我が家のシャコバサボテンが次々と開花しています。

 

 

 

*

 

 

深夜、久し振りに "人類の進化に関する番組" の第1回再放送を、興味深く観た。

早速、第2回の予約をセット。

 

私は、核兵器は勿論、(平和利用と言われる) 原発が廃絶されない限り、人類は滅亡するという危機意識を消すことができない。

なぜこんな愚かな技術開発をやってしまったのか!! 残念無念な思いで番組を観たい。

 

 

NHK-E 「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」

初放送: 毎週金曜 22:00~22:30
再放送: 毎週日曜 24:45~25:15 [毎週月曜 0:45~1:15]


出演: 
進化生物学者・UCLA教授 ジャレド・ダイアモンド博士。声の出演: 糸博。


概要:
ダイアモンド博士は、世界的ベストセラー「第三のチンパンジー」、そしてピュリッツァー賞を受賞した「銃・病原菌・鉄」の進化生物学者。

 

 

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言語やアートの本質。
異性との出会いと夫婦の不思議。

なぜ人間の間で格差が拡がってしまったのか?
なぜ人間は、互いを傷つけ合い地球環境を脅かすのか? 
悪い結果につながるとわかっていることを、続けてしまうのか?

環境破壊や戦争と大量虐殺など、現代社会の矛盾、人間が抱えている問題。
進化生物学者の立場から、人間の進化によって現代社会を解き明かして行く。


米国・ロサンゼルスで、十代の若者を相手に12回に亘って行なわれた特別授業を、1月から12回シリーズで放送。

 

 





■ 第1回「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”プロローグ」

初放送: 2017/12/30(土) 22:30~23:00
再放送: 2018/01/07(日) 24:45~25:15


米国・ロサンゼルスで、十代の若者を相手に12回に亘って行なわれた特別授業を、1月から12回シリーズで放送。
今回のプロローグでは、そのエッセンスをお伝えする。


□ 概要

 

第1回は、ヒトは「どこまで動物なのか?」を考える。

チンパンジーと極めて近いDNA構造を持つホモ・サピエンス。

チンパンジーとヒトの遺伝子の違いは、わずか1.6%。

それだけの違いで、両者はまるで違う生活を送っている。

しかし進化の過程を探ると、意外な類似点も。

ヒトは、動物に限りなく近い存在。
ヒトと動物の違いと共通点。
動物から人間へ進化して行く過程。
ユニークな発想で生物の進化を見つめるジャレド・ダイアモンド博士が、疑問を解き明かす。



□ 詳細

 

 

 
チンパンジーと人は遺伝子(DNA)的には1.6%しか違わない
両者は500万年前に、三種類のチンパンジー、つまりチンパンジーとボノボ(ピグミーチンパンジー)と人間に枝分かれした。
チンパンジーがこれだけ人に近いなら、チンパンジーにも人権があるのでは? という裁判が、実際に行われて、取り敢えずチンパンジーの人権は否定された(しかし、世の中はチンパンジーへの動物実験を止めるような方向に進んでいる)。
チンパンジーと枝分かれした後も、人は何回も枝分かれが続いた。20種類。
代表的なのは、我々ホモ・サピエンス、ネアンデルタール、アウストラロピテクス。
ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより脳が大きかった。しかし彼らは今は滅んでしまっている。
ホモ・サピエンスは、7万年前に突然アートや宗教などに目覚めたらしく、この時期を「大躍進」と呼ぶ。
ネアンデルタール人が滅んでしまい、ホモ・サピエンスが大躍進を遂げたのは「言語」にある。
ホモ・サピエンスは高度な言語を使うことで発展できた。
但し、私たちの遺伝子を調べると、3%ほど ネアンデルタール人の遺伝子が混ざっている。ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が出会った時、交配が有った証拠。




■ 第2回「動物のコトバ、ヒトの言語」

初放送: 01/12(金) 22:00~22:30
再放送: 01/14(日) 24:45~25:15


□ 概要

 

第2回は、ヒトが作り出した最も古くて重要な「言語」について。

動物は鳴き声で仲間に危険を知らせる。
人間の言語も単純な単語から始まった。ヒトが作り出した最も古くて重要な「言語」について。
言語は自己表現。

ヒトは進化の過程で言語を手に入れ、高度の文明を築くことができた。

では、動物には言語は無かったのか?

