探偵になりたての頃
新米探偵は将棋の「歩」です
先輩の気持ち一つで、活きた駒にもなるし、捨て駒にもされる
豪雪地、飛騨高山での調査の事
対象車両を尾行していたが、慣れない雪道の為、調査車両がスリップ
SA先輩「見失っちゃったけど、GPS付けてるから大丈夫だよ」
GPS発信器を使って、車両を探すと
モーテル式ラブホテルで対象車両を発見する
SA先輩「対象車両のナンバー撮りたいから、ナンバー隠すプレート外して」
僕は車から降り、プレートを外す
僕「外寒い…」
再び、僕が車に乗車すると
SA先輩「長靴欲しくない?俺がプレゼントするよ!長靴は探偵の必須アイテムだからねぇ~」
この先輩は、長靴を買ってくれるらしい
閉店間近のホームセンターで長靴を買ってもらう
再び、対象車両が停まっているホテルに戻る
SA先輩「大変だけど、ありったけの衣類を身につけて…」
SA先輩「あの山からなら、ホテルから出る二人の映像撮れるかもね」
この1月の極寒の高山で雪山から張り込みを命ぜられた
ホテルは外壁に覆われており
二階の部屋から降りて、対象車両に乗車する二人を撮影するには山から撮影しなければならなかった
現在の名古屋トラブル相談センターなら、
色々と特殊機材を使用して撮影するのだか
僕が入社した探偵事務所は50名くらい調査員がいる大手事務所だったが…
特殊機材を使用する調査員は殆どいない、超アナログ集団だった
ビデオカメラ一つだけ持たされ、山を15分程登ると、ホテル敷地内の対象車両が見えてくる
3時間後、ホテルから二人が出てきて、対象車両で走り出る
SA先輩は対象車両を尾行した為、山の麓に1人取り残されてしまった
SA先輩が戻ってきた時には、体力も消耗してしまい
そのまま車の中で眠りについてしまった
翌日、目を覚ますと
SA先輩が僕の顔を見て、驚く!
SA先輩「たいたんの顔の右側が、倍の大きさになってる!」
顔の右側を触ってみると
痛い!
無茶苦茶痛い!
しかも、右目の近くの皮膚が爛れ、膿みたいのが出できてる
病院の診察結果は、急な体力消耗により、体内のウイルスが暴れだしたとのこと
医者「右目上に出来た膿の傷は残りますね」
イケメン探偵でやってくつもりだったのに…
探偵になって2年くらい経った頃
新米探偵を連れて調査地に到着する
家を出ていった旦那が、他の女性と住んでいる一軒家
調査目的は、そこに出入りする二人の様子を撮影する
僕「この立地条件最悪だねー」
車一台通る事が出来る細い道の田舎の部落に、その家は建っている
僕「車停めて張り込みできないから、目の前の民家の駐車場に隠れて、撮影しようか?」
夜の20時頃から新米Gと駐車場に身を潜める
二人が帰ってくる所を撮影する
僕「今日は結構風が強いね。台風近づいてるなぁ。」
新米Gは緊張した表情で、後ろの草むらを気にしている
僕「どうしたの?トイレならあの草むらでしてきたら?」
新米G「怖いんです。こんな暗い所。あの草むらからお化けが出てきたらどうするんですか?」
僕「お化けも一緒に張り込んでくれるんだったらいいじゃん。俺、草むらで小便してくる…」
新米「待ってください。ひとりにしないでください。その草むら、絶対お化けいますよ!」
草むらで用を足していると…
風で笹がザワザワ揺れる
「なにかの気配を感じるなぁ~。この隣の家の窓から誰か見てる気がする。」
草むらから出てくると
新米と駐車場民家の住民が話をしている
どうやら暗いところで、ひとりでいるのが怖くなった新米が、道に出た時に住民に気付かれたようだ
僕「すみません。急に腹が痛くなったので草むらでウンコしてまして、この子に待っててもらったんです。」
僕「友達の家に遊びに来たのに、まだ帰宅してなくて…。めっちゃトイレに行きたくて…。」
住民「草むらは沼があるから危険だ。今夜は出歩かないのが方がいい。」
なんとか住民を誤魔化したが、張り込みポイントを失ってしまった
