アースルーリンド外伝。テテュス編。『幼い頃』 107 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。


皆がすっきりした気分で脱衣場に戻るが、上の騎士三人はもうとっくに上がっていて、馬の横でおしゃべりしていた。
三人がはしゃいで彼らの側に行く。
レイファスが可愛らしく笑ってディングレーに訊ねた。
「もう、上がったの?」
ディングレーは笑い、
「のぼせるからな!」
と言ってレイファスの頭をなぜた。
オーガスタスがファントレイユとテテュスに微笑む。
「痛みは取れたか?」
相変わらず朗らかなその大柄な男に、彼らは笑って頷いた。見るとギュンターは、冴えた美貌を更に輝かせていたのに、後ろからシェイルと並び来るローランデを、じっとその紫の瞳で、見つめていた。
オーガスタスが、呆然と見つめる二人に促した。
「腹が、減ったろう?」
二人は一気に空腹を思い出して、テテュスは馬に乗るアイリスの横に駆けていき、見上げてアイリスの差し伸べる手に捕まって登り、ファントレイユはローランデに手を借りて先に馬に乗って、彼が後ろに乗り込むのを、鞍の上で待った。
ディングレーがギュンターの腕に触れて促し、馬に乗り込むオーガスタスの横で、馬の手綱を引き寄せた。


一同が夕食の席に着くと、三人の子供の食べっぷりに皆揃って言葉を無くし、暫く食卓に沈黙が流れた。
レイファスが立て続けにお代わりをし、テテュスは品良く、空の皿に料理を注いでくれるよう侍従にお願いし、ファントレイユはいつものお行儀の良さがどこかへ行ったみたいに、チキンを手掴みし歯で、食いちぎっていて、それを見たアイリスが一気に肩を、落とした。
ディングレーが気の毒そうにそれを見つめ、口を開いた。
「・・・だがアイリス。どうせこうなるしか無いだろう?
元々、元気な少年なんだ」
アイリスは、俯いた。
「解っているけどね・・・。
でもこの変わり様を見たら、セフィリアは絶対私を睨み続けるだろうな・・・・・・・・・」
その言葉で、ディングレーはファントレイユを見つめたが、本人は気づく様子無く、もう片手にもチキンを握り締めて、両方交互に、喰い千切っていた。
ローランデがギュンターを見つめ、シェイルも気づいて、ささやく。
「・・・やっぱり、ギュンターと渡り合ったせいだと、思うか?」
ローランデはそっ、と頷く。
オーガスタスも気づいたがギュンターのその手は、ファントレイユ同様やっぱり、チキンが握られていた。ディングレーとアイリスの、視線をも感じ、ギュンターは唸った。
「骨付きチキンはこうして、食うもんだろう?」
ローランデはため息混じりにつぶやく。
「それは・・・そうだけど、行儀の良い人間は、ナイフで切って、骨の回りの肉は残すものだ」
ギュンターはつい、アイリスとローランデを見たが、二人共そうしていた。が、ギュンターは異論を唱えた。
「・・・ディングレーはどうなる」
ディングレーの皿のチキンはやはり、歯で喰い千切った後があり、ディングレーはため息を吐いた。
「・・・俺は手掴みはしない。一応フォークで刺してから、喰い千切る。そりゃ、ここが野営のテントなら・・・お前同様に食うけどな」
ギュンターはオーガスタスを、見た。彼も手掴みだった。オーガスタスは、肩をすくめた。
「ご婦人の居るテーブルでは俺もフォークで刺すが・・・」
ここでそれが必要か?と、アイリスを見た。
アイリスは、ファントレイユとレイファスを婦人扱いするべきか悩む、オーガスタスに返答出来ないで俯いた。
大人達の会話に、テテュスもレイファスも、気づいた。テテュスはアイリス同様、ナイフとフォークで肉だけを切り落として食べていたし、レイファスはシェイルを習って、フォークで刺して、喰い付いていた。
二人揃ってファントレイユを見たが、彼は気づく風も無く、両手にチキンを握ったまま、夢中で喰らい付いていた。
全員が、ギュンターを見た。
ギュンターは見つめられて唸った。
「俺もあんなに、野蛮に食ってるように見えるのか?」
オーガスタスは肩をすくめた。
ディングレーが助け船を出した。
「野蛮と言うよりちゃんと男らしくは見えるが、ファントレイユが真似してるのは、確かだな」
アイリスの、泣き出しそうな視線に、とうとうギュンターはオーガスタスと目を見交わし、二人は手から、チキンを離すと、仕方無さそうにフォークで、突き刺した。
つづく。