ヒトは、どのようにして複雑な言語を獲得したのか?

ユニークな発想で生物の進化を見つめるジャレド・ダイアモンド博士が、この疑問を解き明かす。

 

 

□ 詳細

 

ヒトは、地球の至る所で豊かで多様な文明を築いて来た。
でもチンパンジーと同じ動物の仲間でもある。
ヒトは、なぜこのような進化を遂げたのか?

ヒトは進化の過程で言語を手に入れ高度な文明を築いた。
では動物にも言語のようなものがあるのか?
そしてヒトはどのようにして複雑な言語を獲得したか?

動物にも言語のようなものはあるのか?
もちろん動物も声を出し鳥はさえずる。
多くの動物が何らかのコミュニケーションをとっている。
でもヒトとは比べ物にならない。私たちには膨大なボキャブラリーがあり文法がある。文法があれば、同じ単語を組み合わせて違う意味を表現できる。

英語の文法では、同じ単語を使っても単語の順番を変えれば意味が変わって来る。これは大きな発明。膨大なボキャブラリーと文法を獲得した。

しかし、そんなヒトの言語も動物のコミュニケーションから、この500万年の間に進化して来た筈。
一体、どのように進化して来たのか?

先ず、アウストラロピテクスに会いに400万年前の世界に行く。
恐らく彼らは名詞だけでやり取りをしていた筈。木とかりんごとか。

次に、20万年前に行ってネアンデルタール人に会う。
彼らには名詞と動詞があっただろう。打つ、死ぬ、走るのように。

そしてホモ・サピエンスに近い4万年前のクロマニョン人の住みかに行ったら、シェークスピアのような完全に近代的な言語が聞けたかもしれない。

動物の鳴き声からヒトの言語にどのように発展して来たのか?

先ず、動物のコミュニケーションから見て行く。
声を発する動物はいくらでもいるが、実際に複雑なコミュニケーションをする動物はいるのか?
仲間同士でやり取りしている様子が古くから観察されているのが、東アフリカのベルベットモンキーだ。ベルベットモンキーは体長50cmほどの小型のサル。

 


天敵が現れると鳴き声を変えて仲間に知らせると言われている。
どうやらベルベットモンキーは単語を使い分けているらしい。
しかし、この鳴き声が本当に天敵を表しているとどうやって証明できるのか?
これを解決したのは、カリフォルニア大学のロバート・セイファースとドロシー・チェニー教授夫妻。
彼らはニシキヘビやヒョウやワシに対してベルベットモンキーが発したと思われる鳴き声を録音した。その声を再生した時に群れがどう行動するかを調査した。

例えば、頭上のワシを見た時の鳴き声を録音した。その鳴き声を再生した時、ベルベットモンキーはどう反応したか? 彼らはすぐに空を見上げて茂みに隠れた。ワシから逃げる時の行動。

一方、ニシキヘビを見た時の鳴き声も採集した。この音声を再生するとサルたちは立ち上がって草むらを見下ろした。これはヘビを避ける時の正しい行動。

そしてヒョウを見た時の鳴き声を再生すると…。木の上にジャンプした。ヒョウから逃げる的確な行動。

ベルベットモンキーは、天敵それぞれに対して発していると思われる声を再生した時に適切に反応した。この鳴き声は名詞のような働きをしている。


何と、ベルベットモンキーは天敵の襲来を知らせる時以外にも、この鳴き声を使う。他の群れを騙(だま)したり操ろうとする時。グループ同士が戦っていて形勢が不利なグループが退却を考え始めた時、負けそうなグループの一匹がヒョウを意味する鳴き声を発したのだ。すると全員が木の上に逃げ戦いは中断された。ヒョウを意味する単語を使ってライバルとの戦いを上手に回避した。

状況に応じて単語を使い分けることができるのだ。ヒトがヒトを騙すように、ベルベットモンキーもコトバで相手を欺(あざむ)いた。ベルベットモンキーは声を使って、とても込み入ったやり取りをしている。

これよりも更に高度なコミュニケーションをしていると言われるのが、プレーリードッグだ。
研究者はプレーリードッグの鳴き声が近づいて来る敵によって違うことを発見した。

