アースルーリンド外伝。テテュス編。『幼い頃』 128 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

昼食は結局、外庭のテラスに運ばれた。
立派な騎士に囲まれ、ゼイブンも一緒で、ファントレイユはうきうきしているようだった。
が、テテュスは隣のレイファスにそっと聞いた。
「・・・ファントレイユのお父さんって、いつもあんなんなの?」
レイファスが肩をすくめた。
「滅多に、家に居ない」
テテュスはため息を、付いた。
ファントレイユは頬を紅潮させ、興奮したようにしょっ中隣のゼイブンを仰ぎ見る。とても・・・とても嬉しそうだ。なのにゼイブンは・・・。
ローフィスが、テーブルに頬杖付いてゼイブンの様子を眺め、つぶやいた。
「・・・不満そうだな」
ゼイブンは俯く顔を上げて一瞬彼を見たが、ため息を付き、フォークで皿を、つついた。アイリスが下を向いたまま、そっとささやく。
「美女の並み居る酒場に行けば、一発で態度が変わるぞ」
ローランデがそれを聞いて、大きくため息を付いた。
「息子のこれからの、重大な時だろう?
興味無いのか?」
ローランデに聞かれ、ゼイブンは彼を見つめた。
「・・・あんたが突出した素晴らしい剣士だと良く、知ってる。人望も厚い。あんたに治められる北領地[シェンダー・ラーデン]の民は幸いだとも、思う。
あんたの生き方も姿勢も、随分立派だ。
だが俺は・・・面白可笑しく生活するのが人生だと思ってる」
子供達が見守る中でその剣士は剣同様、鋭くゼイブンに切り返した。
「・・・私の質問の答えが、まだだ」
ゼイブンは顔を上げてその端正な貴公子を見つめた。
「・・・ファントレイユは体が弱く、セフィリアは随分入れ込んでる。彼女が危険から遠ざけたいんなら、それに同意する」
ローランデの瞳が、きつくなった。
「子供は親の付属物じゃない!
あんたよりもずっと長く、生きるんだぞ!」
ゼイブンはローランデを見つめ、素っ気なく言った。
「セフィリアが居なければファントレイユはもうとっくに死んでたかもしれない。
彼女の気持ちがどれ程か、解らんだろうがな」
ローランデはだが、きっぱりと言った。
「それは、過去だろう?現在をちゃんと、見ろ!
彼は今生きて・・・そして自分の人生を生きようとしてる。それを手助けしてやるのが、親じゃないのか?」
ゼイブンは、頷いた。
「あんたの言う事は最もだ。
だが俺に剣は教えられない」
「どうしてだ?」
つい、アイリスとローフィスが声を揃えて、訊ねた。
ゼイブンは俯いたまま、言い淀み、でもささやいた。
「・・・剣というか、殺し合いが最悪に嫌いだ」
皆がこの告白に、目をまん丸にして彼を、見つめた。
ディングレーが、大きなため息を付いてぼやいた。
「よくそれで、騎士やってるな」
ゼイブンは顔を上げて、かつての同級生に言った。
「そりゃ・・・あんたみたいな家柄に産まれなくて、幸運だとは思う。あんたは道がそれしか無いからな。
だが俺だって選択は限られていたし、俺の家柄じゃ文官に成れるコネも、無かったしな!」
「・・・だからいつも苦虫噛みつぶしたような顔をして剣を、抜くの?」
レイファスにそっと聞かれ、ゼイブンはレイファスを見つめた。
「楽しいもんじゃ、無いぞ。抜かずに済ますのが最良だ」
オーガスタスはタメ息混じりに腕組みして、言った。
「・・・それには俺も、同感だが」
ギュンターが、ゼイブンを見つめた。
「それで、済まない時だってあるだろう?」
ゼイブンは口を開きかけ、それより前にファントレイユが必死に告げた。
「でも僕とレイファスがさらわれそうだった時、ゼイブンは悪い男を斬り殺したんだ!」
皆はゼイブンを見直すように見つめたが、彼は頭を抱えていた。
「・・・あれを見て、どうしてお前達が騎士って最悪だと思わないのか、不思議だ」
ファントレイユは父親を見上げてつぶやいた。
「だって・・・ゼイブン、格好良かったし、凄く強かった」
ゼイブンはファントレイユをそっと、見た。
「本当に強い男はあそこで斬り殺したりはしない。上手く切り抜けるか、相手の戦意を無くさせるか・・・ともかくあんな事で斬り殺すなんて、俺の度量が狭いと解らないのか?」
ファントレイユは、でも・・・。と見つめ、アイリスがそっとレイファスに訊ねた。
「・・・殺しちゃ、まずい状況だったのかい?」
「ゼイブンは侮辱されてキレたんだ」
レイファスが言うと、ファントレイユも慌てて付け足した。
「でも剣を抜けって言ったのは、相手なんだ」
ギュンターが唸った。
「相手が殺る気満々なら・・・」
シェイルが割って入った。
「斬り殺すのが普通なんじゃないか」
ローフィスはシェイルを見つめ、眉を寄せるとささやく。
「ゼイブンは人を殺すと気分が悪く成る。だからなるべく殺さないよう事を収めようと・・・いつも努力してる。だがキレるとタガが外れて、きっちり相手をぶった斬っちまい・・・」
アイリスが確かに、と頷いた。
「その後暫く落ち込んで、手に負えない」
皆が頭を抱えるその美男の色男を、見つめた。
つづく。