世論調査によると、当地で今回の一連の事件を、程度の差はあれ支持しているのは、およそ70%だそうです。確かにTVのニュースや、インターネットでも大衆的な新聞・雑誌をソースとして情報を得ていれば、「お隣にとんでもない非人間的な政権ができていて、当地が危険にさらされているから、なんとかせねば」から、「お隣はEUなどと言ってけしからん」まで、様々な理由で、「お隣悪者説」に賛同する=軍事行動は仕方ない、と思ってしまうかもしれません。
それから、「報道を見ない」というグループもいます。そのグループが報道を見ない理由は、「世界の物事は、各国の首脳をさらに超えた一部の力によって操作されており、下々の民主主義や選挙など意味をなさない、それよりも下々である私たちは、自分個人を成長させるために時間を使うべきである」ーという、一見、自己啓発や成長といった、くすぐったいキーワードで、個にこもることを是とし、個と個との間では、愛と敬意をもって接するべきだとします。
あくまで私個人の観察ですので、そういう人が社会にどのくらいいるのか?などと根拠のある情報は出せませんのでご容赦ください。「70%」の中にどんな人がいるか?を、観察に基づいて考えております。前者はわかりやすいと思います。一方、後者のニュースを見ない・世界は目に見えないグループが動かしているという陰謀を信じている人々について。宗教でもやっていそうに見えますが、意外と「普通」の人々、ただのノンポリに見えます。ノンポリとの違いは、この陰謀を信じているかどうかなのですが…
「陰謀」を信じている人々は、民主主義は存在しないか、まやかしだと確信しています。だから、選挙にもいきません。当地、選挙をめぐっては様々な議論というか、議論の試みがあり、おそらくは人為的な操作があり、近代民主主義の言う選挙とは程遠いのであろうとの仮定から、何度も大規模な集会やデモが近年発生しています(が、毎度首尾よく制圧されています)。ですが陰謀を信じる人々にとっては、それは下々の無意味な抵抗であり時間の無駄、報道を見るより内面世界を磨くことに集中せよ というのです。
世の中すべて「陰謀」なので、当地大統領がずっと大統領なのも、「支配層がおkしているから」であり、それは肯定すべきなのです。だったらばお隣に元製菓会社社長の大統領や、元コメディアンの大統領が就任しても、「陰謀」で片付ければよさそうなものですが、なぜか陰謀によりお隣に就任した国家元首は、当地と敵対してはならないのだそうです。私自身の、「陰謀」派への理解心がこの辺からゼロまたはマイナスになってきますので、説明が雑になりますが、元製菓会社社長や元コメディアンの前・現お隣大統領が当地から離れてEUだの民主市議だの言いだすのは、アメリカに追随していてお金をもらうからなのだそうで、アメリカの威を借りて当地を困らせようとしているのだそうです。
あらゆる事象が「陰謀」なのならば、「アメリカからお金をもらったお隣が嫌がらせをする」のも、陰謀の一部であり、下々は手を付けてはならないのではないかと思いますが、どうも「陰謀」を信じる層にとっては違うようであり、「陰謀の存在」と、「当地(政権)の現状維持」は、セットで考えねばならないようです。
さて、一方のお隣はー
思い出せる過去の範囲でも、オレンジ革命、選挙による親当地政権誕生、親当地政権への反発から発生したマイダン革命と、目まぐるしく情勢が変わっています。しかしお隣の人は、「国民の意見は政治に反映される」という民主主義の大原則を、身をもって学んだようです。マイダン革命はアメリカがお金を払っているという話は、マイダン革命に参加した方々から聞いたことありませんし、そのちょっと前に私が好きな音楽グループが、マイダン革命の中心となった広場で、革命を鼓舞するコンサートを行い、多くの人々を集めたことからしても、「人々の意見」として、「当地の庇護」から「独立したEU志向」を選んだのではないかと推測いたします。お友達の意見によると、「マイダン革命は、自分の政権に対立することを意味して、とても怖かった」そうです。でも、オレンジ革命でチラ見えした民主主義が、親ロシア政権の誕生で逆戻りし、それに対して抱いた危機感が、恐怖の上を行ったので、マイダン革命の側についたーのだそうです。役人がわいろを要求し、どんなビジネスも上納金を納めなくてはならない当地的社会構造は、絶対に嫌だ、というのが説明でした。
そしてもう一つ、お隣はマイダン革命後に選んだ大統領が、思った効果を発揮しなかったと考えて、別の大統領を選びました。当地でも、「この大統領選挙が成立し、コメディアンが大統領になったこと自体が成果」という意見もありましたけれども、「思ったような効果がなければ、選挙で大統領を変えればいい」という経験をお隣の方々は得たわけです。コメディアンの陰に隠れてあまり知られてはいませんが、お隣の現職大統領はユダヤ人であり、旧ソ連圏でユダヤ人が大統領になる、というのは、当地から見れば「ありえない」話です。また、お隣では、大統領が交代しても国は崩壊せず、通常営業を続け、前大統領が逮捕されたり資産を奪われたりすることもありませんでした。今回の危機に対しては、前大統領は機関銃片手に、祖国防衛に立つことを宣言するとともに、ボランティアとしての人道支援を全国に展開しています。声高に現職大統領を支持しますと言っているわけではありませんが、現職大統領の言う団結を体現しています。
ですので、アメリカの意向を受けた面々が現在のお隣政権でうまい汁をすすって、何なら今回の一連の事件も自分で仕掛けている―というストーリーは、どうしても信用できないのです。ですが、それを信じている人も、一定数いるわけです。
信じている人の考え方を変えるのは、不可能であり、また、余計なおせっかいでもありますけれども、陰謀論を説く方々の、「だから政治にはかかわってはならない、ただし、お隣で今起きていることは、アメリカのシナリオ/陰謀/正しくないことだ」だから是正することは、肯定しなくてはならない という思考回路を受け入れる義務は―発生するでしょうか、どうでしょうか。
長々と書き連ねましたが、「70%」の中身は、報道によるプロパガンダ以外にも、「報道は見ないし世の中全部陰謀だけど、お隣政権の政治は正しくない」という不思議な層がありそうで、ますます謎を深めるばかりです。