プレーリードッグを長年研究しているのが北アリゾナ大学のコン・スロボチコフ教授。
プレーリードッグはタカ、コヨーテ、ヒトなど対象によって鳴き声を使い分け、ベルベットモンキーと同じで名詞を伝える能力があると言われている。
例えば、コヨーテを見た時の鳴き声とヒトを見た時の鳴き声は違っている。
更に、ヒトの服の色を変え色によって鳴き声を変えているか調べた。その結果、青い服と黄色い服では鳴き声が違っていることが分かった。

プレーリードッグが極めて複雑なコミュニケーション能力を持つことは分かった。しかし彼らのやり取りに文法は無い。
文法のあるコトバを使う動物は未だに見つかっていない。


質問は?

Q.もし2匹のプレーリードッグがすごく離れて住んでたら、鳴き方は違うのか? 方言のようなものがあるか?
A.彼らの言語が遺伝ではなく生まれてから後天的にコトバを学んだのだろう。その気になれば変えられる。従って方言はあると思う。


ここからはヒトの言語の起源を探る。
単純な言語を使う民族はいるのか? 私が初めてパプアニューギニアに行った1964年、人々は石の道具を使い文字は無かった。私は「シンプルな言語を発見するぞ!」と夢みていた。
その時会ったのがフォーレ族。しかしフォーレのコトバは英語よりも複雑だった!
フォーレ語には英語のbe動詞と同じような、場所を示す動詞がある。
そして主語がヒトかヒト以外かによって違う動詞を使うのだ。
この違いは英語には無く、フォーレ語の方がむしろ複雑だった。

言語の進化の過程を探る夢が頓挫したかと思ったその矢先に、探し求めていたシンプルな言語が見つかった。

それは伝統社会のコトバではなく、商人同士が交易の際に使っていたピジン語。
商人たちは自分の国のコトバを持っているのに、そのコトバでは商売ができない。売り買いの交渉をするためのコトバが必要だった。
ピジン語は異なる言語を持つ人々の間で発達して来た。

例えばルセノルスクと呼ばれるピジン語。
19世紀末、ロシア人の漁師とノルウェー人の商人との間で使われていた。300語ほどの単語を組み合わせて意思疎通を図っていた。
牛という単語とシャツという単語を組み合わせると、牛の皮。牛と塩という単語を組み合わせて塩漬け肉という具合。

ピジン語では語順は決まっていない。どんな語順でも意味は同じ。従ってピジン語では複雑な内容までは伝えられない。

ではヒトの言語はどうやって複雑で洗練されたものになったのか?

そのヒントがピジン語で育った子どもたちのコトバに見つかった。
彼らの間で自然発生したピジン語は、農園での作業には十分でしたが、日常生活ではもの足りない。
例えばフィリピン人の移民と日本からの移民が結婚した場合、お互いの国のコトバを話せないのでコミュニケーションをとるのが大変。彼らは家庭でも仕事場のピジン語を使っていた。
つまり、簡単なやり取りだけで済ませていた。結婚した2人はそうする以外ほかに手が無かった。
しかし彼らの子どもは大変。両親のピジン語を聞いて育つが、彼らは言いたい事がなかなか表現できない。子どもには日々の思いを伝えるコトバが必要なのだ。

ピジン語での意思疎通に満足できなかった子どもたちは、自分たちで複雑な言語を作り始めた。子どもたちが生み出した言語はクレオール語と呼ばれる。このクレオール語はピジン語を使っていた世界各地の家庭で自然発生的に生まれた。
パプアニューギニアのクレオール語トク・ピシンは、国の公用語の一つに採用されている。
トク・ピシンはニューギニア各地から集められイギリス人やドイツ人の監督者の下で働いた人々の、子どもたち世代によって作られたコトバ。
赤ちゃんのコトバのように聞こえるが、とてもすばらしい言語。英語やドイツ語に、現地ニューギニアの単語が混ざっている。
Melikeyou.Ilikeyouのように動詞がある。meyouhimのように「私はここにいる」とか代名詞もある。
クレオール語のいくつかは国の公用語にもなっている。カリブ海の島ハイチではハイチ・クレオールが公用語となっている。農園で働く人々とフランス人たちがコミュニケーションをとるうちに形成され子どもたちの世代が発展させたコトバ。
そしてトク・ピシンはパプアニューギニアのクレオール語。インドネシアの公用語もバハサというクレオール語。
子どもたちの世代によって世界各地で作られたクレオール語は、互いに文法が非常によく似ている。
このことは、クレオール語がヒトの脳に備わった遺伝的なプログラムから生まれた可能性を示唆している。代名詞や副詞も私たちの遺伝子のプログラムに由来する可能性がある。

