NHK-E 「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」

初放送: 毎週金曜 22:00~22:30
再放送: 毎週日曜 24:45~25:15 [毎週月曜 0:45~1:15]


出演: 

進化生物学者・UCLA教授 ジャレド・ダイアモンド博士。声の出演: 糸博。

ダイアモンド博士は、世界的ベストセラー「第三のチンパンジー」、そしてピュリッツァー賞を受賞した「銃・病原菌・鉄」の進化生物学者。





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■ 第5回「夫婦の起源 性の不思議」

初放送: 02/2(金) 22:00~22:30
再放送: 02/4(日) 24:45~25:15


□ 概要


第5回のテーマは「夫婦関係」について。


ヒトや動物は、パートナーを見つけ、できるだけ多くの子孫を残そうと手を尽くす。
中でもヒトは、他の動物とは大きく異なる夫婦関係を築いて来た。


果たして、その関係はヒトの文明発展にどのように貢献したのか?
ダイアモンド博士が夫婦関係を巡る進化の謎を解き明かす。

 





□ 詳細


今回のテーマは「夫婦関係」。


これまでヒトが他の動物と違う存在に進化したのは、比較的最近だということを話して来た。
そして言語やアート交際相手やパートナー選びなどについて動物の例を見て来た。


今日は男女の関係、特に夫婦関係について見てみよう。

夫と妻、父親と母親の関係というのは動物の中でも種によって大きく違っている。


類人猿の中でさえ夫婦関係はかなり異なる。
例えば、ゴリラはオス一頭につき数頭のメスがいる、いわゆるハーレムを形成する。
一方、チンパンジーは特定のペアにならず、グループ内のオスとメスはほぼ全員と自由に交配する。
ほとんどの哺乳類のオスは一度メスを妊娠させると、そこを離れ子育ては全てメスに任せる。

その点、私たちヒトはやや違っている。
ヒトの夫婦関係は一夫一婦制が基本。生物学では一夫一妻と言う。
一人の男性が一人の女性とずっと連れ添う。米国ではこれに反すると法に触れ逮捕される。
でも一夫一妻は動物の世界では大変珍しい形。
なぜヒトは他の動物とは異なり、この一夫一妻に落ち着いたのか? 博士は様々な夫婦の形を比べながら検証する。


一夫一妻なんて嘘!? シングルマザーも大勢いる。また何人もの相手を取っ替え引っ替えという人もいる。


ハーレムという言葉をよく耳にするが、実はそれほど一般的ではない。
一方、世界には一妻多夫の社会も存在する。これはハーレムの逆の形。チベットの社会では一人の女性が複数の夫を持つ。そして夫2人は兄弟同士であることが多い。


しかし、最も一般的なのはやはり一夫一妻。一夫一妻で男一人に女一人が保証されている場合、女性争奪の競争がないのでオスが大きくなる必要がない。


しかし、一夫多妻の動物の場合、オスはメスを巡って熾烈(しれつ)な競争を繰り広げる。戦いに勝つのは体が大きくて強いオス。その遺伝子は、オスの子どもに受け継がれるので、オスの方が体が大きくなる訳。

 


ヒトは動物の中でも珍しい一夫一妻。
なぜ一夫多妻や一妻多夫にならなかったか? 
ヒトの子どもは育てるのに時間が掛かるからだと、生物学者が言う。ヒトの赤ちゃんは長い間サポートが必要。

ヒトでは普通のことだが、チンパンジーでは珍しいこと。チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの子どもは、4歳で母乳を止める頃には自分で餌を探すようになる。父親の助けも必要としない。父親は家族や子どもを守っても食べ物は持って来ない。

