設計士と呼ばれたくない私・・・ | WAS IT ALL WORTH IT ?

突然ですが・・・私は人から「設計士さん」と言われると、何とも言えない嫌な気持ちになります。

理由は単純で、「私の中で設計士のイメージは、ものすごく悪い」からです。

もともと設計事務所だった当社の社長である私が、こんなことを言うのは変かもしれませんが、

「設計士」ほど「偽善的な職業はない」と、思っています。


一級建築士・・・・と聞くと、一般の方は、どんな想像をされるのでしょうか・・・・・??

ある人は「設計士」を想像されるかもしれないし、「現場監督」を想像される方もいるかもしれない。

現実には、一級建築士はほとんど専門分野が真っ二つに分かれていて、

「設計を専門にしている一級建築士」と「施工(現場)を専門にしている一級建築士」に分かれます。

そして、この両者は、「同じ建築士か!?」と思うくらい、知識と経験に差があります。



設計を専門にしている建築士さんは、いわゆる「設計士」さんであって、中には、

ご自分のことを「建築家」などと自称してらっしゃる方もいますが、

この人たちは設計図を作成することが仕事です。

この設計士さんの大きな欠点は、ずばり!


「現場がわかっとらん」・・・・の一言に尽きる。


これは無理もない・・・設計士という仕事は、設計図を何枚も作成して設計料をいただくのが仕事。

現場に行く時間があったら、図面を作成していたい!

どうしてもそういった性(サガ)を持った人たちなので、当然、日やけもしなければ現場服など着ない。

どちらかというと、おしゃれな服を着て、「建築家」を演出していらっしゃる人が多いのもうなずける。

おしゃれな服にヘルメットは似合いませんし、床下に潜れば服もよごれますしね・・・。

だが・・・・こうやって事務所ばかりにこもっていると、ますます、現場がわからなくなる。

わからないから、現場に行くのが嫌になる・・・・悪循環です。


その結果、こういった現場知らずの設計士さんが作成した図面は、現場で役に立たないどころか、

使えない代物が多い。

悪い言い方をすれば、設計図というよりは、


「こんな建物をつくりたいという希望が描かれたスケッチ」・・・・に近い。


これは日本全国共通で・・・多くの建設会社さんが、工事中、頭を抱える一番の原因です。

「なんだ!この納まらない図面は!どうやって納めたらいいんだ!」

日本中の工事現場で、このような会話は必ず、毎日、聞くことができます。

しかし、困ったことに、多くの設計士さんは、プライドだけは人一倍高いので、

図面の間違いを認めようとしないのです・・・そしてますます現場は混乱する・・・・。

最初から、間違った設計図を作成して終わり!・・・にするのではなく、現場で原寸図を書いたり、

実際に使用する部材を使いながら、現場で細かく検討すればいいのです。


そして、さらに困ったことに、設計士さんは、


「積算(工事費の算出)ができない。」


工事費に関して無関心、無責任であるため、お客様の予算を考慮せず、

どんどん高価な建材を使っていく。

これは、設計料の算出方法にも問題があるのだと思う。

「工事費の何パーセント」という算出方法で設計料は計算されることが多いため、

工事費が高くなれば、設計士さんの設計料も高くなる・・・・私はこれがいかん!と思う。


さらに設計士には「瑕疵担保責任」がない。

設計した建物が雨漏れしても、法律上、おとがめなし。

補修は、工事を担当した建設会社が自腹をきって無料で補修するのです。


こうやってつらつら考えると、設計士ほど「お気楽」な商売はない。

だから、私は、「設計士さん」と呼ばれるのが嫌なのです。


一方、同じ建築士でも、現場監督である一級建築士はどうかというと・・・・。


建設会社は法律上、瑕疵担保責任が科されるので、当然、担当した現場に雨漏れなどがあったら、

現場監督の建築士さんは、社長から大目玉をくらいます。

建設会社は無料で補修するわけですから、努めている建設会社に、大損害を与えてしまいます。


現場を知らない設計士さんが作成した「マンガのような設計図」を元に、苦労しながら、

職人さんと頭を突き合わせ、建物をつくっていかなければならないのです。


少しでも、限られた予算の中で、精度の高い建物をつくるため、毎日、現場で四苦八苦です。

雨に打たれ、風にあおられ、ホコリにまみれ・・・・当然、汗ぐしょで・・・・。


同じ一級建築士でありながら、設計士さんは、人から「先生」と呼ばれるのに、

現場監督は「おい!監督さん!」といった調子です。


なんという格差社会(・・・・ん?)なのでしょう。

完成した建物の瑕疵(欠陥)に無責任でいられる人間が先生と呼ばれ、

瑕疵の責任を取らされるものが、「おい!」と気安くよばれる社会・・・・・。


この間違った世界は、正さねばならん!・・・・と、思いませんか?



たまたま設計事務所からスタートした当社ですので、私も設計はできますが、

上記のような設計士にだけはなりたくないと、日々、自戒しています。


多くの設計士さんは、先生と呼ばれているためか・・・・建築業界で、一番偉いのは設計士だ!

・・・・と、とんでもない勘違いをしているようですが、もう少し謙虚になった方がいい・・・・。


「自分は設計しかできない建築士です。」


・・・・という事実をひた隠しに隠すような欺瞞は、ゆるされるものではない。



設計もでき現場もわかる建築士を「一人前の建築士」とするならば、

設計の仕事しかしていない設計士は「半人前の建築士」なのです。


当社には、「半人前」は必要ない。


「机上の空論(と、いうか設計)」は現場では役に立たんのだ!