私たちヒトの初期の言語は、ベルベットモンキーのヒョウワシニシキヘビのように名詞だけだった。
そして言語は少しずつ複雑に進化し、農園で話されていたピジン語のように、形容詞や副詞も含まれるようになった。
続いて、クレオール語のように、単語の順番が任意で代名詞などが加わった複雑な言語が登場した。
そして最後に、今私たちが使っている言語に行き着く。

 



ヒトが独自の能力で獲得した言語。でも今私たちはせっかく作り上げた多くの言語を失いつつある。
現在地球上で約7,000の言語が話されている。
言語は民族文化の要のような存在。言語を失うと文化そのものがバラバラになってしまう。

悲しいことに今、世界中で言語が消滅している。英語や中国語やアラビア語など、就職に有利なコトバが普及するから。
アメリカ先住民の言語のように、就職に関係ない言語は消えて行く。
現在ネイティブ・アメリカンの言語で放送しているラジオ局は、ナバホ族の「サウスウェスト・ブロードキャストプログラム」とユピク・イヌイットの「アラスカ・ブロードキャストプログラム」の2局だけ。ラジオや新聞で使われないと、子どもたちが英語だけでやり取りするようになってしまうのは時間の問題。

この調子で行くと、皆さんが80歳になる頃には、今在る7,000語のうち6,800くらいの言語が失われてしまい200語になってしまうだろうと言われている。

質問?

Q. 私はピアノとバイオリンを弾く。よく音楽は世界共通の言語と言うけれど、ヒトと鳥のように種の壁を越えて、音や音楽で交流する事は言語と言えるのか?
A. 興味深い質問。音楽は言語か?それは定義によると思う。言語は限りある単語を使い、文法や組み合わせ方で、無限の意味を持つ文を作り出す、音声による表現。音楽も有限の音符から無限の音楽を生み出す。しかし音楽は言語とは異なり直接のコミュニケーションの手段ではない。音楽家は音楽の方が表現として優れていると言い、言語学者は言語が優れていると言う。音楽も言語もヒトが生み出した最も複雑なもの。

ではここで今日のまとめをしよう。

言語は人間らしさを象徴するもので、動物のコミュニケーションとの間には大きな溝があると思われていた。
しかし過去20~30年の間に、ベルベットモンキーやプレーリードッグなど動物による初歩の言語が発見され、少しずつ溝が埋まって来た。
一方、シンプルなヒトの言語も発見した。交易の場や農園で生まれたピジン語。そしてピジン語を話す両親の子どもたちが生んだクレオール語。ヒトとしての思いを精いっぱい表現したいという執念が言語の能力を進化させたのだ。


 


■ 第3回「芸術(アート)のジョーシキを疑え」

初放送: 01/19(金) 22:00~22:30
再放送: 01/21(日) 24:45~25:15


□ 概要

 

第3回は「アート」について。

ヒトは自分たちが作り出した芸術を、進化の象徴だと考えている。

芸術は人間だけのものなのか?

しかし動物もヒトに負けない見事な作品を作り出すと言う。

実は、芸術的な巣を作る動物も居るのだ。

ヒトは何を求めてアートを生み出すようになったのか?

そもそも芸術とは異性を惹き付けるためにある?

