ヨルダンにも鉄道があるのをご存知ですか? 実はシリアのダマスカスから、サウジアラビアのメディナまでを結ぶヒジャーズ鉄道というのがオスマン帝国時代の1900年に開通し、多くの巡礼客を運んでいたのです。「アラビアのロレンス」ことT.E. ローレンスが指揮するアラブ・レジスタンス軍が列車を爆破したのはこの鉄道の、現在のヨルダン領内でのことです。
2008年春までは、アンマンとダマスカスの間に週2本、ひっそりと国際列車が走っていたのですが、あまり乗客がいないので運休となり、ヨルダン領内から定期の旅客列車は消滅しました。
写真は、アンマン駅のようす。蒸気機関車も所有しています。時々、チャーターで走ることがあります。私も一度、幹事となって蒸気機関車の貸切列車を走らせたことがあります。
今、ヨルダンで走っているのは、南部で採掘されるリン鉱石をアカバ港まで運ぶ、貨物専用のアカバ鉄道だけです。肥料の原料となるリンは、死海で採れるカリウムと並んでヨルダンの重要な輸出品。主に中国に運ばれますが、一部は日本にもやってきています。
さて、アンマン在住の知人から、ヒジャーズ鉄道に春の行楽列車が走り出したとの一報が入りました。冬の間の雨の恵みで緑が美しく、まだあまり暑さが厳しくない3・4月は、ヨルダン人の最大の行楽シーズン。週末にはあちこちでピクニックに来た家族連れが楽しんでいます。そして、かつての日本のように、ここヨルダンでも保育園や学校単位でピクニックが企画されることが多いんです。そういった場合、鉄道を貸し切って、アンマン郊外まで行って来るということが多く行われており、私が住んでいたときもかなりの日数で貸切列車が走っていました。鉄道に乗るというのは、ヨルダン人にとって「非日常」体験なんですね。右は、アンマン駅の次の駅、カスルから乗車する団体の親子連れ。客車はこれでもかというくらいボロい車体です。なにしろ、走っている間に窓枠の隙間から外が見えるくらいです。
今年は貸切ではなく、週末の金土曜に一般客も乗せる列車を走らせるということらしいです。知人からの情報によると概要は以下の通り。
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運転区間 アンマン駅~ジーザ駅
運転時刻 アンマン駅9時発、ジーザ駅11時着、 ジーザ駅14時発、アンマン駅16時着
運転日 4月から当分の間の金・土曜(終了は誰にもわからない)
運賃 往復3JD
乗車方法 8:15までにアンマン駅に行けば当日でも乗れるらしい。が、予約が一般的で、あんまりにも予約がないと運休したり、それが続くと自然消滅(シーズン終了)するので、事前に電話で予約する方がいい。
アンマン駅電話番号 (06)489ー5413
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予約の方法
アンマン駅員は英語がわかりませんので、アラビア語で話をすることになります。旅行者は、宿のスタッフにでも電話してもらうといいでしょう。 自力でという場合は、以下の会話でどうぞ
ブクラ、フィー、キタール? (明日、列車はありますか?)
イヒナー、ビッディ ナルジャア (私たちは、乗りたい)
ムンキン? (可能?)
イスミー ◯◯ ヤバーニー(私の名前は、◯◯、日本人です)
あとは、人数を言っておけばいいでしょう。
アンマン駅はどこにある?
