◇すみの江の 岸による波 よるさへや 夢のかよひ路 人めよくらむ◇
5巻のテーマはずばり、ライバル!
登場人物たちの熱いライバル関係が描かれます。
以下、ネタバレ有感想です!
◆次は試合で
全国大会の会場に現れた新が千早と太一に残していったメッセージ、“次は試合で”。
5文字の中に込められた強い決意。
ついに新が選手としてかるたの世界に戻ってくる決意をしたようです。
“新 新に届いてる”
喜びの涙があふれ出す千早と複雑そうな表情の太一という、対照的な表情の二人が印象的でした。
◆詩暢ちゃん
5巻最大の見どころといえば、現クイーン・若宮詩暢との初対戦!
千早は最新22巻までで既に2回、詩暢ちゃんと対戦していますが、こんなに早い段階で初対戦が見られるとはびっくりでした。
現クイーンということは、千早にとって最大のライバル、つまりラスボスとなる人物。
直接対決は物語の最後までとっておくこともできたはず。
でも5巻を読めば、この段階で詩暢ちゃんと戦うことが千早にとって絶対に必要であったということが分かります。詳細は後述。
さて、詩暢ちゃんのかるたは“真空を飛ぶ 針のような 音のしないかるた”と表現されています。
ちょっと不気味で、クイーンの普通じゃない強さが感じられます。
そして、詩暢ちゃんはその強さゆえの孤独を抱えています。
最初はみんな威勢よくぶつかってくるのに、そのうち一人でかるたしてるみたいになると。
そんな詩暢ちゃんの圧倒的な強さに、千早も一瞬戦意喪失しかけます。
しかし、そんな時頭に浮かんだのは新の存在。そして新とかるたをした12歳の自分。
“12歳の私に気持ちで負けてどうする”
12歳の私=新という圧倒的な実力差のある相手を前にしても諦めずに、「一枚だけでも」と向かっていった自分。
なのに今の自分はここで諦めていいの?っていう。
すごく深いなぁと思いました。
そしてついに詩暢ちゃんから取る最初の一枚、「ふくからに」。
(新から初めて取ったのも「ふくからに」でした)
この一枚を取るまでの描写がとても良い!読者も一緒になって読手さんの声に耳を澄ませてしまいます。
こうして戦意を取り戻した千早、結果的には大差で負けてしまいましたが、詩暢ちゃんの中に強く印象を残します。
詩暢ちゃんは試合後、速攻対戦相手の名前をチェック。
“瑞沢高校綾瀬千早 綾瀬千早 千早 ちはや 次は一枚も取らせない” ←怖い(笑)
いつも余裕のクイーンスマイルで“一人でかるたしてるみたい”な詩暢ちゃんにとって、“次は一枚も取らせない”と対戦相手に対抗意識を持ったということは大きな変化だと思います。
今後の千早と詩暢ちゃんの絡みが楽しみですね。
最後に、詩暢ちゃんのキャラクターについて。
初登場から不気味なほどの強烈なオーラを漂わせている詩暢ちゃんですが、かわいいのにダサい、そしてゆるキャラ好きというちょっと抜けた一面も。
ゆるキャラが絡むと平常心を保てなくなるところとか、めちゃくちゃかわいいです。
現クイーンという言わば敵キャラなのに、ただの敵として終わらせない。末次先生の愛情だなぁと思います。
ちはやふるに登場するキャラクターは、どんな脇役でもそれぞれ人間誰しも持つ良いところみたいなのが立っていて、本当に魅力的に描かれていると思います。
第一印象が嫌な感じでも、実はすごく人間味があるいい人だったり。(既出だと須藤さんとか?)
