ごめん、友人。ネタにする。許してくれ。
ネタ扱いしてごめん。

学生時代、時々ふたりきりで帰路を共にする友人がいた。
穏やかで、時々毒になるストレートさもあって、人望もあったと思う。
良い奴だった。
一緒にいて楽しかったし、気楽に愚痴も毒も吐き合えた。
良い奴だった。なんの陰も感じなかった。

卒業間近、その日も帰路を共にして、同じ電車に乗った。ボックスシートに向かい合わせで座り、いつものように会話していた。
電車がどの位混んでいたか、覚えていない。
それまでの会話と同じような、淡々とした口調で友人が言った。
「卒業したら、旅に出ようと思う。それで、もう戻らない。旅先で死のうと思う」

私は驚いて、友人の顔を見た。友人は私から目を逸らして何処か窓の方を見ていた。
勇気を出したんだろうなぁ。
ふたりの間に沈黙が生まれた。
私は驚いたまま、思わず口にした。
「なんか、勿体無いね、良い奴なのに」
正直な気持ちがそのまま口から出た。
友人の顔から、緊張が緩んだ。

いつも別れる駅で、友人と一緒に電車を降りた。
ホームから降りる階段の、外壁にふたりで並んでもたれて、何本も電車を見送った。このときの風景、よく覚えている。

友人は詳しくは語らなかった。
ただ、親が好きになれない、親元にいるのが苦しい、と言った。
私は、分かるよ、私もだよ、と返した。

帰り際、なんで正直に話してくれたのかと不思議に思って聞いた。
友人は、
「止めたり励ましたりせず、ただ受け入れてくれたから。なんか話しても大丈夫かもと思った。やめなよ、とか言われたら、何も話さなかったと思う」と言った。

この後、この日のことについて、友人とは話さなかった。二回以外。
二回だけ話した。
一回は、旅出るのやめた、って友人が言ったとき。
もう一回は、
長くなるので、また今度にします。