昔、ひょんなことから役職に就き、大金を手にした。
いつ辞めるかも分からない、自分が望まない役職だった。
今まで手にしたことがない高給を受け取った。

大金を手にした私は、催眠術を受けに行った。
その頃、海外セレブのひとりが、催眠術を受けてダイエットに成功し、太めから急激に痩せ、美しくなったのを見た。
これだけ効果があるなら、私の生き辛さも治せるのではないかと思った。
大金を払った。値段は忘れた。
胡散臭い男性に会い、胡散臭い場所で、胡散臭い催眠術を受けた。
ああ、これは無理だわ、と思った。
こんな胡散臭いことを、神経質な自分が受け入れるはずがない、と。
なのに、胡散臭い男性からの胡散臭い質問に対して、目を閉じた私の頭には、スラスラとイメージが湧いて出た。

薄い紫色の宮殿を背景に、草野球で使用しそうな、広くない野球場に、ポロシャツとチノパンの神様がいた。
小さくて、眼鏡を掛けた、よくいる日本の老人男性だった。
私は神様に聞いた。「どうして私はこの親に生まれ、こんなに苦しまなければいけなかったんですか?」
私たちは野球場に向かって、長い木製のベンチに座っていた。
神様は少し気の毒そうに私を見て、「運が悪かったなぁ」と言った。
よく聞く、「親ガチャに失敗しちゃったね」という意味だったと思う。
「運、ですか?」
「運だね」
「私はどうすれば良いですか?」
「気にしないでいい。自分の好きなように生きなさい」

肩の力が抜けた。
運が悪かった、気にしなくていい、好きに生きろ。
シンプル過ぎて、力が抜けた。

そして、そうかもしれないな、と何故か思った。

劇薬を求めて大枚を払ったが、これで私の人生は変わらなかった。
相変わらず苦しみ、相変わらず救いを求めて、相変わらず頭のなかで母親をコロし続けた。
相変わらず、すぐ変化する劇薬を求め続けた。