たかが相続放棄、されど相続放棄 ~たかが・されどシリーズその1~

 

 

こんにちは。司法書士の須永みわこです。

千葉県松戸市で司法書士事務所を開業しています。

裁判関係業務をメインとしている、司法書士では珍しい事務所です。

 

今回は、記念すべき「たかが・されどシリーズ」の第1回です爆笑

裁判業務の中には、所定の様式が決まっており、裁判所のHPからダウンロードして記入すればよい、というものが多くあります。

 

これをご自身でやる場合と専門家がやる場合は、全く様相が異なってきます。

場合によっては、ご自身でされる方が余計なことを考えずにスムーズに進む場合もあります。

けれど殆どの場合は、専門家に任せていただいたことで成功した、という事案が殆どです。

 

今回は、「相続放棄」についてお話します。

 

相続放棄をご存知でしょうか?

 

相続のご相談でよく「相続放棄をする予定」とか「相続放棄をしたい」などと伺うのですが、大抵の方は裁判所に申述する「相続放棄」のことだと思わずに言葉を使用されています。

 

我々が普通に考える「相続放棄」とは、裁判所への「相続放棄の申述」です。

一般の方が使っている「相続放棄」とは、「遺産分割協議」上で「自分は遺産は取得しない」協議をする、謂わば「相続分ゼロ」という意味です。

 

上記の2つはどのような違いがあるのでしょうか?

 

裁判所に「相続放棄の申述」を行うと、亡くなった方の権利だけではなく、債務や義務を一切承継しないこととなります。

 

ということは、預貯金などのプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も承継しないことになります。

そして、相続開始の時に遡って法定相続人ではなかった、とみなされます。

ですので、ある方が相続放棄を行うと、次順位の相続人が生じることになります。

 

もうひとつの「遺産分割協議」上での「遺産を取得しない」旨の協議では、一旦相続人の地位を承継した上で、協議をします。

これは、お亡くなりになった方の権利義務を全て(相続人全員で)承継することです。

そして、協議によりその財産を自分は取得しない=他の相続人が取得することに同意するという意味となります。

ですので、遺産分割協議で自分の取得分はゼロであるとしても、債務については原則、免れることはできません。※原則です。

 

今回のお話は、裁判所への「相続放棄」の申述についてです。

 

裁判上の「相続放棄」は、所定の様式がHPに記載されています。

これを見ると「いやあ、すごい簡単だわ~」と思われて、実際5分もあれば記入終わりそうなんですが、これがね、結構曲者なんです。

 

まずは、申述の期間の制限があります。

 

民法によると、相続人が相続開始の原因たる事実(被相続人が亡くなったこと)及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知ったときから3か月以内に行わなければならないのですが・・・。

 

もし、親と音信不通になっており、絶縁状態で、親が亡くなったのを知ったのが1年後だった、なんていうときはどうなんでしょう?

 

さらに裁判所のHPにはこうあります。

ただし,相続財産が全くないと信じ,かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは,相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば,相続放棄の申述が受理されることもあります。

 

なるほど、3カ月を経過しても大丈夫な場合もあるんですね。

うーん・・・・。「相当な理由」ってなんでしょう?

また、「受理されることもあります」って、「受理されないこともあります」ってことですよね?

どこをどうしたら受理されるんでしょう?

 

例えば、自分が夫の母(義理の母)の養子で、夫が先に亡くなり、それ以降義理の家とは全く交流がなく、義理の母が亡くなった後、義理の家に相続財産の開示を求めているのに、開示をしてくれないために、相続財産がプラスなんだかマイナスなんだか分からないから、相続放棄もできないという状態の場合、どうなんでしょうか?(状況説明が長くてすみません)

 

また、相続放棄は、放棄の前後を問わず、相続財産を処分してしまったり、隠匿したり費消したり、目録への悪意での不記載をしてしまったりすると、単純承認(相続を認めた)ことになってしまいます。

 

というと、葬式費用とか墓石代金などはどうなるのでしょう?

 

亡くなった方の通帳からお金を引き出して、葬式費用に充てることはよくあることです。

何も考えずやってしまったけど、それってもしかして「相続財産の処分」にあたるのでしょうか?

 

色々書いてみましたが、いざ相続放棄に取りかかると、専門職でも「これはどうなんだろう?」と立ち止まってしまうことがあります。

 

私たちとしては「何とか相続放棄ができる方向に」と考えて進めてゆくのですが、条文上の解釈と裁判所の見解により、結果が分かれることがあります。

 

「相続放棄」の申述は、簡単そうに思えますが、それ故にやはり侮れないものです。

相続は「相続道」ともいうべき道があると思っています。

 

たかが相続放棄、されど相続放棄・・・なんですね。

 

相続放棄をお考えの際は、いちど、専門家へご相談することをお勧めします。

 

次回も「たかが・されどシリーズ」をお送りします。お楽しみにおねがい