アンマン駅は、ムジャンマ・ラガダン(ムジャンマ・マハッタ)というバスターミナルから、東に徒歩10分(1.1km)ほどの道路沿いにあります。公共交通機関では、「世界初、アンマンのバス路線図」のページに紹介した、アンマン市内大型バスならほとんどの路線がムジャンマ・ラガダン発着ですので、乗る方向さえ間違えなければ、終点です(駅自体も、路線図の右上に掲載されています)
そこからは、周りの人に「ウェンッタリーク イラ・マタール・マルカ(マルカ空港はどの道?)」と聞きながら東へ進みましょう。「空港までは遠いから車でいけ」と忠告されるかもしれませんが、駅までなら歩ける距離です。ターミナル外の崖下の道を東に進むと、信号のある十字路があり、進行方向の道路上に橋がかかっているのが見えます。これが鉄道線路の跨道橋で、これをくぐって坂道を上って行くと、左手に線路が見え、写真の駅舎に到着します。右側の鉄扉から構内に入って、左手の駅事務室に行きましょう。右の写真が駅構内のようす。左手の建物が事務所です。
タクシーで行くなら、駅は
محطة القطارマハッタ・キタール
というんですが、知らない運転手も中にはいます。قطارキタールの発音が日本人にはちょっと難しいこともありますので、
محطة الحجازيマハッタ・ヒジャーズィ(ヒジャーズ駅)と言い換えてみてください。
ヒジャーズ鉄道は、アラビア語でسكة الخط الحجازيシッカ ハットル・ヒジャーズィですが、ヒジャーズ鉄道自体はたいていのヨルダン人は知っていても、実際にどこに駅があるかは知らない人の方が多いです。運転手には
شارع الملك عبد الله الأول
シャーリア・マリク・アブドゥッラー・アウワル
(アブドゥッラー1世通り)と言うか、
طريق الى مطار مركة
タリーク・ラ・マタール・マルカ
(マルカ空港への道路)
と告げてみましょう。
こちらをクリックすると、Wikimapia上のアンマン駅に飛びます。
どんなところを走るの?
アンマン駅を出ると、とんでもない急カーブを繰り返して急坂を上って行きます。沿線はアンマンでも古い住宅街で、下町っぽい感じのところです。ヨルダンの子どもは、列車を見ると石を投げてくるので気をつけましょう。ロンプラ曰く「投石はヨルダンの国民的スポーツ」とのこと。ヨルダン人よ、もうちょっと別のことに体を使いたまえ。ヒジャーズ鉄道の客車の窓は薄いので、当たればひとたまりもありません。
10分ほどでアンマン市内最大の名所、10連石造アーチ
الجسور العشرةジスール・アルアシャラにさしかかります。橋は床下なので、窓から見えないのが残念ですね。その後、トンネルを抜けて、橋の向かいの斜面に出ますので、そこから進行方向右手に、橋といままで走ってきた線路が見えます。お見逃しなく。
次の駅、قصرカスル(またの名を ام الحيرانウンム・アルハイラーン)までの高低差は200m以上、急カーブの続く坂道を上り続けます。カスル駅はマダバ行きバス乗り場の踏切の近くにあります。ここからは反対に下り坂となり、アンマン南郊外に出て行きます。
終点الجيزهジーザ
終点のジーザは、実はクイーンアリア国際空港のすぐ近く、直線距離で3kmちょうどです。空港に向かう道路が線路を跨ぎますが、そこから南側に見えるほどです。道のりでも4kmありませんが、残念ながらジージア駅周辺にはタクシーが全く期待できないので、空港に行くのはちょっと無理です。
駅にはちいさな公園があって、みんなそこで弁当を広げてピクニックを楽しみます。そしてまた、車ならアンマンから30分とかからないジーザから、2時間かけてアンマン駅に戻るのです。
なお、ジーザ駅は周りになんにもない、沙漠のなかの小さな駅ですので、お弁当は必ず用意しておきましょう。西にちょうど1kmにはデザートハイウェイが走り、ジーザの町も道路沿いにあります。そこまで行けば雑貨店(道のり1.5kmほど)はありますし、ジーザ~アンマン間の区間ミニバスが出ていますので、バスで帰ってくることもできますよ。
これを書いているのは木曜日ですから、ちょうど明日は金曜日。さあ今すぐお電話を。
アンマン駅 (06)4895414 までアラビア語でどうぞ(たぶん平日は15時までしか勤務してません)
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