警備隊は極悪人兄弟の残り二人を逮捕して中央警備連隊に引き渡し、ゼイブンは任務の呼び出しを告げに来た使者を迎え、それは、ほっとしていた。
彼が屋敷を旅立つ時、ファントレイユはそれは別れを惜しんでくれて、彼の胸が、詰まった。セフィリアを見たが、別れ馴れてる彼女は普通で、ファントレイユの半分でいいから想ってくれるといいのに、とゼイブンは肩を、落とした。
レイファスは彼のそんな丸解りの様子に、気づいた。
ゼイブンはファントレイユを息子としてとても愛しているものの、彼の最愛のセフィリアが一番愛してるのは紛れもない、息子で、彼女にとっては息子が居れば、夫が不在でも全然構わないようだった。
彼にとってファントレイユは、恋敵同然で、自分がそんな複雑な立場に居るから大好きな父親と長く居られないんだと、ファントレイユは気づいているんだろうか?と、レイファスはいぶかった。
だが、レイファスはゼイブンが、浮気をバラされる怖さに本気を出し、父親の権威を発し、彼の条件を全部飲んでセフィリアにきつく、いい含めた事に、心の中で拍手した。
彼らはもう、領地の中をどれだけ暴れ回っても、咎められない。
ゼイブンは、それはにっこりと全開の笑顔で自分を見送るレイファスに、視線を投げた。
そうして馬の手綱を握るゼイブンは随分男っぽくて格好良かったが、中味はレイファスが、本当に約束を護るのかどうか、はらはらだった。
チラと視線を、脅すようにレイファスに、投げる。
レイファスが、請け負うように、微笑みを、返した。
彼の馬が見えなくなって、ファントレイユはレイファスに、そっと尋ねた。
「・・・ゼイブンを、脅したの?」
レイファスがファントレイユを、見た。
「・・・聞いていたの?」
ファントレイユは、頷いた。
レイファスはファントレイユが、ゼイブンがどうして他の女の人と仲良くするとセフィリアが気を悪くするのかとか、自分が将来、嫁の代わりに男を連れてくるって、どういう事だとか、素朴に質問して来そうな気配を感じ、言った。
「・・・でもとにかく、もう思い切り暴れても、セフィリアは怒らない。だってゼイブンが、約束していったから」
ファントレイユはそう言うレイファスを見つめ、とても、にっこりと笑った。レイファスはその笑顔に尚も言った。
「君だってもう、熱なんか出さないだろう?僕の居る間、あんな事の後でも、出さなかった」
レイファスが言うと、ファントレイユは頷いた。
「秘訣を、覚えたんだ」
レイファスは彼を、見た。
「まずいお菓子のまんまだと、その後最悪に気分が悪くて、我慢してると熱が出るんだ。
でもその後美味しいお菓子を食べれば、大丈夫なんだろ?」
レイファスはたっぷりと、ファントレイユを、見た。
「・・・・・・・・・それで熱を、出さなかったの?」
ファントレイユは、頷いた。
「それに、我慢しないで相手にがつんとやると、熱が出ない」
レイファスはそれを聞いて、俯いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ファントレイユはきっちりキレて自分より体の大きな子供三人に思い知らせたし、ゼイブンはアタマに来て相手を殺してしまった。
レイファスは、もうあんまり人形に見えない、性格が実は父親似の彼を、心配そうにそっと、伺った。
もしかして自分は・・・・・・・・・触っちゃいけない封印を破って、とんでも無い魔物を、出してしまったんじゃないかと、一瞬背筋が寒くなって。
end