鬼ごっこはいつの間にか終了し、もう勘弁と叫ぶローフィスと、くたびれ切るディングレーの手を引いて、子供達は釣りをするザックの元へと戻ろうとした。
が、アイリスの肩の上にテテュスが座っているのを見て、皆が一斉に、ディングレーとローフィスを見上げた。
ローフィスはレイファスとデニーを左右の肩に乗せ、ディングレーはヨハンセとファントレイユを、残ったロッテンがアイリスに寄ると、アイリスは笑って屈み、テテュスと反対の方の肩に彼を、座らせて立ち上がった。
「凄く、高い!」
ロッテンが叫ぶと、子供達は次々に叫んだ。
「気持ちいい!」
「見渡せるぞ!」
ディングレーはいい気なもんだと苦虫を噛みつぶし、木の枝に触れていくヨハンセにぼやいた。
「動くな!落ちるぞ!」
ファントレイユが途端に、笑った。
「ディングレーが凄く素早く捕まえるから、大丈夫だ!」
「二人同時に何とか出来るか!ファントレイユ。お前はいい子にしてろ!」
「・・・僕もう、いい子飽きた!」と言って、ヨハンセと同じ、高い枝を触れて回る。
二人が枝に触れようと左右両端へと同時に身を乗り出し、ディングレーが怒鳴った。
「おい・・・・・・・・・!」
必死でバランスを、ディングレーは取り、ファントレイユはヨハンセに、「大丈夫だろ?」と笑い、ヨハンセは笑顔で返した。
だがディングレーに「俺は大丈夫じゃ、ないぞ!」
と怒鳴られて、二人は思い切り、声を立てて笑った。
テテュスはアイリスの肩の上で、風を、感じた。
世界はとても、暖かくて明るかった。
アイリスは笑っていて、ファントレイユもレイファスも、それぞれローフィスとディングレーの肩の上で、笑っていた。
風の中にアリルサーシャの気配を、感じた。
・・・もう、少しも苦しくないの・・・。
たからテテュス、気に病まないで・・・・・・。
アリルサーシャの優しい気配に、テテュスはまた、涙が溢れた。
ザックが、アイリスの肩から降りるテテュスの瞳が潤んでるのを見つけ、デングが気づいて、叫んだ。
「テテュス!僕が釣った魚、いっぱい食べて、いいから!」
サルダンが途端に叫んだ。
「俺が釣った魚だろう!お前全部、逃がしちまったじゃないか!」
皆が一斉に、どっと、笑った。
つづく。