その判決、ちょっと待った!&弁護士はなぜ書面をギリギリに書くのかについての考察

 

 

こんにちは。司法書士の須永みわこです。

千葉県松戸市で司法書士事務所を開業しています。

裁判関係業務をメインとしている、司法書士では珍しい事務所です。

 

前回では、めでたく勝訴判決を得たところまで、お話しましたね。

えっ?!敗訴の場合もあるって?

そうそう。敗訴だったり、微妙な判決の場合もありますよね。

「これって、勝ってないし、負けてもいない・・・・?」

「なんだかとっても不満」

判決に不服があるとき、上訴することができます。

1審判決に対する上訴を「控訴」、控訴審判決に対する上訴を「上告」といいます。

 

司法書士も本人訴訟支援として、控訴などすることが可能です。

(滅多にありませんが、過去数回、控訴を受任したことがあります)

 

民事裁判では、1審が地方裁判所の場合は、控訴審は高等裁判所、上告審は最高裁判所に対してなされます。

家事事件の場合、1審は家庭裁判所ですが、この場合も、控訴審は高等裁判所、上告審は最高裁判所になります。

これに対し、1審が簡易裁判所の場合は、控訴審は地方裁判所、上告審は高等裁判所に対してされることになります。

1審が簡易裁判所の場合の上告審の高等裁判所の判決に対しては、憲法違反を理由とする場合に限り、さらに最高裁判所に特別上告をすることができます。

 

第1審の判決に対して、控訴をした場合、判決は確定しませんので、確定判決の効力は生じません。

ですから、第1審で勝訴して「やったあ」と喜びに浸っていたら、いつの間にか控訴が提起されていて、がっかりということもあります。

裁判が終わったときの解放感というのは格別なんですが、控訴されているときは「振り出しに戻った・・・」という気分にさせられます笑

ちなみに、私は裁判が終わったときは、大抵、裁判所近くの公園で、ひとりで缶ビールで祝杯を挙げます(地味)

 

控訴は、判決の正本の送達日翌日から2週間以内に、第1審裁判所に対してしなければなりません。

控訴状には控訴の理由を記載する必要はなく、ただ判決の取り消しを求めると書いておけば足りますが、控訴の提起後50日以内に控訴理由書を提出します。

 

控訴審は、実質的には、控訴理由書で裁判官が1審判決に疑問を持つかどうかにかかっています。

控訴理由書で控訴審の裁判官の心を動かせなければ第2回以降の口頭弁論はなく証拠調べもないと考えるべきです。

控訴審の事件の大部分は第1回口頭弁論で弁論終結します。ただし、第1回口頭弁論で弁論終結しながら、判決は逆転ということも時々あります。

 

そういうケースも含め、控訴理由書のできというか、説得力次第という面があるように思えます。

ですから、控訴理由書には並々ならぬ姿勢で臨んでいる弁護士の先生が多いと思います。

控訴理由書提出まで、50日もあると思われますが、なぜかあっという間に過ぎます。

 

私は、パラリーガルとして弁護士の先生方の間近で勤務しながら、「なぜ、先生はいつも期限ぎりぎりになってから書面を書き始めるのか?間に合わないことが分かっているのに・・・。」ということが極めて大きな疑問でした。

ほかのパラリーガルや弁護士秘書の友人に聞いても、ほぼ同じでした。

 

「弁護士は書面をギリギリになって書き始める」というのは、グローバルスタンダードなのか?は分かりませんが、夏休みの宿題のように、8月31日の夕方くらいになってから手を付け始めるのです。

 

しかも、それまではブラブラして、優雅なランチとか、夜のお付き合いとか、午前中もいないし(?)、一向に準備をしている気配がないのです。

 

けれど口では「控訴理由書、書かなきゃ。どうしようどうしよう」などと言っていたりします。

期限1週間前くらいに、ちょっと書いている様子だったりしますが、それっきりです。

結局火がついたように書き出すのが期限3日前くらいが多いです。

 

そして、一気に書き上げて、寝かして、修正して、また寝かして・・・。

それでも、気に入らない場合、提出せずにお蔵入りする書面もありました。

 

私は、いつも「もっと早く書き始めればいいのに」と願っていました。予定を立てて書いてくれれば、私も残業しなくていいし、先生の機嫌もいいからです。

 

書面の期限が近くなると、恐怖でした。

 

しかし、自分が司法書士になり、訴訟代理人または作成者として書面を作成するようになると、上記のような行動の理由や、先生の気持ちがよく分かるようになりました。

最初は、私も書面を作成する場合、早めに書き始めるようにしていました。

ところが、そうやって作成した書面は、なんだかイマイチなんです。

内容も表現もキリっとしないで、もやもやーんとした感じなんですよね。

それはそれで、提出するのに恥ずかしくはないレベルではあるのですが、違うんです。

 

あるとき、書面を書く時間が全くないくらい忙しいときがありました。そのときは、寝る前や移動中など、とにかく事件についてあーだこーだ考えては目の前の他の仕事に集中して忘れ、寝ては忘れ、ということを1カ月くらい繰り返しておりました。

そして、提出3日前くらいに書き出したところ、これが言葉がどんどん出てきて書けるんです!「神が降りた?」と思うくらいに表現もまとまり、すっきりと言いたいことが書け、説得力がある・・・・。

 

どうしてだろう、たまたま?と振り返ったとき、今回は、すぐにアウトプットしないで自分の中で溜めて溜めてという作業をしていたことに気づきました。

溜めては手放し、また溜めては手放し、ということを日常生活で繰り返しているうちに、思考が醗酵され、整理されていくように感じます。

 

しかし、この「溜める」というのが、非常に精神的にきつくて、「もういいのではないか」と手放したくなる。そこで手放せば楽になれるのだけれど、満足のゆく書面は書けない。ジレンマです。

 

もしかしたら、この感覚を先生も感じられていたのかもしれないなあと、やっと先生の気持ちが分かるようになりました。

上記のことをもっと分かりやすく、外山滋比古先生が「思考の整理学」(ちくま文庫)で書いていました。

私のジレンマも、あながちはずれではなかったようです。

 

蛇足で長くなりました。

次回は、強制執行について書いてゆきます。