アースルーリンドの騎士追加特記その83 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

要塞に着くと、彼らは交互に並んだ窓から、幾筋もの朝陽差し込む廷内の踊り場に、ギデオンとレンフィール、ヤンフェスと子息の姿を見つけた。
ギデオンは陽の中、その輪郭を白く輝かせて、確かにそこに、居た。
その白くぼやけた姿を見るなり、つい目頭が熱くなり、ソルジェニーは思わず駆け寄って、その胸に飛び込んだ。
ギデオンは、胸に顔を埋め、腕にきつくしがみついて肩を震わせるソルジェニーに、心が震った。
幾度も耳元に、心配かけてすまなかったと、繰り返しささやき続ける。が、ソルジェニーは体の震えが止まらず、ギデオンの腕に、しがみついて離れなかった。
その小さな体が、彼の無事を目にした喜びに、その身を震わせ続けるのを、ギデオンは泣き顔のように顔を歪めながら、腕の中でしっかりと、抱き止めていた。
・・・こんな風に率直に、心を飾らず感情を現すソルジェニーに、ギデオン自身も自分の感情を殺す事が出来ず、何度もその背に手を添え、頭に頬を寄せて彼の身を案ずる想いに、感謝を寄せた。
ファントレイユが、光を背に、その情景を微笑んで見つめているのに、ギデオンはふと気づくと、ソルジェニーに屈み、そっと耳元でつぶやいた。
「・・・私の伝言を、聞いたかい?」
そう問われ、ソルジェニーはようやく顔を、上げた。
今では懐かしさすら感じる、ギデオンのその、色白の小さく整った顔が優しく向けられ、ソルジェニーは問う顔をした。
「・・・伝言?・・・ギデオンの?」
その返答に、ギデオンは少し言い淀み、ソルジェニーから視線を外してファントレイユを見るが、ファントレイユは思い切り気まずそうに、顔を背けた。
ギデオンは眉を寄せてため息を付くと、見つめているソルジェニーに視線を戻し、彼を見つめて、ささやいた。
「・・・君の、護衛の事だ・・・。
どうせ、自分の事は詳しく言ってないんだろう?あの男は。
自分が何をしたのかを」
ソルジェニーはギデオンを見つめた。
「・・・彼が暗殺者の刃を止め、彼自身が軽い傷を、負ったと・・・」
ギデオンは微笑んだ。
「・・・正直、彼が居なければ私は、重傷を負ったか・・・・・・、
死んでいた」
ソルジェニーが、そんなひどい危機だったとは知らず、動揺したように目を見開き、顔を、揺らした。
そしてその瞳が、みるみる間に、潤む。
ギデオンの眉がそれを見て、自分の迂闊な失言に、切なげに目を細めた。
ソルジェニーは必死で、無事を確認するように、ギデオンの腕をもう一度、強く握ってつぶやいた。
「・・・良かった・・・・・・!
本当に、良かった・・・・・・・・・!」
そしてこらえきれないように彼の胸に、顔を埋めた。
王子に腕の中で震えながらそう言われ、ギデオンは彼を、心から労るように、抱きしめた。
ソルジェニーは知っていて、一晩中彼の身を案じて、心休まらずにそれは、不安だったのだと、解ったからだった・・・。
アドルフェスも、レンフィールもシャッセルも・・・。
廷内にな差す朝日に照らされた光の中、幼い王子を愛おしそうに大切に腕に抱き、切なげに眉を寄せるギデオンの、初めて目にする姿を、暫く呆然と見守っていた。
ヤンフェスは微笑み、フェリシテは良く頑張ったと、王子を誉めてやりたい気に、なった。
アイリスはそれを見て、とても幸福そうに微笑んだ。
ファントレイユがすっ、とその場から去ろうとし、アイリスは彼の様子にさりげなく、声をかけた。
「・・・立て役者が、雲隠れかい?」
ファントレイユは、困ったようにアイリスを、見つめた。
ソルジェニーが顔を上げ、濡れた青の瞳が、今だギデオンの腕の中に居ながら、ファントレイユに真っ直ぐ、向けられる。途端、ファントレイユは気まずそうに顔を背けた。
皆がその反応に、一斉に、おや?という顔を、した。
ギデオンはソルジェニーに、そっと、告げた。
「・・・心配事からも君を護った、君の護衛は最高の男だと言ってやったんだが、聞かなかったか?」
だが、ソルジェニーはそのギデオンの言葉に振り向くと、彼の無事な姿をもう一度その瞳に、大切そうに映し、思い切り、頷いた。
「・・・私も、そう思う・・・・・・・・・!」
ソルジェニーに涙目でそう言われ、ギデオンは切なげに眉を寄せて、そっと彼を見つめた。

      つづく。