ジャレド・ダイアモンド博士が、動物の例をヒントに疑問を解き明かして行く。

 

 

□ 詳細

 

 

今回のテーマは「アート」。
ヒトは自分たちが作り出した芸術やアートを進化の象徴だと考えている。
ヒトは何を求めてアートを生み出すようになったのか?
しかし動物もヒトに負けない見事な作品を作ることが分かって来た。
動物の例をヒントに解き明かして行く。

南太平洋パプアニューギニアの宗教儀式で使われるアート。
このアートは中央政府を持たない部族社会で多用されて来た。
仮面として使われたり地面に立てられたり儀式を行う建造物の一部として使われたり。ニューギニアの社会でこういったアートはさまざまな機能を果たしている。

芸術はヒトならではのもので、動物には無いように見える。
しかし私たちヒトも500万年前は動物と同じだった。
ヒトは果たしてどこからアートを手にしたのか? 動物にも似たような例があるのか?
動物によるアートとヒトによる初期のアートを見てアートの起源を探って行く。

 




「アートとは何か?」。
アートかどうかの境界線はとても曖昧。例えば美しい夕日はアートかアートでないのか? どうやってそれが決まるのか?

まず1つ目。通常アートには生きて行くために必要な機能はない。生活に必要なものや私たちの繁殖に貢献するようなものはアートとは呼ばない。
例えば「モナリザ」の絵。「モナリザ」があってもサバイバルには役に立たない。
しかし「役立つ機能があったらアートじゃない!」と決めてしまうとせっかく美しいのに芸術とは呼べないということになってしまう。

2つ目は、アートは感情を刺激する。つまりアートは美的欲求を満たすということ。
美しい夕日は感情を揺さぶるが私たちが作ったものではない。だから夕日はアートとは呼ばない。

3つ目は、アートは生まれてから習得するもの。遺伝子にプログラムされていないものがアート。
バッハの「ロ短調ミサ曲」は、遺伝ではなくバッハは学んで作曲した。

まとめると、①生きて行くのに必要な機能がない、②美的欲求を満たす、③遺伝ではなく学ぶもの。この3つが一般的なアートの定義。

ダイアモンド博士は長年アズマヤドリの生態の研究を続けて来た。
東オーストラリアの熱帯雨林のアオアズマヤドリのオスが作る四阿(あずまや)。森の小枝で出来た精巧な作品。
でもここに住む訳ではない。このあずまやはメスを引き付けるために作られるアートなのだ。
オスは木の枝を編み上げて塔を建て周りを青いもので飾り立てる。住宅地ではヒトの家などから青いものを集めて来る。なぜかメスはこの色使いのセンスを優秀なオスの証拠と見る。
なぜアズマヤドリのメスはオスが作るこの建造物でオスを品定めするのか? なぜ立派なあずまやがオスの価値を表しメスが求める優秀な遺伝子の存在を示すのか?
色を揃えてあずまやを編み上げる技を持っている。このあずまやはオスの能力テストみたいなものなんだ。動物によるアートは異性を引き付けるためのシグナル。

それではヒトの芸術の場合はどうなのか? 博士はヒトによる初期のアートを見ながらそのヒントを探って行く。
人間の最も初期のアートとしてはっきり認知されている、南フランスのラスコー洞窟。この壁画は1万4千年前に描かれた。
これは紛れもなくアートと呼べる。いろいろな動物面白い格好の動物崖から落ちる馬の様子などが洞窟の壁に巧みに描き込まれている。
現代のアーティストもこれはすばらしいと認めるでしょう。

約30万年前に作られたものでアフリカ北西部のモーリタニアで見つかっている、典型的な石器。
しかし同じ時期に使われた石器千個に1個ぐらいの割合でこのような形のものが見つかっている。これは美しい。このすてきな玄武岩の石斧は見事に左右対称。
もう1つ、こちらは左右対称で端の方が薄くなるように苦労して作り上げたもの。そして両側が鋭い刃になっている。これで象などを切ろうとすると象を切り刻んでいる最中に自分の手を切ってしまいそう。この石斧は道具とは言えない。大きすぎるし両側に刃があって使いづらい。では30万年前にこの美しい石斧は何を目指したのか? 何か異性にアピールしようとしたのか? ヒトによる最初のアート。博士はヒトも動物と同じようにアートを通じて異性へのシグナルを発信していたと考えている。

しかし、なぜ実用的な石斧が優秀だと言えないのか? 一つには機能的な石斧は比較的簡単に作れるということ。
実はヒトのアートは様々な目的を果たすことができる。作品を見る喜びのためにあると同時にある種のシグナルにもなる。
アートは鑑賞して心豊かになるためのもの。自分が裕福だというシグナルをさりげなく伝えられる。
芸術は美しいという感覚を提供すると同時に生きることに役立つ機能を果たす。

