その内、母親の友達達が自分の息子達を伴って訪れるようになって以来、彼らはますます、居心地が悪く、なっていた。彼女達の息子らは、それは容姿の綺麗な二人が、母親達に大層受けがいい事に嫉妬した。
彼らの時には再三、もっとお菓子が欲しいとねだっても許可しなかったのに、レイファスが可愛くお願いすると途端に許されたりするのに、不満を持っていた。
それで彼らだけになった時、ひどい嫌がらせを、した。
泥の入った飲み物を飲ませようとした時なんか、レイファスは怒りもせずにそれを受け取って、口に運んでみせる。彼らはそれを飲んだレイファスを、笑い物にしたかったようだが、レイファスは飲み込む直前それを彼らに引っかけ、ファントレイユの腕をさっと掴んで駆け出した。
連中は、追って来たが、レイファスは安全圏、つまり母親達の群に、逃げ切った。
どたどたと、血相を変えて追いかけてくる野蛮で、やんちゃそうなその息子達は母親から見ると眉を潜める存在で、追いかけられた、レイファスとファントレイユの、上品で可愛い姿はそれは可哀想に見え、彼らに味方して野蛮な追っ手に厳しく注意、してくれたりしたから、息子達は二人をもっと、嫌いになった。
「・・・だって、レイファスが僕の服に、飲み物を、かけたんだ!」
彼らの抗議に対してファントレイユは、その飲み物に、泥を入れたろう?と糾弾しようとしたが、レイファスは彼の服を、掴んで止めた。
母親達がレイファスを見るとレイファスは途端、涙で瞳を潤わせ、つぶやいた。
「・・・手が、すべったのに許してくれないんだ・・・」
やっぱり、場の同情はレイファスに、一斉に集まった。
母親は乱暴な息子達に、レイファスのした事を許せない、心の狭い子供だと、彼らに言ったし、しかもレイファスが投げて床に散った、飲み物の掃除を彼らに、命じたりしたからもう、彼らの怒りは頂点だった。
「・・・どうして本当の事を、言わないんだい?」
ファントレイユが尋ねると、レイファスは肩をすくめた。
「母親達は優雅な時間を過ごしたいのに、よりによって泥の入った不潔で野蛮な飲み物だどうだに、煩わされたいもんか!
第一僕が失敗した時、彼らが目くじらたてると大人達に示しといた方が、今後いつでもあそこに逃げ込めるじゃないか」
ファントレイユは目を、丸くした。
「・・・じゃあ、あいつらまた嫌がらせをすると、思ってるの?」
レイファスは、とても性格のいい領地内の子供としか付き合っていないファントレイユに、呆れた。
「・・・ああいう子供は、絶対これからずっとひどい嫌がらせをすると思う。自分達が僕達より優れていると、僕達に思い知らせる迄」
でも、実際その通りだったし、レイファスはいつでも先手を、打った。
レイファスがそれはうんざりすると日頃言っていた、彼らを猫可愛がりするご婦人達の元へと、毎度逃げ込む事に成功し、子供達は彼らが綺麗で、大人しくて、可愛らしいのに大層、嫉妬して性格が悪いと、彼女達に思われたのだった。
自分のあまり好きでないご婦人達の、好意を使って自分の株を上げる事をどう思ってるのか、レイファスに尋ねる時、彼は決まって
「・・・いつも女の子扱いされてうんざりしてるのに付き合ってるんだ。これ位は返して貰って、当たり前だろう?」
と、駆け引きのようにそう言う。
でもファントレイユは、本当の真心とか、思いやりとか、愛情は?とレイファスに、聞きたかったが、彼の中では大抵、自分のしたいようにさせてくれる相手か、そうでないかが決め手のようだった。
つづく。