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【転載開始】
■株価下落、政権幹部不和・・・
いきなり吹き始めたトランプへの逆風
2025年03月12日
リセッション突入の可能性を否定しなかった
トランプ
Kevin Lamarque-REUTERS
<物価高の中の不況「スタグフレーション」と
いう悪夢を市場はおそれ始めている>
就任以来のトランプ政権は、政府組織の急速な
リストラに加えて、軍事外交政策の大転換を続け
ています。
1期目と違って、司法省や裁判所を味方につける
一方で、議会共和党に対しては「造反すれば刺客
を送る」という脅しが効いているようで、抵抗を
封じた上での攻勢というわけです。
ここまでは、とにかくトランプ流の「変革」が
怒濤のように進んでいるように見えます。
これに対して、野党の民主党には勢いが感じら
れず、トランプ政権には「向かうところ敵なし」
という感じでした。
とりあえず「最初の100日」の期間内は、
各メディアも批判を控えていたということもあり
ます。
ところが、就任から2カ月になる前の、
この3月中旬の状況としては、既に政権の勢いが
「逆風」に晒されているのを感じます。
まず株価の動揺が始まっています。
3月7日の金曜日までに既に市場は下降をはじめて
いましたが、この週末に大統領のインタビューが
放映されると、週明けからは下落が加速していま
す。
というのは、週末にトランプ大統領は、
FOXビジネスニュースのインタビューに出演、
キャスターのマリア・バートロモ氏の質問に答え
る中で、「リセッション(不況)」突入の可能性
を明確に否定しなかったのです。
トランプ改革の中身ということでは、過激な
関税政策にしても、移民排斥にしても物価を押し
上げる懸念については指摘されていました。
ですが、改革の副作用として「リセッションも
あり得る」という議論は、これまでは聞かれな
かった議論です。
そして、大統領が、その可能性を否定しなかった
わけですから、これは大変な発言です。
以降、週明けの株式市場も混乱が続いており、
現地10日(月)、11日(火)と下げが止まりま
せん。
■マスクとルビオが口論?
逆風ということでは、DOGE(政府効率化省)
を率いて、連邦政府に対する過激なリストラに
猛進しているイーロン・マスク氏も直面してい
ます。
例えば、政府のリストラ案をめぐって、
マルコ・ルビオ国務長官と舌戦になったと
もっぱらの噂です。
どうやら、自分の所轄の国務省、そして問題の
USAID(国際開発庁)などにマスク氏が介入
して来ることに対して「指揮命令系統の乱れ」
を問題視したようです。
ただ、ルビオ氏に関しては、元々が中道右派
の政治家であり、トランプ路線とは是々非々の
関係になるのは予想されていました。
ですから、タイミング的には少々早いとはいえ、
マスク氏との対立が浮き彫りになったのは、
それほど驚くような話ではないとも言えます。
マスク氏に関しては、それ以上に大きな問題
となっているのが、自分が創業したテスラ株の
下落です。
テスラ株は、アメリカを代表する巨大時価総額
を誇る優良株でした。
そして、マスク氏のトランプ政権入りが確定
した昨年12月にはほぼ480ドルという高値を
つけていました。
ところが、その後、余りにも過激な政策を
打ち出す中で、世界各国でのテスラ車の売り
上げは激減しました。
欧州やカナダでは半減、国によっては7割減と
いうところもあります。
特にマスク氏が欧州各国の政局に介入するかの
ような発言を繰り返したことは、事実上の
不買運動を招いています。
市場はこれを無視できなくなっており、
その結果の株価の下落となっているわけです。
そんな中で、テスラ社は、「モデルY」という
新型車を発表して反転攻勢を狙っているようで
す。
マスク氏は、この「モデルY」については
自信満々で、非常に良いクルマなので
トランプ大統領にプレゼントするとしていまし
た。
この「テスラY」については、トランプ氏は
苦笑しながら贈呈を受けるとしています。
ですが、そもそも完全なEV車ですから、
ガソリンをモクモク焚くのが好きなトランプ派
の有権者は全く興味がないわけです。
つまり、政権入りをしても、テスラ車にとって
は、EV補助金カットでライバルが倒れる以外
は、あまりメリットがないわけで、大統領の
「苦笑」はそうしたパラドックスを暴露した
ようなものです。
それにしても、マスク氏にしてみれば、
政権に参加したばっかりにテスラ社の時価総額
に換算して、7000億ドル(ほぼ100兆円)が
吹っ飛んだのですから大変です。
■スタグフレーションという悪夢
思わぬ逆風は、法曹界からも吹いています。
トランプ氏自身が、筋金入りの保守派として
最高裁に送り込んだと思っていた
エミィ・コニー・バレット判事が、意外にも
反旗を翻したのでした。
USAIDによる世界への援助を停止するのは
「違憲」という判断に乗ったのです。
これで中道派のロバーツ長官とリベラル判事3人
と共に5人の多数を制したことで、
明確な違憲判決が出されました。
そんなわけで、ルビオ国務長官や
バレット最高裁判事など「身内」からも逆風の
動きが出てきたのですが、やはり何といっても
大きいのは経済です。
このまま、トランプ氏が狭い意味での
「アメリカ・ファースト」主義で突進するだけ
ですと、経済は行き詰まる可能性が出てきまし
た。
少なくとも、物価高は抑制できず、株安が
ダラダラと続くかもしれません。
そんな中で、「スタグフレーション」つまり
物価高の中の不況という悪夢が現実になるかも
しれない、それを市場がおそれ始めているのは
明らかです。
【転載終了】
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トランプ大統領とイーロン・マスク氏に
は世界が不快感を抱いているのでしょうね。
兎に角、ロシアに勝たせてはいけないの
ですが、ロシアに有利な停戦になったら
アメリカの信用は失墜するでしょうね。