至聖所の大祭司になるべき聖女ラオネの恋、

それは禁断であり、苦痛であり、真実の想いだった。

しかし彼女はその重荷に耐えきれなく、たとえ恋人が駆けつけてさえも、

死を選ぶ。




俺の思考は自然とひとつにまとまっていた。



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貴様、聖女の亡骸を一体どうする?



俺はどう行動すれば良いのか、

どこへ行かなければならないのか、わかっていた。


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行こう、ラオネ、至聖所へ。



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さあさあ、どけ!

俺たちには行かなければならない場所があるのだから。



群衆は割った海のように、道をあけてくれた。



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正直、俺が俺じゃないように感じた。

公園の小鳥たちは、俺のことを心配そうに見つめてくれた。

そういえば、俺はときどき小鳥たちにパンの欠けらをあげていたな。


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夕暮れになって、やっと至聖所にたどり着いた。



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ラオネ、ラオネ、



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なぜ死んだんだ!

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俺は独りで泣いた。

誰も居ないから、大いに、存分に、泣いた。

もう、俺にはこの世に生きる意味はなかった。

だが、これだけはやってしまいたい。

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神殿至聖所を燃やし、すべて灰にする!

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燃やしてやる、燃やして灰にする!

はっきりとわかった最期とは、意外に楽しいものだ。

俺は子どもの悪戯のように、神殿に火を放った。

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神殿を囲うように火を放った。

最後にはここ至聖所に、火は向かう。

俺とラオネは至聖所で死ぬのだ、これは俺のシナリオでは。


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「・・・・・・アルベリッヒ、何をしているの・・・・・・。」



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「ラオネ、生き返ったのか!?」



「ここは・・・・・・至聖所ね。」



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ラオネが生きている!



「・・・・・・傷が癒えたの・・・・・・。

たぶん、いいえ絶対、神の奇跡だわ。」


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「アルベリッヒ、なんてことしたの・・・・・・。

神殿に放火したなんて、私も自殺したから罪はお互い様だけど。」


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「私たち罪びとだからこそ、祈りましょう!

神殿の火も回ったし、今こそ、祈りと神様のおちからが必要なの。」

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俺はそんな信仰無い。


「アルベリッヒ、わずかでいいから、祈って頂戴!」



「マスタードの種ぐらいの信仰でもいいのか?」


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俺は聖女さまの見よう見まねで祈った。


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「ねえアルベリッヒ、聖人さまのなかには、

生きて天の国にいったのよ。」



「ラオネ、まさかそれで祈っているのか?」

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「そのとおり、ほら、光が!」


朝日の光が神殿に入ってきた。

しかし、今は午前1時、真夜中だ。


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「見て、アルベリッヒ、本当に光よ!

ああ、神様はなんて慈悲深いかた!」


「本当だ、光の階段が、俺でも見える!」

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「さあ、行きましょう!」

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「行こう、ラオネ。」


                                  つづく