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「相棒season13」
第12話 「学び舎(や)」
1/21(水)21:00~21:54
【スタッフ】
脚本:藤井清美
1971年8月23日徳島県出身、県立城南高校、国立筑波大学第一学群人文学類、1993年に劇団青年座文芸部。劇作家・演出家。
テレビ・映画
The Last 10 months~10か月~(2000)日本テレビシナリオ登竜門優秀賞受賞、平成夫婦茶碗~成田家の人々(2003)、すっから母さん(2003)、うちはステップファミリー(2005)、砂時計(2007)、L change the WorLd~スピンオフ「最もLにバカにされた男 松田刑事の事件ファイル」(2008)、ラブレター(2008)、
さよなら、アルマ(2010)、引出しの中のラブレター(2010)、豆富小僧(2011)、るろうに剣心(2012、14)共同脚本、黒の女教師#8(2012)、TAKE FIVE~俺たちは愛を盗めるか~(2013)、タイムスパイラル(2014)、相棒13#6ママ友(2014)原案。
舞台(2010以降)
かあちゃん(2010)、りんご~木村秋則物語(2010)、柳家花緑・藤原道山 落語&音楽会(2011)、ミュージカル エディット・ピアフ(2011)、夢か、現か(2011)、旅館華村 若女将(2011)、ラ・パティスリー(2012)、3150万秒と、少し(2013)。
監督:橋本一、助監督: 安養寺工 一話完結なのに橋本監督が続く。シーンも11話ラストシーンから12話ファーストシーンへと繋げている楽しさ。
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【撮影協力】
国立宇都宮大学、宇都宮メディアアーツ専門学校、宇都宮アート&スポーツ専門学校、栃木FC、
美術商・清水本店(台東区浅草2-30-11) 、千葉県立中央図書館、野田市、野田市運動公園、千葉県FC、
他。
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【キャスト/ レギュラー】
相棒season13 キャスト/レギュラー をご覧下さい。
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【キャスト/ ゲスト】
[私立協和堂大学]・・・世田谷区桜川
早織: 久我沢舞・・・文学部日本文学科3年 女子学生
長谷川公彦: 池本正・・・理学部生物学科 教授
松坂早苗: 水田理恵子・・・理学部生物学科 池本研究室助教
中林大樹: 吉野慶介・・・社会学部ソーシャルコミュニケーション学専攻 非常勤講師
伴大介: 笹沼隆文・・・理事長
山﨑将平: 中村・・・男子生徒
白石有馬
仁科咲姫
江見ひかる
内田滋: 中塚満男・・・脱学生トレーダー⇒ホームレスのミツオ
河野景子: 柱山・・・公園近くの主婦
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【あらすじ】
世田谷区の飛鳥橋公園でホームレスと見られる身元不明の男性の、頭部を鈍器で殴られ殺害された死体が発見された。被害者を特定できる遺留品も無く、服装は泥だらけ。
前夜、付近で若者たちが騒いでいたという情報があり、捜査一課は地元の不良グループによるホームレス襲撃事件との目測を立てて捜査を開始する。
撲殺された晩、公園には若者たちが屯(たむろ)して大騒ぎしており、ゴミは散乱し足跡だらけ。犯人を突き止める証拠採取に難しい状況だった。
だが、杉下右京(水谷豊)は、遺体の状況から身元を見抜く。
最近では珍しくなった指のペンダコから、例えば著名作家・大学教授辺りなのでは?と。
その通り、被害者の男性は、池本正(長谷川公彦)という私立協和堂大学生物学教授で、研究のための虫を採取していたらしい。
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早速、池本教授の研究室を訪れた右京と甲斐享(成宮寛貴)は、そこで彼の研究とは無関係な本の山を目にする。
助教によると、松の行列毛虫が日本で繁殖する可能性の研究に没頭する余り、公園で寝泊まりすることもあった。その所為(せい)で泥だらけの服装で発見されたのか?
昔ながらの学者肌だった池本は、学問第一主義。
来るべき超少子化時代"2018年問題"に備えて大学経営側が、2年前から資産運用を始めた時も、「大学が金儲(もう)けなどし始めたら、お終いだ!」と猛反発したと、理事長は言う。
池本が生前、「大いなる山脈」「民俗学の起こり」「日本建築考」「ポストモダン」「近代日本とその精神」「秋華傳」・・、そして「羅生門」(初版本)まで!?、
読みもしない本を脈絡もなく学内の図書館から借りていたという謎めいた行動を取っていたこと、「これは道標(みちしるべ)だ」とか「図書館で大発見をした!」とか、謎の言葉を助教に語ったこと、について右京は、その真意と関連性を享とともに調べ始める。
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(ロケ地・宇都宮大学の春のキャンパス。実際のロケは晩秋。)
捜査の途中で二人は、大学構内の一角で、女子大生の久我沢舞(早織)が、大声を上げながら大勢の学生の前で服を脱ぎ始めるという不可解な行動を目の当たりにする。
舞のハレンチ行為はすぐ収まったものの、不審に思った右京らが彼女に尋ねると、目立ちたかっただけと答える。ちょっと気になったのは視力が相当悪そうだか、メガネやコンタクトは?
