ふるさと | 人間でいたい

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愛と平和


母と四国のおばあちゃんの家へ行った。
私がメンタルダウンして母へ電話をかけた時に、お盆はお姉ちゃんと一緒におばあちゃん家へ行くけど、と聞き「なんだか夏物語(川上未映子さんの)みたいかも」と安直な考えで、私も行くと話した。何か分かれる気がして、そんな淡い期待を抱いて。

行きの新幹線で岡山を降りてからしばらく経った時、スーツケースを車内に置き忘れたことに気がつきサッと血の気が引く。お母さんと待ち合わせの約束をしていた岡山駅の改札口で忘れ物をしたことを告げ、しおかぜに乗って一緒に最寄り駅へ向かう予定だったのを、先に行ってもらうことにした。結局、スーツケースは想定通りの場所で見つかり、終点の博多駅で引き取ってもらい郵送でおばあちゃん家まで送ってもらうことになった。



アンパンマン号に乗って、1人で最寄り駅まで向かう。途中で瀬戸大橋を渡る時、『お母さんと一緒だったら今頃、「見て!あやちゃん、瀬戸大橋だよ」と黄色い声を挙げていただろうな...』なんて考えていた。線路の下でキラキラと揺れる海面、ボトッと落っことしたみたいに海の上に浮かぶ島々が夏の日差しを浴びてウキウキしているみたいだった。


駅へ着いて、お母さんと待ち合わせ。結局、お姉ちゃんは同僚がコロナに罹り来れなくなったとのことだった。近くに喫茶店がなく、1時間ほど駅の近くのコンビニで時間を潰していたらしい。ゴールドの曲線が複数に連なったようなイヤリングをつけていて、可愛いね、と言うとイヤリングをつけたくて髪をアップにしてきたんだと話していた。

約束していた予定時刻を大幅に過ぎてしまったが、おばあちゃんとうどん屋さんで合流して、昼食をとった。



物心ついた時から、四国へかえったらこのわかめうどんを頼んで食べている。家族の皆が中華そばを頼んでも、私はこのわかめうどんが好きで食べていた。本当は稲荷寿司も食べたかったが、13時をまわっていたこともあり全て売り切れてしまっていた。残念。おばあちゃんにハンディファンを向けると、あら涼しいわねと言ってヒンヤリとした顔で目を瞑っていた。寝室のクーラーが壊れている、と事前に母から聞かされていたが、新しくしたんで!と嬉しそうに擦り寄って私の腕を掴むおばあちゃんの指先が冷たくて、どうしてだろう、と心配になった。

この日の夜は、お刺身と母の作った卵焼きを食べた。家族皆で来ていた時は、車で20分程度の銭湯まで行っていたが、おばあちゃんがもうそんなにも長く運転し続けることができない(しかもミッション)為、自宅の風呂を使わせてもらった。シャワーがなく、最初は不安だったが水道水が夏場で生温かいこともあり、まあ全然いけるなという感じだった。何なら、お風呂楽しかった。物騒なニュースに心を痛めていた面もあり、もし、そういう時がきたら...そういう時に備えて...と考えながら、挑むような気持ちでシャワーなしお風呂を敢行した。自然と生きるってもしかして、自分が思うよりもっと恐ろしいことなのかもしれないな...(スーツケースもないし。)なんて考えながら眠りについた。


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次の日は朝6時に起きて、

朝ごはんを食べて支度をしてから、

母と2人で四国水族館へ行った。



朝の無人駅では日が照ったり曇ったりを繰り返し、ときどき風が吹いて気持ちが良かった。

風に乗って田んぼの上をハタハタと舞うカラスよけのトンビ(?)が物珍しく、なんだかワクワクした。券売機で切符を買ったら、お釣りで500円玉ではなく100円玉4枚と10円玉10枚が返ってきたのが妙に可笑しくって、母と2人で笑った。



