MONEY VOICE

【転載開始】

■日本、7人に1人が貧困に。
 米国型経営を真似て格差拡大、経済長期低迷へ
 2025年3月18日

■停滞が続く日本経済

 日本経済の長期停滞が続いています。
少子高齢化も一因ですが、総じて
パックス・アメリカーナの終焉など西側経済の衰退、
アジアの勃興について行けないアジアの日本も目に
余ります。

 米国に「右へ倣え」の姿勢が、貧富の差拡大、
学力の低下などをもたらし、企業、市場優先の政策
が円安を通じて日本経済の地盤沈下をもたらしまし
た。
そろそろ損切、リセットの時です。

■GDPは6兆ドルから4兆ドルに

 安倍元総理は以前、「あの悲惨な民主党時代」と
こき下ろしましたが、民主党政権時の2011年、
12年の日本のGDPは6兆2,000億ドルあまりで、
17兆ドル台の米国、7兆ドル台の中国経済に次ぐ
世界の3番手にありました。

 ところが、昨年10月のIMF(国際通貨基金)の
推計によると、2024年のGDPはトップの米国の
GDPが29.2兆ドル、2位の中国が18.3兆ドルに
拡大しているのに対し、4位に落ちた日本のGDPは
4兆700ドルとなっています。
米国の7分の1、中国の4分の1にも満たないレベル
に落ち込んでいます。
今年はインドにも抜かれる模様です。

 円ベースの名目GDPが伸び悩んでいるうえに、
安倍政権以降の大規模金融緩和によって円の価値
が民主党政権時の半分近くに下落したことが影響
しています。
そして円ベースの低成長は、成長戦略をとらずに、
企業が楽に利益を上げられる環境を優先し、
モノづくりよりも簡単に市場で儲ける金融利益
主義に走ったことも影響しています。

■米国の衰退と同じ道を歩んでいます。

 もはや米国は模範足りえない
米国でトランプ大統領が選ばれた背景には、
米国経済が衰退し、過去の栄光に対する
「ノスタルジー」が白人労働者を中心に広がった
ことがあります。
また有色人種の中にも生活に窮する人々が、
現状打破を期待して腕力の強いトランプに期待
した面があります。

 その裏には、かつて鉄鋼や自動車などの生産で
世界を席巻した米国が、金融利益に傾き、
モノづくりを放棄したこともあります。
もはや「パックス・アメリカーナ」は過去の遺物
となり、欧州経済も衰退の道を歩んでいます。
そして中国を中心にいまや
「パックス・アシアーナ」の時代と変わりました。

 ところが、日本では明治以来、西洋に学ぶ流れ
が抜けきれず、いまだに欧米に留学した学者、
エコノミストが政権に大きな影響を及ぼしていま
す。
小泉政権時の竹中大臣や安倍政権時の経済参謀
たちです。

■米国流「改革」があだに

 その象徴的な出来事が、1994年2月に千葉県
浦安市舞浜で開かれた経済同友会の会議にみら
れました。

 ここで新日本製鉄社長の今井敬氏が雇用重視の
「日本型経営」重視を主張。
これに対して、オリックス社長の宮内義彦氏が
「株主重視」の米国型経営に転換すべきと主張。
激しい論争となりました。

 これがいわゆる「今井・宮内論争」と言われ
るものです。

 結局、日本は宮内氏の考えを採用、日本型経営
を捨て、その後米国型の経営にかじを切りました。
大きな変化は雇用形態に表れ、それまでの
年功序列、終身雇用型が崩れ、中途採用、
非正規雇用の拡大へと進み、企業にとって
「固定費」とされた人件費を「変動費」化し、
コストの弾力的な削減を可能にし、短期収益拡大
に道を開きました。

 その一方で労働者には「わが社」という
帰属意識が後退、会社に対するロイヤルティ
(忠誠心)も低下し、社内教育が後退、
労働生産性の足かせにもなりました。

 当時、米国帰りのエコノミストは日本型経営を
「非効率」と決めつけ、米国型短期収益追求に
変えましたが、後に米国の研究者から日本型経営
を評価する論文も出るなど、むしろ米国から
日本型経営の良さを再評価する声が上がりました。

■7人に1人が貧困の制約

 日本が米国流の企業重視、金融利益重視の政策
に傾く中で、金融緩和が長期化し、これによる
株高、円安が所得分配に大きな偏りをもたらしま
した。

 労働者の4割近くが非正規雇用となり、国税庁の
データによると彼らの年収は200万円前後で、
そこから家賃と社会保険料を引かれると、食費の
確保が精いっぱいで、結婚や子育てどころではなく
なります。

 その一方で企業は最高益を更新し続け、
資産価格の上昇で資産家、富裕層がますます富む
ことになります。
その結果、米国と同様に日本でも所得格差が拡大。
日本財団の調査によると、日本の相対貧困率は
1985年の10.9%から2019年には13.5%と、
7人に1人が「貧困」状態となりました。

 2010年のOECDのfactbookによると、日本の
相対貧困率は15%で、これは加盟国のうち、
メキシコ、トルコ、米国に次いで4番目に高い数字
となっています。
デンマークの5%とは大違いです。
中間層が消滅し、富裕層と貧困層に二分される中
で、日本の個人消費は低迷し、最近ではこれに
物価高が重なって、格差と物価高が消費や経済を
圧迫するようになっています。

 大学改革にも失敗しました。2004年に大学の
自主性を高めるという名目で大学の法人化を進め
ました。
国の補助金は減り、大学教授は研究費の捻出の
ためにアルバイトを余儀なくされ、若手研究員が
減りました。
国の補助が減ったので大学は授業料を引き上げた
ので、貧しい学生には大学が遠くなりました。
富裕家庭でないと東大を目指せなくなりました。
 
 特に基礎物理の研究が敬遠され、日本の
物理化学の根幹が弱ってきました。
世界の大学ランキングに日本の大学が上位に入れ
なくなって久しくなりました。

■過ちを正すに遅すぎることはなし

 ノーベル賞経済学者のダロン・アフセモグル氏
の著書に「なぜ国家は衰退するのか」があります。

 これによると、国家の制度には、国家の権力と
富が社会に広く分配される「包摂的な制度」と、
一部のエリートに権力と富が集中する
「収奪的制度」の2つがあり、前者では国家が繁栄
し、後者では衰退する、と述べています。

 日本では長年この「包摂的な制度」のもとで繁栄
してきましたが、90年代になって米国帰りの学者、
エコノミストの働きかけで、次第に「収奪的な制度」
に変わり、日本経済は長期低迷に入りました。
かつて8割を占めた「中間層」が消え、
一握りの富裕層と多数の貧困層に二極化し、
消費の低迷、経済の縮小が続いています。
若者が結婚も子育てもできない社会に明日はありま
せん。

 企業は株主だけのものではありません。
資本、労働、顧客の三位一体型のバランスの取れた
経営がかつての日本を成功に導きました。
労働者からの収奪には限度があります。
雇用制度の見直しと、貧困でも学べる教育環境、
ポピュリズムに走らないよう、小選挙区制の
見直しなど、これまでの「改革失敗」をリセット
する時期に来ています。

間違いを正すに遅すぎることはありません。

【転載終了】

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 かつて、元米大統領補佐官のキッシンジャー
博士が、
「日本は何故、アメリカの悪いところばかり
真似をする」
と言いましたが、今、日本はアメリカと同じ
″完全な、二極化″になっています。

 また、安倍政権時にあるジャーナリストが、
「バカに権力を持たせてはいけない」
と言いました。
今度は、アメリカが、
「バカに権力を持たせてはいけない」
という事になってますね。