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六義園は初めて行った。
四季折々の樹木を見ることができる。
春なんかは桜のライトアップもしているらしい。
先輩はまた沢山の写真を撮り始めた。
さっき以上に楽しそうに撮る先輩をずっと見惚れてしまった。
庭園を楽しんで出た後にしまった、と思った。
何度も告白できそうなタイミングがあったのにまた告白しそびれてしまった。
出口を左に曲がり、時間を確認すると20時だった。
どうする?と聞かれて私は濁してしまった。
察した先輩は、上野に戻ろうかと言ってくれた。
だらだら歩いても2時間かからない、と調べてくれてゆっくり歩き始めた。
他愛のない話を話したり聞きたかったことをきいたり。
本当に中身のない話をした。
4、50分歩いたところで大通りの信号に引っかかった。
線路近くで大きな電車の通り過ぎる音がした。
先輩の言葉が聞こえない。信号が青になった。
向こうから歩いてくる人を避けながら渡ると先輩と離れてしまった。
すいません、と走って追いつくと、先輩が左手を差し出している。
「キュン」と心が鳴った。
なんて単純な私なのだろう。
悲しいぐらいに単純だなと思い一瞬迷ったが、私はすぐに右手を重ねていた。
ポケットに入れながら歩いていた先輩の手は温かかった。
手から感じる温もり。
触ったことのない、大きくて厚い手の平。
ゴツゴツとした指。女とは違う、男の手の感触。
横には20cm以内の距離に先輩の顔。
嗅いだことのない、香水のような煙草のような何とも言えない香り。
少し遠くを見つめる目線。
しっかり目に焼き付けた。
こんなに傷つく優しさはこの世にないだろう。
上野駅に着くまでの残りの時間は、
彼女になる「夢」を見させてくれていた。
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