アースルーリンド外伝。テテュス編。『幼い頃』 28 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。


テテュスは、両脇に立つローフィスとディングレーを、交互に切なげに見つめた。
ファントレイユはセフィリアに手を引かれ、彼女を見つめた。
レイファスはアリシャの横で、俯いて背を、向けていた。
ファントレイユがとうとう、セフィリアの手を振り払ってテテュスの横に、駆け込んだ。レイファスも振り向いてそれを、見た。
「・・・ファントレイユ!駄目よ。戻ってらっしゃい!」
ファントレイユは怒鳴った。
「・・・だって・・・!ゼイブンだってセフィリアが外で遊んで来いって言うから、ちっと戻らないで僕と遊んでなんかくれない!
どうしてディングレーとローフィスは駄目なの?テテュスとだって・・・。離れたくない!
僕はテテュスともっと一緒に、居たい!」
ファントレイユのストレートな要請は、セフィリアの胸を打った。
「・・・だったらちゃんと・・・私が素姓のはっきりとした騎士を、遊び相手に探すから!・・・そしたらテテュスに、家に来て、貰いましょう。ね?お願い。そうして?ファントレイユ・・・」
ファントレイユは首を横に、振った。
「・・・ローフィスとディングレーがどうしていけないの?!素姓がちゃんとはっきりしてるじゃないか!
アイリスの友達なのに!」
ローフィスとディングレーは、そこが、まずいんだよな。と顔を見合わせた。
「・・・ファントレイユ。でも、何かあってからじゃ、遅いのよ?」
「・・・だって!ディングレーもローフィスも絶対護ってくれる!ちゃんと立派な騎士だもの!どうして解らないの?二人共、凄く素晴らしい騎士だって!
セフィリアの瞳は、ふし穴なの?!」
ディングレーもローフィスも、この人形に見える男の子の賞賛に心が暖かくなった。ローフィスは静かにつぶやいた。
「子供に貴方方が考えているような悪影響は決して与えないと約束する」
ディングレーも怒鳴った。
「純粋培養じゃ余計に、危ないぞ!」
婦人達は二人の言葉に振り返り、ディングレーが更に唸った。
「・・・戦い方を、俺なら教えられる。ちゃんと男の子としてやっていく方法も。
第一、テテュスを可哀想だとは思わないのか?やっと出来た友達だ。俺達をアイリスが寄越したのは、大人の監督者が必要だからで、あいつは自分の息子に手を出し、悪影響を与える者を寄越したりはしない。あいつの息子可愛さはあんたらより更に、上だ。一緒に居る時間が取れないから、余計に!」
ディングレーの言葉には説得力が、あった。大層、怒っていたので。その怒りは自分の誇りが傷付けられた事よりも、テテュスの友達を取り上げられる悲しみを、この不器用な男が気遣った為だと御婦人達にも、解った。
レイファスはアリシャを見つめた。
「・・・父さんはしてくれないけど、ローフィスは肩車をしてくれるんだ」
アリシャは俯いた。
「だって・・・カレアスは、貴方と遊ばないの?」
「・・・アリシャ。貴方が療養してる時彼は仕事から帰るとすぐに貴方の元へと、飛んで行く。一緒に居る時は貴方の側に、べったりだ。僕もファントレイユも父親に相手にして貰えなくて、凄く、寂しい。
生意気な口をきくけど、ローフィスやディングレー達の方がよっぽど、父さんみたいなんだ」
『父さん』が、きいたようだった。
ディングレーはレイファスを、やっぱりこいつは頭がいい。と感じ、ローフィスはさすがに母親の泣き所を知ってると、感心した。
「残りたいの?」
アリシャが言うと、レイファスは俯いた。
「だって家に帰っても、カレアスは遊んでくれやしない。それに・・・。テテュスの事が凄く、心配だ」
レイファスに心からそう言われ、息子の優しさに、アリシャは感激した。
ファントレイユは、レイファスがやった!と心の中で感じた。セフィリアも、ため息を付いた。
「・・・熱が出たら・・・」
ファントレイユは言った。
「もう、出ない。レイファスと一緒になってから一度も。セフィリアも、知ってる癖に」
きっぱり息子にそう言われ、セフィリアは俯いた。
確かに、ゼイブンはアイリスに任せろと言った。もう息子を女の子と間違われて襲われたりしない為には。
二人はとうとう、引き下がった。
「お二人にはご迷惑でしょうけれど」
いい若者が、子供の相手を買って出るなんて。と思ったが、二人がテテュスを気遣うように両脇に寄り添い立つのを見て、納得した。
「ごめんなさいね。テテュス」
セフィリアが言い、アリシャは飛んで来て、テテュスを抱きしめてささやいた。
「貴方がどうだとか、言う事じゃ決して、無いから。ただ・・・」
アリシャは柔らかくて可憐で、いい匂いがし、レイファスとやっぱり似ているとテテュスはくすぐったかったが、ささやいた。
「・・・解ってます。レイファスがとても、大切なんですね?」
アリシャが顔を上げ、兄そっくりだけどとても誠実そうなその息子の顔にまた、安心した。
「・・・そうなの。でも今度は是非、家に遊びに、来てね?いいわね?テテュス」
テテュスは微笑んで、頷いた。
ディングレーとローフィスが、やれやれと顔を、見交わした。
馬車が去って行き、ディングレーはローフィスが、アイリスでも苦手な物がある。と言った意味を、実感、した。
つづく。