この魅力的なキャラクター設定もちはやふるの魅力の一つですよね。
◆本物の夢
前述の“千早が詩暢ちゃんと対戦する意味”。
作品中で太一が代弁してくれています。
“ああ 今日だ いまやっと千早の夢が 本物の夢に”
そう、この詩暢ちゃんとの対戦は、千早の夢が“本物の夢”になるために必要なことだったのです。
これまでも千早はクイーンになるのが夢だと言ってはいましたが、それはまだ漠然とした憧れ。
しかし、今回自分が目標とする立場の人、現クイーンの詩暢ちゃんの強さを目の当たりにしたことで、漠然とした憧れが到達すべき目標に変わりました。
ただ「なりたい」と思うだけではなく、「どうすればなれるのか」を考えるようになったのです。
“この一枚が いつかのクイーンにつながってる”
“私とクイーンとの差 20枚”
詩暢ちゃんとの実力差を客観的に認識し、クイーンという夢にはっきりと照準を合わせた千早。
これからどう成長していくのか、楽しみですね。
◆ライバル
冒頭で、5巻で描かれる大きなテーマは「ライバル」だと書きました。
ちはやふるの中にはたくさんのライバル関係があります。
まず、主人公・千早にとってのライバルは、言うまでもなく詩暢ちゃん。
現時点では圧倒的実力差はあるものの、今回の対戦を通して、詩暢ちゃんのことを到達すべき目標、倒すべき相手としてはっきりと認識しました。
そして、そんな千早の姿を見て、太一は新のことをライバルとして意識しはじめます。
“原田先生… おれにもできるかな 負けながら 泣きながら 前に進むことが 新に 向かっていくことが”
“勝つ”のではなく“向かっていく”という非常に控えめな目標ですが、勝てなくてもいい等と言っていた頃に比べたらものすごく大きな変化です。
さらに、他の瑞沢かるた部部員たちも、それぞれライバルの存在を意識しはじめます。
肉まんくんは、自分の殻を破り前に進もうとする太一の姿を見て、「ライバルだ ライバルなんだ」と、サボリ癖のある自分に喝を入れ自らを奮い立たせます。
また、机くんとかなちゃんも、同じ時期にかるたを始めて試行錯誤しながら成長しようとするお互いの存在を励みにかるたに向かいます。
それぞれが仲間であり良きライバルでもあるという、とても良い関係を築けていますよね。
かるたは個人競技とはいえ、“仲間がいるから強くなれる”というのは、ちはやふるの根本にある考え方なのだと思います。
◆太一の転機
これまで、自分で自分の限界を決めてしまうという悪い癖があった太一。
そんな太一にも大きな転機が訪れます。
きっかけは高校選手権個人戦B級決勝での敗退。
強豪・富士崎の3年生に惜敗した太一は、「準優勝だ 十分だ」とまたいつもの悪い諦め癖が出てしまいます。
(4巻で“勝てなくてもいい”という考え方からは脱却したかのように見えたのですが、まだ完全なものではなかったようです)
しかし、振り返ると自分以上に凹んでいる仲間たちの姿が。
極めつけが肉まんくんの一言。
「悔しいよな 準優勝がいちばん悔しい…」
(肉まんくんは小学生の頃全国大会決勝で新に負け続けてたから気持ちがよく分かるんですね。)
それを聞いて、太一の抑えていた感情があふれ出します。
「泣くな おれはまだ泣いていいほど懸けてない “悔しい”だけでいい」
この涙をこらえる太一の表情が、もう言葉にできないくらい良い!
これまでがむしゃらさを表に出すことがなかった太一の感情があふれ出した表情にぐっときました。
個人的に太一史上No.1の表情だと思います。
太一がまたひとつ成長した瞬間ですね。
ちなみに、太一の決勝シーンでもうひとつ好きなのが、瑞沢かるた部が手を取り合って太一を応援する場面。
かなちゃんが隣の肉まんくんの手を取ろうとするけど、肉まんくんは試合に入りこんでいて気付かない。
ライバルでもあるけど、やっぱり一番は大切な仲間として応援している様子が伝わってきます。
最初読んだときは読み流してしまったけど、改めて読んでこのさりげない描写にやられました。
◆すみのえ
ちはやふるの魅力の一つである、和歌に例えた心理描写。
「全国大会では新にも会えたのに 新は夢に出てこないんだなぁ」と言う千早に、かなちゃんが差し出したのは「すみのえ」の歌。
住の江に打ち寄せる波のように昼も夜もお逢いしたいのに 夢の中でさえ人目を避けておられるのか…
なんとロマンチック!!
和歌に重ね合わせて描かれる千早と新の関係は本当にロマンチックで素敵だなぁと思います。
“逢いたい 夢じゃない場所で”
この頃の千早は“逢いたい”という気持ちが強いですよね。
千早の“逢いたい”はすごく可愛いです。
◆その他雑感
①新、始動
新は栗山先生の元へ。
福井南雲会に入会志願します。
ついに新が選手として本格的に再始動しましたね!
ここでもわざわざ手土産(羽二重餅)を持参する律儀な新が好きです。
栗山先生は地元の人なのに羽二重餅なのか、という突っ込みは心に秘めておきます。笑
②別れよう
そういえば太一、まだ彼女と別れてなかったんだっけ。笑
あまりにも千早LOVE全開なのですっかり忘れてました。
「たーくん、私とかるたどっちが大事なの!?たーくんがそんななら私もう別れる!」
「うん、わかった、別れよう」
電話の内容はざっとこんなところでは。
なんともあっさりな終わり方でした。笑
③太一はずるいのか?
出し抜いてでも人より早く強くなりたいと思ったり、千早と二人でどこか行きたいと思う自分を「ずるくていやだ」と言う太一。
太一は本当に「ずるい」のでしょうか?
どちらも当たり前の感情だと思うのですが…。
太一が自分のことをそんな風に思ってしまう背景には、昔新に「おまえ卑怯なやつやの」と言われたことが強く印象に残っているのではないかと私は思います。
それにしても千早と太一の帰り道の電車のシーン。
肩まくらできゅんきゅんさせるかと思いきや、千早寝落ち間際の一言「いいなぁ 金沢かぁ… 福井 近いね」
こんなに密着しておきながら他の男の話なんて、千早、どんだけ鬼畜なんだ。笑
こんな切ない肩まくらは見たことがありません。。
ここでも安定の太一不憫ですが、太一を見るとS心が発動される私としては、いいぞ千早!もっと揺さぶれ!と思いました。笑
*****
ついに新も動き出し、かるたも恋愛もますます目が離せなくなりますね!
6巻感想に続きます!
