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【転載開始】
■大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された・・・
「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の
大きな弱点とは?
2024年05月09日
STREETVJ/SHUTTERSTOCK
<アベノミクスの副作用や低賃金も、ここ
まで事態が深刻化した背景には長年にわたり
日本社会に存在してきた共通の問題点がある>
大阪・関西万博の開催まで1年を切った。
現実問題として今からの中止は考えにくい
ものの、プロジェクト管理が杜撰(ずさん)
だったことは明らかだ。
開催までに建設が間に合わないケースが出て
くるのは確実であり、中途半端なイベントに
なる可能性が日増しに高まっている。
万博の準備不足が露呈した昨年以降、
国民の一部からは中止や延期を求める声が
上がっていた。
万博については、対外的な関係もあるので、
むやみに中止することが得策とは限らない。
だが、開催の是非についての国民的な議論は
一切行われないまま、時間だけが経過した。
日本社会には、一度、物事を決めると
それに固執し、状況が変わっても止められ
ないという特徴がある。
復活の見込みがない国内半導体企業に血税
を投じ、20年にわたって失敗を重ねた
国策半導体企業への支援策や、過去3度も
失敗しながら再びオールジャパンでの取り
組みを推進しようとしている国産旅客機の
開発計画など、止められない事例は無数に
ある。
■戦争に突き進んだ歴史は「止められない日本」
の象徴
これらは個別のプロジェクトなので、
最悪でも投じた資金が回収できないだけで
済む。
だが国家全体の趨勢(すうせい)がかかった
決断において失敗が明らかになった際、
撤退の決断ができないことは、時に致命的な
影響をもたらす。
経済規模が10倍もあるアメリカと全面戦争
を行い、国土の多くを焼失した太平洋戦争の
敗北は、まさに止められない日本を象徴する
歴史といってよいだろう。
こうした話をすると過去の話だと切り捨て
る人も多いが、そうではない。極めて大きな
リスクがあることを承知でスタートし、
効果が十分に発揮できないと分かってからも
撤退の決断ができなかったアベノミクスや、
グローバル化とデジタル化が進んだ世界経済
の変化を無視し、30年間もかたくなに
従来型ビジネスモデルに固執した日本の
産業界全体にも同じ傾向が見て取れる。
アベノミクスについては、大規模緩和策に
一定の効果があることは学術的に担保されて
いたものの、構造的に大きな問題を抱える
日本においてこの政策を実施した場合、
効果が十分に発揮されない可能性があること
は何度も指摘されていた。
加えて、大規模緩和策は副作用があまりにも
大きく、過剰な国債購入がインフレ圧力と
なって返ってくることも当初から分かって
いたはずである。
■撤退の決断ができない裏にある
「事なかれ主義」
緩和策の実施によって円安と株高が発生
するなど、一定のインフレ期待は生じた
ものの、実体経済の回復に寄与していない
ことは、実施3年目あたりから明確だったと
いえるだろう。
コロナ危機前に撤退を決断していれば、
今のような際限のない円安は回避できた
かもしれない。
日本の産業界も、1990年代以降、
国際競争の枠組みが大きく変化したにも
かかわらず、昭和型の手法に固執し、
多くの企業が莫大な損失を抱えた。
デジタル化の流れが誰の目にも明らかと
なった2000年代に経営改革を実施して
いれば、ここまでの低賃金にはなら
なかったはずだ。
決断ができないということは、組織として
責任の所在がはっきりせず、事なかれ主義が
横行していることにほかならない。
規模の大小や分野にかかわらず、似たような
現象が何度も観察されるということは、
日本社会に共通する弱点といえる。
国家の衰退が鮮明になっている今、もう見て
見ぬフリはできない。
【転載終了】
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昔、日本は「ブレーキの壊れた暴走列車」
といわれていたような?