2014年09月22日(月) 現代ビジネスより。
【転載開始】
■消費税増税は絶対にムリ
それにしても、安倍総理は今回の内閣改造で何をしたかったのだろう。
「50人以上いる党内の『入閣待機組』は納得していません。
この人事は、大きな禍根を残すことになる」
(前出・自民党閣僚経験者)
事前報道の過熱ぶりと裏腹に、前向きなサプライズは何も見当たらない、
失望と閉塞感漂う人事だった。
「今回は、地方と女だ」
安倍総理は改造直前、側近の前でそううそぶいていた。
が、そのうち「地方」を任されることになった石破茂地方創生大臣の迷走劇には、
思わず呆れた読者も多かったろう。
「安倍総理は『地方に人気があるから石破さんは地方創生大臣』
などと適当なことを言っていましたが、何をやるポストなのかさっぱり分からない。
『各省庁の地方政策を横断して取りまとめる』と言っても、
官僚が抵抗するし、そう上手くはいかない。『石破封じ込め』の口実を作っただけ」
(自民党中堅議員)
「安保担当大臣はイヤだ」「幹事長留任がないなら無役でいい」と総理に盾突きながら、
最後は「部屋なし・机なし・秘書なし」大臣をあてがわれ、唯々諾々と従った石破氏。
安倍総理は「『また座敷牢に押し込んでやった』と言わんばかりだった」
(総理側近)。
ケンカもろくにできないことが露見した石破氏には、もはや従う者などいないだろう。
また、安倍総理の言う「女」の閣僚は今回5人。
記念撮影で安倍総理の周りをぐるりと取り囲むさまは、
まるで「新生安倍ガールズ誕生」と言わんばかりだった。
その中で最も注目を集めたのが、経済産業大臣に就任した小渕優子氏だ。
だが、彼女も結局は「安倍総理に潰される」という見方が自民党内の大勢である。
「そもそも彼女が登用されたのは、親分にあたる額賀福志郎元防衛庁長官や
青木幹雄元官房長官といったハト派の重鎮を黙らせるため。
長老への目配りで閣僚人事を決めるなど、古い自民党の派閥政治そのものです。
しかも、経産大臣というと一見重要ポストに見えますが、
安倍総理は明らかに彼女を潜在的な敵対勢力とみて封じ込めようとしている。
改造前から、経済政策は総理の腹心の甘利明経済再生担当大臣、
TPP交渉は西川公也農水大臣が官邸の意を汲んでやっていましたから、
前経産大臣の茂木敏充氏には何の権限もありませんでした。
改造後もこの体制は変わりません」
(全国紙政治部デスク)
つまり小渕氏は「女性登用」のお飾りにすぎない。
役立つとすれば、「子育てと議員の両立」がウリの彼女に原発再稼働を呼びかけさせ、
反原発派が多い母親層を切り崩すことくらいだ。
今回の改造ではっきりしたのは、
安倍総理がもはや「政権の延命」しか頭にないということである。
新閣僚で国民の目先を変え、党内の不満分子も懐柔する。
今回の人事は、それだけが目的だった。
しかし、出来上がったのは以前と変わり映えしない、
何をしたいのか分からず実力も乏しい「ヘタレ大臣」ばかりの内閣だ。
こんな人事で政権の延命、そして真の「デフレからの脱却」ができると
総理が本気で考えているとすれば、あまりにも能天気に過ぎる。
現在の日本経済のおかれた状況を「インフレ」と表現するのは、
厳密には間違っている。
日本は今、不景気なのに物価がどんどん上がり、
ますます景気が悪化する最悪の循環、
つまり「スタグフレーション」の状態である疑いが濃い。
この状況でさらなる消費税増税を実行すれば、
日本経済には完全にブレーキがかかる。
操縦不能になったあげく、再びデフレに逆戻りすることは明らかだ。
「本当に国民に申し訳なかった。深くお詫びしたい」
かつて、こう言って消費税増税を国民に謝罪した総理がいたことを覚えているだろうか。
'96~'98年に総理を務めた、故・橋本龍太郎氏である。
「橋本政権の命脈を断ったのが、'97年に実施した3%から5%への消費税増税でした。
引き上げ直後こそ税収は上向きましたが、すぐさま消費はどん底まで冷え込み、
内閣は退陣に追い込まれた。この消費税増税は、
その後十数年にわたって日本を苦しめる『デフレ不況』の引き金を引いた、
歴史的失政と言われています」(前出・全国紙政治部デスク)
橋本氏は退陣後「オレは財務省に騙された」と悔やんだ。
一方の安倍総理はといえば、財務省に増税を呑まされ、
そればかりか国内外に公約までしてしまった。
安倍総理は、橋本氏の轍を踏もうとしている。
かといって、今更「増税はやめる」などと言い出したら、
それこそ財務省だけでなく海外の投資家やファンドも安倍政権を見限るだろう。
「日本売り」が始まり、政権の命綱である株価は暴落する。
橋本氏は、'01年の総裁選で消費税増税を前述のように詫び、再び打って出た。
しかし、「小泉旋風」に吹き飛ばされて惨敗。
'06年、失意を引きずったまま腸の病で亡くなった。
オレは橋龍のようにはならない。
何としても2020年まで超長期政権を維持し、憲法改正を成し遂げなければ、
死んでも死にきれない―安倍総理はそう思い詰めているようだが、
独りよがりというものだ。
【転載終了】
続く。