一方、今回の騒ぎを収めた、ソーシャルコミュニケーション学を教え学科創設を希望している非常勤講師・吉野慶介(中林大樹)によれば、その日は朝にも別の男子学生が突然、「俺は二股を掛けていた最低野郎です!!」 と叫び出すという悪ふざけがあったようだ。
吉野は、こうした只、目立ちたいだけの軽はずみな行動??が、ネットに流出しアッという間に人生を左右する大事になることを危惧していた。
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だが、右京には、将来は夏目漱石研究者になるのが夢と言う久我沢舞の行為が、自発的なものには見えなかった。
そして、パフォーマンスをせざるを得なかった驚くべき理由が明らかになる。
脱いだ舞と叫んだ男子学生を含む複数の学生たちが、悪ふざけのノリでネットにアップしていたところ、何者かから拡散させるのが厭だったら、指定のパフォーマンスをやれという脅迫メールを受け取ったためだった。
そして池本が殺された夜も、当の公園に集められ騒ぎを強要されていたことが判明する!!
吉野講師の講義を見学すると、事件直後で大人気。
講義内容
1. アカウント削除は行わない(キャッシュ保存の可能性)
2. 特化問題になるようであれば保護者・学校関係者に連絡する
3. 一人で悩まない
4. 問題発言や行動に注意する
吉野の言葉尻を捉えて右京が問い詰めると、アッサリ「学生を脅して授業で採り上げ易いような事例を作った」と認めるが、事件に繋がった「公園でのパフォーマンス」は否認した。
「この講義の重要性を分かって欲しかった」と言い訳したが、「学科創設を認めさせるためにやった」のが動機だった。「このままではずーと非常勤講師。生活ができない、結婚する予定」と哀訴する始末。婚約者とレストランのアリバイ成立。
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捜査撹乱(かくらん)のやり過ぎを感じる。吉野講師のエゴが誘因となって、犯人がゴミを散乱させて隠したかった証拠が存在するのではないか?
事件後に姿を眩(くら)ましたホームレスのミツオ。大学図書を何冊も所持・・・「物語の論理学」「女性表象の近代」「『私』を語る小説の誕生」・・。教授が貸してくれたもの。襲われるのが恐くて現場からは逃げ去った。
右京もヒマカ課長もミツオの素性に気付く。大学生で株取引成功⇒大学を辞めトレーダー⇒破産してホームレス⇒教授からの学問のススメに目覚める。
大学ファンド運用報告書の分析⇒3千万損失補填(ほてん)の突き止め。
「知性の流失」を嘆きながら、「神の終焉」「放浪物語」「最果ての幻」など作家の推敲原稿を見せ、一度で正解は出せない何度でもやり直せばいいとミツオを諭(さと)す。
「素晴らしい大発見」と教授が叫ぶ。
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<ネタバレご注意>
「知性の流失」「本は道標」のキーワードに基づき、教授が借りて図書館の書棚に戻っていた古書の所在を辿って行くと、「夏目漱石に宛てた生徒たちの書簡」が所収されていた箱に行き着く。
理事長は株の損失3千万円を、誰も閲覧していないような蔵書で埋めていた。
「藁(ワラ)の山から針を探す」とはこのことと、遂に、米沢ら鑑識課は、公園のゴミの山から被害者の血痕が付いたメガネの破片と指紋を発見。
吉野講師のPCに、下着姿の学生悪ふざけ画像満載。そこには再びパフォーマンスさせられたという学生の面々が。
本来の研究不在で、大学学内に眠るお宝の数々。
日本文学科の教授も研究怠慢で気付かないでいるため、夏目漱石研究の重要お宝が、研究者以外の経営トップによって流失してしまった。
教授の「夢は断たれている。教授会で糾弾(きゅうだん)・・・」という言葉を誤解し、
「教授会で糾弾されれば、日本文学科廃止に繋がる」との危機感と逆恨み。
漱石は、「I LOVE YOU」を「我、君を愛す」と訳す「愛」なんて(当時の)日本人は言わない⇒「月が綺麗ですね」とでも訳しておきなさいと、文豪ならではの訳だった。
それは伝説でしょ。違う、学生・松重寅吉から金之助に宛てた書簡に、先生の訳を使って女性に思いが通じたのです、と。
池本教授は、畑が違うが研究心のある女学生が、飽くまでも自分で発見したように仕向けるため、その書簡へと誘導する道標を示したかった。
ところが、その前に理事長によって故買されたため、
「夢は断たれている、教授会で糾弾・・・」と嘆いた。
それを勘違いした犯人が逆恨みの一撃!! 不幸にもダイイングメッセージとなってしまった。
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