
柊サナカ氏の「機械式時計王子の休日 千駄木お忍びライフ」(ハルキ文庫)を読んだ。
千駄木にある時計店で店番をしている十刻藤子の元にイケメン二人が現れる。イケメン二人は、空いている部屋を間借りしたいという。二人の正体は、十七歳のジャンと二十七歳のアキオ、ジャンはジュネーブ時計学校を卒業した資産家だ。藤子とジャン、アキオを中心に、トトキ時計店に持ち込まれる時計にかかわる無理難題を解決していくストーリーです。
機械式時計の蘊蓄と時計師のエピソードを読んでるだけで面白いですが、藤子と亡き父親との確執なども話に深みを与えるものとなっています。
店の上にあるハワード社製の大時計をジャンとアキオが修復して、町の人たちがさまざまな思い出を蘇らせる話や、婚約した藤子の友だち千穂が婚約者の母親から高価な機械式時計を貰って、結婚を躊躇してしまうエピソードが面白かったです。
また、藤子の父親が独立時計師を目指しており、志し半ばで死んでしまったが、藤子を思って藤の花をモチーフにした精巧な機械式時計を遺していたことなど物語のクライマックスが涙をそそります。
男たちがロマンと言って、のめり込む世界に藤子も魅せられていきます。
精巧で、精密な小宇宙ある時計の世界に読者たちもいつの間にか魅せられしまうこと間違いありません。
著者の本は初めて読んだのですが、単なる衒学趣味の読み物ではなく、キャラクターがしっかりした魅力的な物語に昇華させています。ほかの本も読んでみたくなりました。