11月の終り頃、世間の人々は全く知らないと思いますが、「改正建築士法」が施行されました。
当社にも、こんなのが、
昔から建築関係の法律は「ザル法」で、有名ですが、今回の改正もまさしく「ザル」のような
気がします。
一番、ザルっぽいのが、三つ目の(・)のところに書かれている、「重要事項の説明義務」。
これは、ほとんど、絵にかいた餅になる気がする。
「建築設計監理契約を結ぶ前に、重要事項を説明しなければ、罰する。」
・・・・という、新しい法改正なのですが、問題は、この前の設計監理契約にある。
どんな建物も、必ずどこかの設計事務所が設計監理をしなければ、建物を建てることができません。
建築確認申請書の「設計者欄」と「監理者欄」が空白では、建築確認は受理されません。
ですから、例えば、ABC不動産という分譲住宅会社さんが建てた建売住宅は、必ず、
ABC不動産内部の設計事務所登録をした設計部(「ABC設計」という名前かもしれない)が、
設計者であり監理者になっており、社内に設計部がなければ、外部の設計事務所に、設計監理を
委託して、この外部の設計事務所(「どすこい設計」という名前かもしれない)が、「設計者欄」と
「監理者欄」に自社の名前(「どすこい設計」)を記入しなければなりません。
しかし・・・。
世の中の建物・・・・建築確認申請書に書かれる設計事務所と、必ずしも「設計監理契約」を
結ぶとは限らない。
比較的、規模の大きな建物の場合は、この設計監理契約は結ばれるケースが多いのですが、
規模の小さな建物、特に住宅の場合は、99.9%・・・・設計監理契約は結ばれずに、工事が
始まります。
上記の建売住宅の設計の外部委託の場合なども限りなく100%、契約は結びません。
注文住宅が建てられる場合も、世の中は、設計施工で建築するケースがほとんどです。
設計施工の場合は、設計料や監理料をお客様に請求することがないので、
当然、設計監理契約など結びません。
家づくりをする多くのお客様は、工事費の10%ともいわれる、設計監理料を払うことを拒みます。
そんなお金があったら、設計料のかからない設計施工で家を建てて、
「その分、キッチンをグレードアップしたい!」
とか
「いや、少しでも予算を抑えて建築したい!」
と、考えるのは、自然なことです。
設計監理契約という契約自体が、住宅の世界では、ほとんど存在していないのですから、
その設計監理契約の前に、重要事項説明をせよ!しなければ罰則!・・・・と言われても、
契約がなければ重要事項説明も存在しないわけで・・・・つまり、この法律はザルです。
もし、重要事項説明を厳格化したいのなら、その前の設計監理契約の締結を義務化すべきです。
しかし、これは、現実にはなかなか難しい・・・・といいますか、不可能に近い。
実は、今日、当社の設計スタッフが、建築確認を一件、提出に行ってきたのでした。
このスタッフは、
「確認申請書に重要事項説明を添付してなければ、受け付けない!・・・と、言われたらどうしよう。」
と、思いながら、提出に出かけたそうな。
結果は、彼の杞憂で・・・・建築確認申請は、重要事項説明などなくても、すんなり通りました。
この物件、重要事項説明などしておりません。
設計監理契約を結んでいませんし、建築主様は、親しくしている某分譲住宅会社さんです。
今日、提出した、建築確認申請は、こちらの業者さんの建売住宅です。
この分譲住宅会社さんの社長さんを捕まえて、
「重要事項説明いたします。聞いて下さい。決まりですから。
設計料は、告示に基づき、工事費の10%、190万円いただきます。
設計料の支払いの時期は、うんぬんかんぬん・・・・。」
もし、私が、こんなことをしたら、社長さんは、血圧が上がってぶっ倒れてしまうでしょう。
・・・・と、同時に、こんな高額な設計料を本当に、分譲住宅会社さんが払わなければ、
ならなくなったら、世の中の建売住宅は、確実に、今より100万円以上、値上がりするでしょう。
この重要事項説明・・・・はっきりと「設計料」、「設計料の支払い及び支払時期」という文言が、
記述されている。
この説明を受けたら最後、設計監理料を払わざるをえなくなる!
設計料を払わずに家を建てたいお客様からすれば、「消費者保護」の正反対のシロモノです。
あり得ません・・・・こんな話。
住宅は、設計施工で建築するのが常識です。
きっと、今回の重要事項説明は、大規模建築物関係の話で、住宅には当てはまらないと思います。
