治体の公務員
試験に合格した者が、そちらを選んだ
ケースも多いとみられる。

 そもそも、2013年には約58万人い
た地方公務員採用試験受験者が22年には
約44万人に減少しているのだ。
少子化で地方公務員試験を受験する年代が
先細りになっていることも確かだ。

 地元で安定した職業である地方公務員が
敬遠されるようになったのは、安定より
成長を重視する若者の未来志向の変化も
あるようだ。
最近の労働力不足で民間企業の初任給は
上がっており公務員の賃金が相対的に安く
なっているうえ、今後も地方自治体の
財政難で賃金面での改善は期待できない。
コスパ重視のZ世代は敬遠したくなるの
かもしれない。

 しかし、今までの公務員担当の業務でも
民間委託やアウトソーシングが増えており、
デジタル化やAI活用も進み始めている。
今までのルーチン化したイメージのあった
公務員の仕事も変わりつつある。

 子育てのサポートや様々の生徒への学習
支援の公的役割は増えており、
少子高齢社会における地域福祉の役割は
広がっている。
地域振興という点でも新住民の移住促進や
地元でのスタートアップ支援などが大きな
柱になっている。
注目すべきは、行政機関において企画など
を担う重要なセクションの責任者に
女性公務員が増えていていることだ。
たとえば大きな地方都市でも、札幌市の元
・企画調整局長、大阪市の前・政策企画
室長、仙台市の現・町づくり政策局長など
は、女性である。
地方公務員が女性の活躍の場として広く
認知度を上げれば、地方公務員の人気復活
にもつながるであろう。

(木村誠/教育ジャーナリスト)

【転載終了】

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 安定志向が後退してきているのでしょう
かね?