ヒトの進化の歴史の中で最初の芸術と呼べるのは恐らく100万年前の石斧だろう。
言語と同じようにヒトのアートも最初は分かりやすい目的のために始まり、次第にその機能を越え崇高な芸術となった。
私たちはヒトのアートの方がはるかに崇高でそこに目的や機能などは存在しないと思いがちだが、
ヒトの芸術が持つ動物的な側面を理解することも大切だと博士は考えている。
 

 

 

 



■ 第4回「性と出会いのメカニズム」

初放送: 01/26(金) 22:00~22:30
再放送: 01/28(日) 24:45~25:15


□ 概要


第4回は「性と出会いのメカニズム」について。

動物は生存に有利なように進化して来たと言われる。

ヒトや動物は、異性と出会い、惹き付ける技能をどのように進化させたのか?

よりよい異性に出会うため、敢えて生存に不利な進化を遂げる本能も !?

また、より多くの子孫を残そうとして選び取って来た、その仕組みはヒトと動物でどのように違うのか?

ダイアモンド博士が、私たち人間の命を繋いで来た神秘のカラクリを解き明かす。

 


□ 詳細

 

今回のテーマは「性と出会いのメカニズム」。
ヒトや動物は、異性と出会い惹き付ける技能をどのように進化させて来たのか?
そしてより多くの子孫を残そうと選び取って来た仕組みは、ヒトと動物でどのように違っているのか?
ダイアモンド博士が私たちの命を繋いで来た神秘のからくりを解き明かして行く。

アートや言語みたいなお勉強ではなくて、私たちがどのように異性のパートナーを選んでいるか見て行く。
私たちが両性具有でアメーバのようにセックスや交尾をすることなく、ただ分裂して増えて行く生物ならばその必要は無い。その場合は分裂した両方に自分の遺伝子が残る。
しかしもしも異性とのセックスで子孫を増やして行こうとする場合、子どもはあなたとパートナー双方の遺伝子を引き継ぐ。きちんと生き残って行くような遺伝子を残したい場合、パートナーはしっかり選ぶ必要がある。

ここからは私たちヒトと動物がどのようにパートナーを選んでいるか見て行こう。
全ては進化の2つの考え方に関係している。自然淘汰と性淘汰という考え方。
19世紀の生物学者チャールズ・ダーウィンが提唱した自然淘汰の理論。全ての生物は周囲の環境に適応するように変化して来たという理論。

一方でダーウィンは、自然淘汰では説明が難しい、特殊な例に対して性淘汰という概念を考えた。
この性淘汰とはどんな進化なのか? 性淘汰とは異性の体の形や行動に惹かれてパートナーとなり子孫を残すうちに、その形や行動が定着する進化。

まず動物のパートナー選びと性淘汰について見てみる。
性淘汰で好まれる特徴が自然淘汰でも有利であるかというと、分からない。例えばオスのクジャクは巨大な飾り羽を持っていてメスのクジャクは巨大な飾り羽を持ったオスを好む。
でも自然淘汰の観点から見た時、この美しい巨大な飾り羽はどんな意味があるのか? 巨大な羽の方が生き残るのに有利なのか? 恐らくそうではない。むしろ飾り羽が大きいクジャクの方が短命。羽が邪魔なはず。クジャクのオスの飾り羽は異性を惹き付ける性淘汰の上では有利でも、自然淘汰から見れば不利かもしれないということ。
天敵に捕まってしまう可能性が高いにも拘わらず、大きな飾り羽が生き残っている。

博士は3つの考え方で説明する。
1つ目は、自然淘汰で有利な特徴が性淘汰でも好まれるという説。自然界で生き残る能力が異性を惹き付ける。
2つ目は、性淘汰で好まれる特徴は自然淘汰と全く関係がないとする説。生き残る能力と関係ない特徴が異性を惹き付け、遺伝して残って行くこともある。
3つ目は、ハンディキャップ理論という説。自然淘汰にとっては不利な特徴が、逆に性淘汰で好まれ広まって行くという考え方。クジャクの羽はこの説に当てはまる。あんな羽を持っていたらすぐに虎に見つかってしまうから生き残るのに有利なことなど一つも無い。でもメスはこう考える。あんなに目立つ大きな羽があるのにちゃんと生きているということは、彼はタフで強い遺伝子を持っているに違いない。なぜならあんな目立つ羽があるのに虎にも捕まらずに生き延びているのだから。