四国水族館は、

2020年の春に開館予定だった当時、皆で行こうと言っていた矢先、コロナ禍へ突入し行く機会を逃していた。その為、念願叶ってという気持ちがあり嬉しかった。

館内をまわったり、イルカショーを見たり、ソフトクリームを食べたり、写真を撮ったりして楽しんだ。



青い鯛(?)がいた。

この写真の時はお休み中だったのか、

こんなにも美しい見た目をしているにも関わらずなんか可笑しいというか、コメディアン的な風体をしており思わず笑ってしまった。

それから、母と2人でこの水槽のボスだコイツは。役員!役員!と囃し立てていたら、

その神秘的な青の尾びれをヒラリと舞わせて、スイスイと水中を泳ぎ出したのだった。

重役の本領発揮だね、なんて冗談を交わしながら内心、とても感動していた。


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それから、カレーライス食べたり、


プリクラ撮ったり、





プリクラ機の指定ポーズをそのまま実践していた為、手を取り合ったりして何だか気恥しい...



スピードくじではチンアナゴのミニぬいぐるみをゲット。目がギョロっとしていて、可愛い。



ゴマフアザラシが、水中でくるりんっと回転するところが見れて癒された。あたしンちの母がアザラシの真似をしている漫画のひとコマを思い出した。母は海月が好きなようで、海月コーナーで全ての海月の動画を撮影していた。


暑さでクタクタになり、14時半には水族館を出て家に戻り、昼寝した。


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夜には近所の小学校でお祭りがあり、花火が打ち上がるとのことだった。

おばあちゃんが、キンチョールを片手に外へ出たので虫除けスプレーある?どこで見るの?と色々聞いたら、「...やかましい、黙って着いてきたらいい!」と言いながら車のトランクを開けて、キンチョールを振りまいてとキビキビ動いていて、悪いこと聞いちゃったなと思った。おばあちゃんはお小遣いを2回もくれたり、住民に煽られて町内会の経費(?)に10万円を支払ったり、私たちが泊まる前にエアコンを買い換えておいたりと、そういうことを何なりとやって退けます、という顔で話すのに、普段使うポットが壊れ気味でも買い換えないような人なのだ。生きているうちは貴方がたにお金を使ってあげます、というようなことを言っていたが、どうか生きているうちに、嬉しいことが沢山あるといい。大事にしたい。



車のトランクに私と母とで座って、おばあちゃんは自前の小さな椅子に座って、皆で打ち上がる花火をみた。綺麗だった。


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それから、

帰りのタクシーが来るまでの間に、

昔の写真アルバムを3人で眺めたりして過ごした。母が「この頃から、笑顔が可愛なかったんよ」と自画自賛し、自分の幼い頃の写真をみて可愛い可愛いと言っていた。


昼の12時をまわると、

壁に取りつけられたラジオから町内放送のオルゴール音楽が流れてきた。

懐かしい。早朝にも同じようなオルゴール音楽が流れていた日のことを思い出す。幼い頃、四国から実家へ帰る日は絶望的な気分で寂しくて、1人でよく泣いていた。私にとっての四国は、日時生活の色々から切り離されたシェルターみたいな存在で、GWとお盆の年2回にだけ訪れることが許される楽園でもあった。


おばあちゃんは大きなサランラップを使うのが苦手と言っていた。それから、町内放送のラジオは無料だったから新しいのを取り付けた、使い方がよく分からなくて最初は苦労したというようなことを話していて、オルゴールが流れていて、それから、


「人生は良くなったり悪くなったり、良くなったり、」


と言ったとき、あ、もうダメだと思って、話を遮って台所のエアコンは使っていないの?となんの脈絡もない質問をしてしまった。

洗面台の鏡に映る窓越しの青い空と田んぼの緑を眺めながら、あぁ、あちら側には行けないのだろうなあとぼんやり思っていた。


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おばあちゃんのことを書くとキリがないくらい、おばあちゃんが好きだし、おばあちゃんという存在に助けられてきたなと感じる人生でもある。

そしておばあちゃんを通して、おばあちゃん以上に近くで手を焼いてくれた人たちの存在を感じるような気がする。


あと、四国の水はマジ神。

サロン帰りの髪質...みたいな、

CMみたいな状態になる。すっご。シャワーヘッド、欲しくなっちゃった。