強制執行の沼 ~それ、本当に差し押さえられますか?(債権編)~

 

 

こんにちは。司法書士の須永みわこです。

千葉県松戸市で司法書士事務所を開業しています。

裁判関係業務をメインとしている、司法書士では珍しい事務所です。

 

前回は、蛇足で色々お話してしまいました笑

 

判決を得て、判決の内容が実現され、紛争がそれで終わることもあれば、そうでないこともある、ということでした。

そうでないことというのは、金銭を支払えという判決の場合で、相手が任意に支払わない場合などです。

自分の権利を侵害された権利者が、法律の手続きによらず実力行使をもって権利を実現することを「自力救済」と言いますが、現在の日本はじめ近代国家では「自力救済」は原則として禁止されています。

 

じゃあ、どうするのか?

 

こういった場合、相手方の財産を差し押さえ、差押えの対象が不動産(土地・建物)や動産(家財道具等)ならば競売してお金に換えてそのお金を受け取り、債権ならばその差し押さえた債権の債務者から支払を受けることができます。

 不動産の明け渡しを命じる判決の場合は、決められた期限までに明け渡さないときは強制的に執行すると伝えた上で、裁判所の執行官が業者を同行して相手方を外に出して荷物を運び出すなどして実行します。

 

 文章として書くと、いかにもすぐお金を受け取ることができそうな感じがしますが、差し押さえてもお金に換えられない場合や、差し押さえる財産自体が見当たらない場合もあります。というか、そういうことが殆どです。

 

つまり、強制執行は権利として認められているが、実際にやれるかどうか、やるかどうかは別ということです。

差し押さえる側としては、裁判で判決までもらって認められた正当な権利の行使であるはずなのに、実際に差し押さえるためには、こちらの労力やお金、時間がかかるのです。

 

しかも、それは結構大変な作業です。

 

さて、差し押さえるのに、一番適しているものは何でしょうか?

 

それは、もちろんお金ですよね。

不動産や動産だと換金の必要がありますし、換金までに時間もかかります。

そうすると、まずファーストチョイスとして、現金や預金が挙がってきます。

 

また、お給料や、売掛金など、更には差し押さえられる人が他人に貸している貸金債権なども差し押さえることが可能です。

じゃあ、預金を差し押さえようとなったとき、銀行口座を知っているでしょうか?

預金の差押えの場合、差押えの命令書が、裁判所から銀行宛に送られるのですが、

支店名まで特定できないと差押えができません。

また、残高がどれくらいあるのか分かりますか?

差押えの命令書が銀行に届いたときに残高がなければ、空振りとなってしまいます。

事前に相手が差押えを察知して、口座からお金を抜いてしまうこともあります。

 

お給料の差押えは、効果は確実です。

但し、給料のうちすべてを差押可能なわけではなく、原則として4分の1相当までしか差し押さえることはできません。

また、勤務している会社に差押命令書が届くので、相手の精神的な打撃は相当ですから、これは注意が必要だと思います。

 

差押えに至るまで、差し押さえる側としては、通常は相当な葛藤があります。

裁判を経て、判決を得ても支払ってくれず、その後も書面を送ったりしても支払ってくれない・・・もしかして病気とか、何か事情があるのだろうか・・・いやいやあの人はそういう人だ。だから裁判にしたのに・・・などぐるぐる考えた挙句、もう已むにやまれず差押えをする、というのが通常です。

 

けれど、勤務先の会社に差押命令が届く、というのは、想像するに、受け取る側としては、やはりびっくり仰天、ショックだと思います。

 

私の依頼者の方で、調停支援を行い、養育費の和解が成立した案件があります。

相手が支払ってくれないというとき、通常、最初は裁判所へ「履行勧告」という手続きで、裁判所から相手に催促の電話をしてもらったり、書面を出してもらっています。

しかし、それでも全く払ってくれない場合、裁判所からも「差押えを考えた方がいいですよ」と言われるのですが、その後に「会社にバレて、会社を辞めちゃう人もいるし、うつ病になって働けなくなっちゃう人もいるから、差押えもよく考えてからしないとね」と言われたことがあります。

 

こちらとしては、相手に会社を辞められたり働けなくなったら、継続的に支払ってもらえなくなるわけですから、非常に困ります。

ですから、差押えというのは、よくよく注意して行わないと、取り返しのつかないことになりかねないんですね。

調停を行い和解が成立したのに。払ってくれないから強制執行したいのに。そこでも相手のことを考えてどうしようか悩む・・・。

和解をした、ということはお互いの合意があったということに外なりません。

自ら合意をしたにもかかわらず、払ってくれない相手が悪いのに、どうして権利者の方が大変な思いをしなきゃならないんでしょう・・・・。

法律って酷ですよね。

法律は、権利者には差押えをする強い権利を与えているいっぽう、義務者(債務者)には逃げる自由を与えているんですよね。

 

 

じゃあ、不動産とか動産は差押えできるよね、という話になりますが、どちらも差し押さえるには時間とお金、労力がかかります。

どんどん長くなってしまうので、不動産と動産については、次回書きたいと思います。

それでは、また次回お会いしましょう!