アフリカに生息するコクホウジャク。生物学者はこのコクホウジャクで1982年に実験を行った。
繁殖期のオス36羽のうち12羽の尾を切り別の12羽に付け足した。すると長い尾のオスには通常の倍の数のメスが集まり多くの巣ができた。一方、尾を切られたオスにはメスが寄りつかず巣の数が激減した。この実験はオスの長い尾が実際にメスを惹き付けている事を示している。
性淘汰で勝ち残った体型は自然淘汰では不利になるかもしれない。それでも長い尾が遺伝するのは生存には不利でも、その魅力でメスと出会い繁殖する力が勝っているため。長い尾のオスは短いオスの2~3倍のメスを惹き付ける。

「性と出会いのメカニズム」。続いてヒトの場合を見てみよう。ここでも性淘汰の原理が当てはまると博士は考えている。動物も人間もパートナーを見つける時、自然淘汰と性淘汰の影響を受ける。
理想的には一番優れた遺伝子を持った相方を選べれば成功。しかしあなたのパートナーがどんな遺伝子を持っているかは分からないので、私たちは外見から推察するしかない。
私たちは異性にどんなイメージを求めているのか? 心理学者が結婚10年以上の夫婦を調べたデータがある。
外見についての研究結果は意外だった。細かく調べてみると、結婚した2人の体型や外見の特徴が様々な点で似ていることが分かった。本当に意外。
中指が長い人同士が結婚していたのだ!中指の長さなんて気にすることないよね。このリサーチによると200組の夫婦を調査した結果、中指が長い人同士、中指が短い人同士が結婚している。耳たぶの大きさや背の高さについても夫婦で似ていることが多い。

自分に似ている人が好きという場合、その相手が自分とは反対の性の親や兄弟姉妹に似ているからという場合が多い。成長するに従って面影が呼び起こされ、そのイメージを一生追い求めるのだ。
ではなぜ、私たちは自分と似ているヒトに惹かれるのか? 博士は動物実験に注目した。生まれたウズラの卵を別の巣に移動するという実験。この実験ではオスの行動に注目した。
ウズラは普通母鳥のもと兄弟姉妹同じ巣で育つ。しかし今回この巣に血のつながっていない雛鳥を持ち込んだ。オスのウズラはそれを兄弟だと信じて育つ。オスは周りの鳥を自分の兄弟姉妹だと思い込んでいる。成長してパートナーを探す年頃になったそのウズラを実の姉妹やいとこが暮らしている巣に戻した。血のつながった兄弟姉妹や親戚に初めて出会ったウズラはパートナーを選ぶ際にいとこを選ぶ事が分かった。
妹に対しては近親相姦を避ける本能が働いた。いとこを好んだ。母鳥の面影を求めるが、妹のように近すぎる存在は避けた。好きなタイプは自分に似ているけど近すぎないこと。
 

 

 

 


■ 第5回「夫婦の起源 性の不思議」

初放送: 02/2(金) 22:00~22:30
再放送: 02/4(日) 24:45~25:15


□ 概要

 

第5回のテーマは夫婦関係について。

ヒトや動物は、パートナーを見つけ、できるだけ多くの子孫を残そうと手を尽くす。

中でもヒトは、他の動物とは大きく異なる夫婦関係を築いて来た。

果たして、その関係はヒトの発展にどのように貢献したのか?

ダイアモンド博士が夫婦関係を巡る進化の謎を解き明かす。

 

 




■ 第6回「不思議いっぱい ヒトの寿命」

初放送: 02/9(金) 22:00~22:30
再放送: 02/11(日) 24:45~25:15


□ 概要

 
第6回は寿命について。
ヒトの人生、そして動物の一生の長さは、どうやって決まるのか?
なぜヒトは人生の半ばで子供を産まなくなるのか?
そこには、進化によって緻密に設計された生と死のメカニズムがあると言われる。
ダイアモンド博士が、命の謎に迫る。 
 

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