アースルーリンド外伝。テテュス編。『幼い頃』 48 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

皆が一斉に、どっと、笑った。
デングとヨハンセが中心で、薪を拾って火を起こし始める。ディングレーが薪拾いを手伝い、ローフィスがヨハンセのたどたどしい手つきで火打ち石を鳴らすのを取り上げて、火を付けた。
魚を焼き始める。
人数が多いから。と頑張るサルダンとザックにアイリスが加わり、ローフィスも釣りに参加し、彼らにコツを教わり、二人も釣り糸を垂れた。
ディングレーの監視の元、魚が焼かれ始めた。
「・・・こっちは塩焼きにする。で、こっちは・・・」
デングがフライパンを出す。
「バターで、焼く!」
ディングレー迄が一緒になって、感心してそれを見つめた。テテュスは火の番をし、デングとヨハンセが、焼きの見張りをし、ファントレイユとレイファスとロッテンとデニーは薪拾いを初めた。
「野いちご!」
デニーが叫び、レイファスと二人は夢中で拾い始めた。
ファントレイユがロッテンを見つめて言った。
「僕らはちゃんと、薪を拾おう」
ロッテンは、頷いた。運動神経が今一の、愚図のロッテンが木の根につまづいて転び駆けると、ファントレイユが腕を引いて、助けた。
ロッテンが、彼を見上げてつぶやいた。
「・・・ちゃんと、男の子に見える」
ファントレイユはつい、ムキになった。
「・・・だから・・・初めから、男の子だって言ってるじゃないか!」
デングが魚を、裏返す。ヨハンセは串刺しにした魚を返し、つぶやいた。
「ちゃんと中迄焼けるよう、気をつけるんだ」
デングが、神妙に頷いた。
テテュスに薪を手渡しながら、ディングレーがつぶやいた。
「・・・上手いもんだな」
二人は黒髪の騎士に振り向いた。二人同時に声を揃える。
「叔父さん、魚焼いた事、無いの?」
ディングレーが途端に、唸った。
「お兄さん!」
テテュスに声を上げて、笑われた。
ローフィスが狙い澄ましたが、アイリスに先に釣り上げられ、悔しそうな表情を見せた。アイリスは肩をすくめた。
「ここでは君よりほんの少し、キャリアが長い」
ローフィスは唸った。
「たったの数分じゃないか!」
ザックとサルダンに、笑われた。
皆が、わくわくしていた。
ヨハンセは薪に芋も、放り込んでいた。
ほくほくの芋にバターが乗せられ、焼けた魚が手渡され、デングとデニーが持ってきた、煮て味付けした山羊のミルクが配られ、レイファスとデニーの摘んだ野いちごが置かれ、皆がそれを、食べた。
「上手い・・・・・・・・・!」
ローフィスが思わず声を、上げた。
ディングレーもつぶやいた。
「お前らいつもこんな上手いもん食ってるのか?」
皆が意外そうに彼らを、見た。
アイリスが、彼らの様子に気づいてつぶやいた。
「ディングレー。君の家では毎晩凄いご馳走だろう?」
皆が羨ましそうに、気品あるディングレーを見つめた。が、ディングレーはつぶやいた。
「お前もじゃないか・・・。アイリス。だが・・・・・・」
「だが?」
ザックが、訊ねた。
「こっちの方が、ご馳走だ」
立派な騎士で貴族の彼にそう言われ、農家の子達は、胸を張った。
魚の身はほろほろほぐれて旨味があり、芋は手作りのバターでほくほくして格別で、野いちごは熟れて甘酸っぱく、山羊のミルクは臭みが無くて、酷と風味と甘みが、満点だった。
皆、はしゃぎ回ったので大いに食べた。
ローフィスはつい、つぶやいた。
「俺も散々野宿したが、この料理人はなかなかだ!」
デングとヨハンセが、得意になった。
皆が食べた後ごろんと、横に成った。
ファントレイユが、つぶやいた。
「草の、香りがする・・・」
レイファスがくすくす笑った。
「草の上で横に成ってるとセフィリアが知ったらきっと、大騒ぎだ」
ファントレイユもつい、くすくす笑った。皆が彼らを、見た。
「草の上だと、まずいの?」
ヨハンセが、訊ねた。
ファントレイユとレイファスは思わず顔を見交わし、もっと、くすくす笑った。
綺麗な二人が楽しそうで、でも全然気取って無くて、皆もつられて、くすくす笑った。
つづく。