ヒトの子どもは、母親と父親の両方から食べ物を与えてもらい、生きる術(すべ)を学ぶ。
従って、ヒトの父親は、家で育児を手伝うことになる。

だがしかし、それが自分の子どもで無かったら納得できない。自分の遺伝子を受け継がない子どもを、20年掛けて育てるのはどう考えても割に合わない。

一方、チンパンジーのメスは群れの多くのオスと交配するので、オスはどの赤ん坊が自分の子どもなのかさっぱり分からない。その結果、オスは子育てに協力しない。

ヒトは夫婦で仲よく子育て---と言うと笑う人もいる。なぜならヒトはよく浮気をするから。なぜ、ヒトは浮気をするように進化したのか? 一夫一妻夫婦で一緒に子育てをするようになったヒト。そこで生じるのが浮気の問題。
男性は浮気をすると生物学的にどんなメリットがあるのか? 浮気の利点は、より多くの子どもに自分の遺伝子を残せるかもしれないということ。他の男性を騙(だま)して自分の子どもを育てさせるため?浮気性の男性は、浮気すれば多くの遺伝子を残せると単純に思う。ヒトのセックスは平均4分。妻以外の女性とたった4分浮気するだけで、子どもの数を例えば4~5人に増やせる。4分で25%増量というのはとても魅力的だ。


しかし進化で考えた時、男性の浮気にはどんなリスクがある?もし捕まったらパートナーと別れなきゃいけないかも。妻は家を出て行くかもしれないし浮気相手のパートナーが怒って殴ったり殺しに来るかもしれない。そして外で浮気している間に、逆に他の男が自分の妻と子どもを作ってしまうかもしれない。また仮に奥さんが怒って出て行くと、奥さんが産む子どもが自分の子かどうかもう確証がない。
という訳で男性は浮気をする前によ〜く考えた方がいい。

では今度は女性の場合。
女性が浮気で得るものは? 強い遺伝子を幅広く得ること。子どもの遺伝子の多様性のため。浮気して夫以外の男の子どもを産む行為は、モラルに反すると思うかもしれない。ヒトのDNA調査によると、夫婦の子どもとされる赤ん坊のうち、少なくとも5%が夫以外の男性の子どもだという調査結果がある。

鳥の場合、巣にいる雛鳥(ひなどり)のうち3割は毎日餌を持って来てくれる父親の子どもではない。メスを受精させたと思ったオスは、他のメスと子どもを作ろうと出かけて行く。しかしその隙に、近所の別のオスが巣にやって来る。博士が紹介しているのは、9割が一夫一妻といわれる鳥類の番(つがい)の研究。ミドリツバメやキイロアメリカムシクイは、雛鳥の4割近くが番とは別のオス鳥の子どもだったことがDNA調査で分かった。

いわゆる避妊は、ヒトの浮気に何か影響を与えたのか? 
1937年生まれの私から見たら影響は大きいと思う。私が高校や大学の頃、避妊は難しかった。
今では様々な避妊法が確立。心配が減ったので婚前交渉が増えたのは間違いない。女性も妊娠のリスクを心配することが無くなった。避妊の進歩は実際ヒトの行動に影響を与えたと思う。
浮気するけど避妊するということは子どもが欲しい訳ではない。では遺伝子を残すためという浮気の元々の目的はどこに行ってしまったのか? 潜在意識にはある。実際、浮気する男性は「子どもの数を増やしたいので浮気するんだ」とは言わず「楽しいし彼女が美しいから」と説明する。自分の行動を説明する時に口から出るのは心理的な理屈であって、進化によって培われた行動原理とは別のもの。私たちは進化による無意識の振る舞いに、それなりの理屈をつけて自分を納得させている。

多くの動物とは異なり、一夫一妻となったヒト。もう一つ、動物と違うのは女性の排卵が分からないところ。なぜそのように進化したのか? 博士が見て行く。

ここからはヒトのセックスの最も奇妙な特徴---排卵が簡単には分からないことについて見て行こう。
隠された排卵。排卵とは月経の周期の中で卵子が放出される時期のこと。それが分からないというのは卵子がいつ出て来て、妊娠可能か外から見ても分からないということ。これは女性が男性と同じように1か月のうち、いつでもセックスに対応できることを意味する。そしてこれはヒトが他人に隠れてセックスすることとも関係している。
ほかの動物は月のうちいつでも交尾する訳ではないし、寝室に入って秘め事のように交尾をする動物もいない。

通常、哺乳類はメスが排卵して受精可能な時にだけ交尾をする。チンパンジーのメスは排卵を迎えると性器がピンク色に腫(は)れる。排卵はオスにもはっきり分かる。動物にとって排卵がいつなのかは子孫を残す上で不可欠な情報。