他の張り込み場所を探さないと…
新米「なんか今のおっさん、気持ち悪かったすね。意味ありげな言い方して。この部落、ヤバくないです。絶対お化けでますよ。」
僕「あそこどうかな?」
対象宅の隣は、廃寺のようだ
門は閉められ、草木がボウボウ
建物内も明かりない
お寺の屋根から対象宅の扉が撮影できるね
新米「勘弁してください。あの寺、絶対にお化けでますよ。怖いお化けいますよ。」
僕「お前、お化け見た事あるの?」
新米「あるわけないじゃないですか!お化けみたら僕、死んじゃいます。」
僕「俺見た事あるよ。
俺の家の柱にもたれかかってて
マスクして、メガネかけて、ジャージの上着をインしてる幽霊がいたんだよ。
その時期、よく金縛りにあったりしてたから、嫌だなぁ~と思って寝ちゃったんだけど。
次の日、朝起きて、トイレに行ったら
首が凄く苦しくて
そしたら仕事用の喪服のネクタイがギュウギュウに首を締め付けられてて
それもコマ結びしてあるんだよ。
あいつジャージメガネがやったとしか思えないよ。」
僕は、前職の葬儀屋時代で遭遇した出来事を新米に話した
新米「ヤバイくらいに怖くなって来ました。
勘弁してください。
今日は帰らせてください。
絶対にこの地区はおかしい。」
僕「車で待ってたら?怖かったら一番近いコンビニで寝てたら」
新米「いいんすか?」
新米は急いで車で逃げていく。
僕はビデオカメラを口に咥え、お寺の敷地内に入る
敷地内に生えた松の木を登り、お寺の屋根に登る
初めてお寺の屋根に登ったけど、大きい屋根の上は気持ちいい
屋根に僕がいる事が、道を歩く人から分からないように
黒いツナギを着て、屋根に寝るように待つ
待つ事4時間…
対象者帰ってこない
もう0時なのに…
「そういえば新米、超ビビってたなぁ~。なんかお寺の屋根にいるのも怖くなってきた。いきなり木魚とか鳴り始めたらどうしよう…。」
暇だなー
「あっそうだ。当直に調査状況の連絡入れないと!」
3時間に一回は、事務所に連絡を入れる規則なので、夜は当直に連絡を入れる
当直こんちゃん「状況は分かりました。たいたん、なんか嫌な予感がするので気をつけてください。霊の力を感じます。」
こんちゃんは、霊が見える調査員(自称)
いつも霊の話ばかりしていて、家出人も霊の力で見つける事が出来るそうだ。(見つけた事はないが!)
強い風は次第に荒くなり、雨が降り始めた
「あーヤバイ。ビデオカメラが濡れちゃう。」
持ってたビニール袋の中にビデオカメラを入れ
ビデオカメラを守るように、四つん這いになって待つ
1時間すると、本格的な台風になる
「もうやめよう。」
しかし!
屋根から降りようとするが、雨が強すぎて、瓦がツルツル滑る
「ヤバイ、まったく身動きが取れない。滑ったら、そのまま屋根から落ちる…」
身体全体を瓦に接着させ、摩擦を最大限に利用して、下にさがっていく。
後は、松の木を辿って降りれば!
松の木に足を掛けると、瓦以上に滑る
踏ん張って、屋根に戻ろうとするが、足も上体も滑って
とうとう
屋根と松の木を跨いだまま
身動きが取れなくなってしまった
10分程、その態勢でいたが…
とうとう足が滑り
瓦の屋根に顎強打
そのまま地面にお尻から落ち
尾てい骨強打
「痛い!無茶苦茶痛い!」
身体を引きづりながら、新米の待つコンビニに到着すると
車の中で新米が幸せそうな顔して爆睡してる
少し切れ気味で、新米を叩き起こす!
新米「たいたん先輩…。お疲れのところ…。大変申し訳ないんですが…。」
新米「先輩の後ろに…。大きな黒い影が憑いてますよ。神社にお参りに行ってください。」
『きさくな探偵事務所です
名古屋トラブル相談センター』
僕「これから心霊探偵シリーズでやっていくよ。とりあえず、病院に連れていって!」
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