「寒っ」
さすがとしか返せないな
まあこの時期のこの時間に外にいる方がおかしいか
現在時刻は22:28
なぜここに来たか?問われたら
”なんとなく”
しか返せないと思う
急に1人になりたくなった
でもいいかな
とにかく窮屈な家から飛び出したかった
昼間は小学生とか小さい子が
ワイワイ遊んでいた公園も
今はただ静かに朝を待ってるだけ
私もここで遊んだ記憶がある
せっかく来たから
大好きだったブランコに乗ってみよう
「つめた」
うん、そうだよね
遊具は生きてるわけじゃないし
冷えるよね
「よし」
覚悟を決めて座る
あ、低いな
小さい頃は高いくらいだったのに
少しゆらゆらと揺れてから
勢いをつけて漕ぐ
前の柵の高さを超えたくらいで
急に目の前がクラクラした
たった数回こいだだけなのに
10年くらいでこんなに耐性がなくなるか
あの子と遊んではしゃいでた頃よりも
成長したのを改めて実感する
同じ名前のあの子
今はどうしてるのか
(ゆいぽん!ブランコやろ!)
(いいよ!)
(ブランコ1つしか空いてないや)
(ゆいちゃん先でいいよ)
(ほんと?)
(うん!)
(ありがと!ゆいぽんすきー!)ニコッ
(ゆいもゆいちゃんすきだよ!)
なんか思い出してきた
懐かしいな
ゆいちゃんのニコニコの顔が好きだった
ゆいぽんって呼んでくれる声が好きだった
違うな
きっと今もゆいちゃんのことが好きだ
過去形なんかじゃなくて
”好き”に種類があるなんて知らなくて
自分の気持ちに正直に
好きって言い合ってたあの頃
(ゆいねー大きくなったらおよめさんになりたい!)
(だれのおよめさんになるの?)
(ゆいぽん!)
(ゆいの?)
(うん!およめさんにしてくれる?)
(うん!じゃあけっこんしよ!)
(やったぁ!)
社会のことなんて何も知らないで
結婚しようって言い合ってたな
「ほんっと」
すごく毎日が楽しくて幸せだった
「ゆいぽんみっけ!」
「見つかったかー」
「なんで笑ってたの?」
「んー懐かしいなって」
「久しぶりに来たねここ」
「そうだね」
「私もブランコ乗りたい!」
「寒いから帰ろ」
「えー乗りたい!」
「じゃあったかい時にこよ?」
「んーわかった!絶対ね!」
「うん」
2人で並んで家に帰る
生まれた時から家は隣同士だ
「ゆいちゃんずっと好きだよ」
「なーにー?急に」
「いやちゃんと伝わってるかなって」
「伝わってるよちゃんと」
「結婚、できるといいね」
「するんだよ、ゆいぽんと」
この世の中はまだ
私たちみたいな愛しかたを
受け入れてはくれてない
だけど私はゆいちゃんとずっと一緒にいたいんだ