ほとんどの哺乳類で排卵はよく見えるようになっているが、ヒトは違う。女性本人も自分がいつ排卵して受精可能なのか近年まで分かっていなかった。20世紀に医学が進歩して体温を毎日測って記録してやっと分かるようになった。


女性が受精できるのは月のうちの数日間だけ。でもヒトの性交はその時期に限定されない。なぜヒトは他の動物と異なり、妊娠のためだけではなく楽しむために性交をするのか?
これは、ここ500万年の間に進化してきた特徴。なぜそのように進化し、いつでも性行為をするようになったのか? なぜヒトの排卵はよく分からないようになったのか?体を変色させて周囲の人を誘う女性がオフィスにいたら、仕事どころではなくなってしまう。

生物学者は排卵が隠された理由について4つの説を唱えている。

1つ目は、性行為と引き換えに子育てを男性に手伝ってもらうためという説。ヒトの子育ては時間が掛かるから。

2つ目は、排卵が隠されているために男性と女性が常に一緒にいることことになったという説。子どもを作りたい男性は女性がいつ受精するか分からないので定期的にセックスをする必要がある。結果的に男性が女性の近くにいることになる。

3つ目は、生まれた子どもが誰の子どもか分からないようにして子どもを守るためという説。哺乳類のオスは自分の子どもを残すためにメスを発情させようと自分の子どもじゃないとはっきりしている子どもを殺してしまうことがある。しかし排卵がはっきり分からないヒトの女性が部族の多くの男性と交わりを持った時、子どもが生まれても父親は誰か分からなくなる。そうすれば子どもを殺さないどころか食べ物を持って来てくれる。

4つ目は、女性自身が妊娠を恐れて性交を回避することがないよう進化を遂げたとする説。他の哺乳類と比べてヒトの赤ん坊は母体に対して極めて大きいので、出産は女性にとってとても苦痛だし危険。もしも排卵日が明確に分かっていたら出産の苦痛を知っている女性は妊娠しないようにその日だけはセックスをするのを止めてしまう。そんな事態を避けるために排卵日を本人にも分からないようにしたという説。

ヒトの排卵が隠されるように進化した理由はこのように推測されている。ヒトの社会における男女の関係は他の動物とは大きく異なって、複数の男女のカップルが極めて近い距離で集まって社会を形成して暮らしている。子育てのために先ず男女のカップルが一緒に暮らす。しかし同時に他のカップルとも協力し無駄な争いなどを起こさずに暮らして行く必要がある。
排卵が分からないこと、そして隠れてセックスをするということは、カップルの絆を深め社会の中の他のカップルと揉(も)め事を起こさないで暮らして行くことに貢献している。ヒトは排卵が分からないように進化。一夫一妻の家族同士が社会の中で協力して暮らし発展することが可能になった。

でも私たちヒトは必ずしも進化の理屈に付き従う必要なく、倫理的に行動することができる。遺伝子の奴隷ではない。進化の論理だけに従って浮気や殺人をしたら、まさに "ヒトで無し" と言われる。それこそが人間と動物が大きく違うところ。倫理に基づいた選択をすることができる。道徳的な判断は進化の利益を超えることができる。

浮気の罪の意識は進化の中で遺伝子に組み込まれたのか後天的なものなのかどちら? なぜ浮気で罪悪感を感じるのか? モーゼの「十戒」のような社会規範が生まれたことと関係がある。「なんじ姦淫する勿(なか)れ」。浮気で子孫を増やせるとしても倫理に反するから止めるのだ!という人類の決意。

ヒトは哺乳類としては珍しい一夫一妻というシステムに進化した。そして排卵が隠されヒトは隠れて性交をするようになった。ヒトは生まれた子どもを夫婦で一緒に育て、社会の中で育むようになった。





■ 第6回「不思議いっぱい ヒトの寿命」

初放送: 02/9(金) 22:00~22:30
再放送: 02/11(日) 24:45~25:15


□ 概要

 
第6回は寿命について。
ヒトの人生、そして動物の一生の長さは、どうやって決まるのか?
なぜヒトは人生の半ばで子供を産まなくなるのか?
そこには、進化によって緻密に設計された生と死のメカニズムがあると言われる。
ダイアモンド博士が、命の謎に迫る。 

 

□ 詳細