2005年秋、ジャーベル国境を越え初めてシリアに入国した私が、ダラア~ボスラ道路で目にしたものは、こてこてに装飾された、どこのメーカーかもわからない寸胴のバスでした。ヨルダンの、トヨタコースターや三菱ローザなど日本車マイクロバスに慣れた目には全くのゲテモノ、そのコテコテな装飾には、イランやパキスタンの匂いを感じ取ったものです。
その時のミクロバスの写真はないのですが、ミクロバスの一般的な姿が右。下で解説するスウェイダー~シャハバ線の一番大きなバスです。フロントグリルにはベンツのマークが誇らしげに掲げられており、2枚目にある客用ドアの右にもMercedesとあります。こんなにオンボロになっても現役でいることを考えると、本当かも?
しかしその後シリアに何度も脚を運ぶようになって、どうやらこの手のデコレなミクロバスも、日本や韓国のワゴン車に取って代わられ、しだいにその勢力を減らしていることがわかってきました。上記で初めて見たダラア~ボスラ間のミクロバスも、今では100%白いワゴン車です。10年後には、どれだけが残っているのでしょうか。今見られるデコレなミクロバス路線をご紹介します。
スウェイダالسويداءー~シャハバسهبا
シリア南部、ハウラン県の県都スウェイダーと、デカポリスの栄光都市、シャハバを結ぶバスは、今でもデコレーションなおんぼろミクロバスが多数走っています。この路線は30分に1本走っているのですが、利用者が多いのでいつも混んでおり、立ち席客で車内は満杯です。エアコンもあるわけないので、夏は暑く、冬は寒い。
上に紹介したバスはわりとロングボディですが、右の2台だとどこでそんなの造ってるの?と思うほどにホイールベースが短い。側面の窓割も独特です。私が2005年に初めて見たミクロバスもこんな感じでした。もっとぼろくて、客の重みで後部が下がっていましたけど...
ちなみにこの4枚はすべてシャハバの四面門広場で撮影。ここにはダマスカスとを結ぶプルマンバスのダマスツール社の事務所もあり、シャハバ観光の始発点とも言うべき広場です。
スウェイダーالسويداءー~カナワットقنوات
スウェイダーの東側にはハウラン山地が広がっており、その麓にあるカナワットもまた、デカポリスの一員として栄華を極めた都市です。スウェイダー~カナワットのミクロバスは、近代的なボディを使っています。詳細は シリアのバス(1)シリア南部のプルマンとミクロ の項目を見てください。
スウェイダーالسويداءー~ダマスカスدمشق
スウェイダー~ダマスカス間には、シリアのバス(1)シリア南部のプルマンとミクロ で紹介したプルマンバスが頻発しているのですが、こういった都市間幹線路線にもミクロはいます。
上の写真は、スウェイダーの玄関口、町の北にあるカラージュ・ポールマン(カラージャート)です。
画面手前に、右に近代ボディのミクロバス、真ん中に白ワゴン、左にオンボロミクロバスが写っていますが、これが全てダマスカス行き。プルマンは画面右上の建物がチケット売り場。時間になるとその前にバスが着きます。ミクロもプルマンも運賃は変わらないので、旅行者にとってはミクロを選ぶ積極的理由はないのですが、沿道に住む地元の人にとっては、あちこちの村で客を拾って走るミクロは大事な足です。ダマスカスでは、プルマンが西郊外のカラージュ・ソーマリーエ発着なのに対し、ミクロは旧市街の南側、バーブ・モサッラباب مسلىという交差点からカダム駅側にちょいと行ったところにある、カラージュ・ジャヌーブكراج الجنوب(南バスターミナル)に発着するので、町に近くて便利です。このカラージュ・ジャヌーブには、シリアでは珍しく「South Bus Terminal」と英語の看板が架かっていますが、アラビア語を読めない人がどれほど利用するというのでしょうか。