本来なら、アメリカへ向けて飛行機に乗っている時間ですが、なんと、突然エンジンが停止するアクシデントに会い、成田空港に戻ってきました。
私は元々、シアトル経由デンバー行きの飛行機UA876便に乗る予定でしたが、連れてゆく選手一人だけサンフランシスコ便だったため、ルール上はフライト便の変更は出来ないのですが、無理を言ってサンフランシスコ便に変えてもらったのです。
『旅慣れていない選手一人では、どんな危険があるか分からない』
そう言ってユナイテッド航空の地上係員を口説いて、変更してもらった結果・・・
選手は、『阿部さんが居てくれて良かったぁ』と涙目になっていました。
<その時の様子はこんな感じです>
UA852は5時40分発でしたので、離陸してから間もなくの出来事でした。
私の時計は、6時5分を指していたと思います。
今回、私が座った席は30H。なんと、止まったエンジンの真横の席です。
普段は前方の広いシートを貰うのですが、今回は直前に変更したので、非常口横の席になりました。
何か変な予感というか、嫌な感覚が機内に漂っていた、その時。
突然、ガガガガガー、ギューーーン、という大きな音と共に、右のエンジンが停止したのです。
一瞬、機体がガクンと落ちたようにも思えました。
私の隣の乗客は、大きな体を震わせながら、背中を丸め、ひじ掛けにしがみつき、足でブレーキをしていました。
私の前には客室乗務員が座っていて、さすがに冷静さを失っていたようにも見えました。
後から聞いた話では20年以上のキャリアの中で、こんな出来事は初めてだったそうです。
一瞬機体が落ちたように思えた後、機体はバランスを取り戻していましたが、キーンという機械音は続いていました。
客室乗務員の動きが慌ただしくなり、
『今、窓の外に何か見えましたか?』
『何か変わった事はありませんでしたか?』
『エンジンに何か入って行きましたか?』
などと、私と私の隣の乗客、そして私の後ろの乗客に訊いてくるのでした。
エンジンは完全に停止したまま。
10分経過したかしないか位の時間が経ち、アナウンスが流れました。
『右のエンジンが何かの理由により停止しています。』
『この飛行機は、燃料を捨てて、機体を軽くした後に、成田空港へ引き返します。』
約10分間、翼の端から燃料が噴出するのを真横に見ながら、私は心の中で
『早く引き返してくれよー』と思っていました。
隣の乗客が何か思い立ったように奇妙な話を始めました。
『俺は、ミュージシャンで東京で昨日までコンサートをしていたんだけど、二日前に、俺達のファンという女の子がこんな事を言っていたんだよ』
『あなたには危険が迫っています。もしかしたら死んでしまうかもしれないような危険です。』
『俺は、この子何バカなことを言っているんだ。よせよそんな冗談、と思っていたんだけど、今、それが本当の事になった。あの子の言っていたことが起こったんだ』
他の乗客からも、
『私は、昨夜、飛行機が落ちる夢を見たのよ!』
『おれは、エンジンにトラブルが起こる夢を見たよ!』
など、次々と、この事故を予知していたかのような話が出てきました。
エンジンが停止してから約40分後、UA852は、無事に成田空港へ着陸しました。
着陸した瞬間、機内では大きな拍手が沸き、皆、自分達の身の安全を確信したのでした。
この事故はニュースになるほどの事故ではないのでしょうが、UA852に乗っていた乗客全員は、生きている喜びを感じたに違いありません。
今はまだ、身動きが取れずに、空港に缶詰状態です。
ユナイテッド航空係員によって、今日の宿泊の準備と、明日の振り替え便の手続きが行われています。
多分、深夜近くになると思います。
続きは、後ほどお知らせします!