荷台が止まり、レイファスは、だろ?とファントレイユを、見た。
確かに領地の門の前の道を、途中を少し左に入った辺りで、木々をかき分けて進むと領地の周囲を取り巻く石塀が、見えるんじゃないかと言う位近かった。
布の間から覗くと、アロンズが農家の納屋に、入って行くのが、見えた。
「・・・荷物を積むのかな?」
レイファスが顔を、上げる。暫くしてアロンズが、籠の上に、果物をいっぱい載せて、戻ってきた。農家の女将さんが、微笑んで彼に、おみやげも、持って行ってくれと告げ、アロンズは頷いて、荷物を荷台に、載せる為に近寄って来る。
アロンズが、籠を置いて布を取り払う前に、レイファスが布の下から姿を、現した。
ファントレイユはあんなにびっくりしたアロンズの顔を、見た事が、無かった。まるで、天地がひっくり返ったような驚きようで、レイファスがとてもしょげた表情で、アロンズに謝罪した。
「・・・ごめんなさい・・・・・・・・・」
アロンズはまだ、口をきけなかった。
ファントレイユはどうしていいのか解らなかったが、彼もレイファス同様、立ち上がった。
「・・・ファントレイユ・・・・・・君迄?」
ファントレイユはとてもすまないといった表情で、やはりアロンズに、謝罪した。
「・・・ごめんなさい」
アロンズは暫く、どうしていいのか解らなかった。
が、レイファスは上目使いに彼を見て、つぶやいた。
「ファントレイユを誘ったのは、僕なんだ。僕の領地でやっぱりアロンズ位の子が農家にお遣いに行く時、良く荷馬車に乗せて貰っていて・・・。なんだか懐かしくて、つい、乗っちゃったんだ」
ファントレイユはレイファスを、見た。勿論、彼の嘘だ。彼の所だって領地から出たりしたらそれは、怒られる筈だったから。
でも全部嘘じゃないのは、その子供とレイファスは内緒の取引をしていて、レイファスはこっそり領地からしょっ中抜け出している、という事だ。
アロンズは、それは大きな、ため息を、付いた。
そっとレイファスに屈むと、つぶやいた。
「もう少し、隠れていてくれる?」
レイファスは、頷いた。
「君達みたいに目立つ綺麗な子供が一緒だって解ったら、直ぐに奥様に、解ってしまう」
レイファスはつぶやいた。
「君の困るような事は、しない・・・」
その、とても素直な様子に、アロンズは優しく、頷いた。
レイファスはファントレイユを促すと、ファントレイユも、一緒に屈み、アロンズから受け取った果物籠を、荷台の隅に、置いた。
つづく。